今朝も……隣で眠っているはずの彼の姿はない。
それなのに何故だかとても気持ちは落ち着いていた。目が覚めて、二人の幼い子供を見つめながらポツリと呟いた。
「……ああ、終わりがきたんだ」
夫と過ごした十二年間、それは私にとって決して短い年月ではなかった。
それでも普段のように喚くことも泣くなかったのは、この歪んだ夫婦生活の最後を受け入れる覚悟が出来たからだったのかもしれない。
夫のヒロカズを愛していた。いや、愛しすぎて身動きが取れなくなっていた。彼がいなくなったら、自分は生きていけないと思い詰めるほどに。
『夫の存在が全て』
そんな歪な環境から抜け出した先、待っている未来がどんなものなのか? 本当の幸せがどんなものなのか。
この時の私は、何も知らなかった――
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