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注意喚起は1話にあり
それを読んでから来てね
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「…」
おかしい。
最初に出てきた感想はそれだった
雪だるま事ABOはそんな事を考えていた
MVKと言われるだけ、頭の冴える彼はこの事態を深刻に受け止めていた
電話も無線も繋がらない、茶化されたとは言え
こんなガチみたいに黙りこくるボスでは無い
それは他のみんなも分かっている。
だからこそこの状況はマズイのだ
「…ボス、聞こえる?」
もう一度無線に声を掛けてみても何も返ってこない
俺の後に続いてみんなもボスを呼びかける
だけどそれも聞こえない様だった
「ABO、ちょっと」
そう声を掛けたのは、もう1人のMVK事
“渋谷ハル”
ここの優秀コンビがザワつくとなると、とうとう鴉全体が動いてくる
叶君やポッキーさん、イブラヒムやふわっち
カゲツ君やメイカさん、リモーネ先生
全員が不味い状況だと瞬時に感ずく
「ねぇ、ここに全員居る?ちょっと鴉総会始めたいんだけど。緊急の」
渋谷ハルが周りに声を掛けるとみんなが人数を確認する
1つずつ数えていくと、1人足りない
ふわっちが居ないんだ
すると玄関の方からふわっちの声がする
そしてそれと一緒に、
病院の医院長こと、ぺいん
そしてリモーネ先生同様カプ厨の鷹宮リオン
その2人がいた
「ちょっとみんな集合〜!」
ふわっちが顔を覗かせる、全員が居ることに満足したのか安心したのか少し、表情筋を緩めて
後ろの2人をソファーへと招く
「なんかさ、とおこさん攫われたんやって」
「は?」
攫われた、というのはこの街では日常茶飯事の事だろう。だけどそれでわざわざギャングのアジト…しかも
この街で最強の”鴉”のアジトに来るなんて
そして、葛葉と連絡が付かなくなった今
これを偶然と片付けていいのだろうか?
まだ揺らいでいて収まりやしない心の波を落ち着かせながら、2人に今の状況を説明する
「葛葉君も…?!」
「もしかしてあの人達が…?」
「あの人達……?」
2人の説明によると、黒のパーカーにサイリウムカラーのロゴが付いた派手なズボンの集団が銃を構えて病院に乗り込んで来たらしい
知っている顔も居ないし、なにかいつものギャングと違う威圧感がする
医院長とリオンは勿論、他の救急隊もその威圧感を感じ取り只事では無いと直感する
その人達は院内をグルリと何かを探す様に見回しながら、ゆったりと1歩ずつこちらへ近づいてくる
そしてとおこさんを見つけた瞬間、ゆったりと笑い、またゆったりと歩いてゆき乱暴に腕を掴まれる
他のメンバーが止めようとするが、とおこの後頭部の拳銃にどうしようも無く見届けるしかない状況だったらしい
とおこさんはゆっくりと笑いまるで「大丈夫だよ」とでも言いたそうにしながら男の人達に引きずられて車に乗せられる
「ッ…僕警察に電話するからみんな各自持ち場に!ちょっとアマル君とリオン君手伝って!」
そして警察に電話もして、色々とした事を2人に手伝って貰いながら手続きをすませる
他のメンバーもとおこさんに電話をしてみたり
友人にあの人達の事を聞いたりしているらしい
物事が一旦落ち着いてみんなで話し合っていると、1人が声を上げる
「ねぇ、鴉に頼らない?」
「とおこさんの事だから頼れるかもよ」
「…確かに」
そう提案したのは寧々丸という初期から救急隊を続けている頼りがいのある人物だ
だからこそ説得生もあるし
なによりとおこさんと鴉のボス事、葛葉さんの仲は救急隊の中では知れている
「…僕とリオンさんで行っていいかな?」
「医院長として行かなきゃ行けない、リオンさんは鴉の中でも顔が知れてるはずでしょ?」
勿論全員で行きたい気持ちもやまやまだ
だけどあくまで相手はギャング。それにギャングじゃなくとも迷惑はかけれない
「と、言うことがありまして……」
医院長が申し訳無さそうに俯く
恐らくこっちの状況も知らずに駆け込んで来たことに対してだろう
「まぁ大丈夫だよ、多分僕らの犯人もソイツだろうね」
隣の叶さんが医院長と俯いたまま一言も喋ろうとしないリオンさんを気にかけながら、優しい声を掛ける
そして考えた様な素振りを見せて、響く様な信念を込めた様な声で言う
「ねぇ、手を組まない?」
一瞬空気がざわめくがここで反対する理由もない。鴉でも知れ渡っている彼の彼女の仲の良さ
そして救急隊の方で思って貰った事も間違ってはいない
「…リオンさんはどう思う」
「……とおこちゃんを救えるなら、勿論」
「……」
「お願いします」
その答えに空気が緩む
そして鴉達の瞳と心の奥に信念が芽生える
“絶対にそいつらをタダではおかない”
と