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Side Bat


「ちょっとみんな起きて! 大変だよ!」

そんなジェシーの大声が下から聞こえてきて、俺は目を覚ます。起きてもやっぱり、そこは緑の深い森で俺らは動物のままだった。暗いから、夜になったのかもしれない。

「なにー? 俺眠いんだけど」

俺が留まっている木の根元にいる慎太郎は言う。

「高地が、こーちがいない」

慎太郎ががばっと跳ね起きた。「え」

そのとき、北斗がバサバサと羽をはためかせて飛んでくる。

「今探してきたけど、見当たらないよ。もしかして、あいつ一人だけ人間に戻っちゃったんじゃ…」

俺は血の気が引く思いになった。知らず知らず、目覚めたばかりの樹に視線をやる。

「……俺じゃない! 俺、なんにもしてないってば。あんなトゲトゲ食えないよ」

「まあ確かに、みんなが寝てる間樹も熟睡してたからな」

自称「昼行性」の北斗が言って、ジェシーも首肯する。夜行性組はそれぞれ眠っていたというわけだ。

「じゃあ…」

俺は、ひとつの結論を口にする。「高地は一人でどっか行っちゃった、ってことか」

しーんと森が静かになった。夜だから怖さが増す。

「よし、5人で手分けして探そう。あいつちっちゃいし、暗くて見えづらいけど…」

樹がそう言って、みんながそれぞれ違う方向を向いて歩き出したとき、どこからかカサリと草が触れる音がした。

「ん?」

振り返ると、茂みの下にまさにハリネズミがいた。人間のときよりずっといい視力が働く。

「わっ、お前、そこにいたのかよ!」

「いや今来たんだよ」

高地は5匹のただならぬ雰囲気を察したのか、「どうした?」と訊く。

「ジェシーが、高地どっか行ったって言うから探しに行こうとしてたんだよ。あぁ良かった…」

北斗が口をとがらせながらも安堵する。

「まあまあ…とりあえず高地、何しに行ってたんだよ?」

これ、と高地は小さな手を差し出す。そこには丸くて赤い実が2つあった。

「ちょっと腹減ったから、探してた。あ、大我も食べる?」

逆に呑気な言葉に、みんなはほっと息をついた。

「もう、びっくりさせないでよ」

「ごめんって。これからはみんなのもとを離れないから」

体長の大きい慎太郎が、背伸びして木の実を俺に渡してくれる。甘酸っぱくて美味しかった。

そして、今度はタカとハリネズミ、シマウマが眠たいというので夜行性の俺と樹、そして慎太郎は顔を見合わせる。

「やれやれ。この組み合わせ、大変だな」

樹は首を振った。たてがみがふわふわと揺れる。そして、前足をぺろぺろと舐め始めた。その姿はさながら猫と一緒だ。

「どうする? 3人、寝ちゃったし。俺らも寝とくか」と慎太郎。

夜は危ないし、誰かがまたいなくなったら困る。地面の4匹は固まるようにして丸まった。

枝の根元のほうに留まっている北斗の足元まで行き、俺もまぶたを閉じた。


続く

ストーンズ動物記

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