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16 - 第13話:君だけが違う

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2025年05月02日

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第13話:君だけが違う


夕方、校舎裏。

空気清浄塔の影で、ナナはフェンスに背中を預けていた。


陽は傾き、都市のビル群が長い影を落としている。

制服の胸ポケットに差し込まれた管理IDが、赤い光を一瞬だけ反射した。





ミナトは無言で、隣に座った。

手に小さなスケッチ帳を持っている。中には詩の断片たちが、折り重なるように書かれていた。


ナナはそれを見て、ぽつりと呟いた。


「……やっぱり、君だけは違うんだよ」





彼女の声は小さく、でもはっきりと芯があった。


「他の子たちも、“感情”はあると思う。

でもそれって、“自分の中だけ”に閉じ込められてるように見えるの」

「誰かのことを、思って言葉にしてる人、ほとんどいない」





ナナは少し間をあけて、前を見たまま続けた。


「……あたし、ずっと怖かったんだよ。

何を感じても、それが“正解”じゃないって言われる。

“あなたの気持ち”より、“社会の形”のほうが大事だって」


「でも君は、違った。

君の言葉は、**“誰かの痛みを見ようとしてる”**んだよ」





ミナトは、ゆっくりと彼女の横顔を見た。

ナナの瞳は、人工光の中でほんの少し濡れていた。

それでも涙は落ちない。


風が髪を揺らす。制服の袖がはらりとめくれ、そこに小さな手書きのメモが覗いた。





「誰かのことを思って書いた言葉は、

自分の体の中にも火をつける」

――イズミ・ナナ





「……これ、君の詩に返したの。はじめて自分で書いた」


「まだ、怖いけど」

「でも、“言葉”って、ひとりじゃないって感じがするから」





ミナトは、ゆっくりとメモを受け取った。

文字は震えていたけれど、そこにははっきりとした“温度”があった。


「ありがとう」


その一言に、ナナは驚いたように目を見開いた。

“感謝”という言葉が、ここまで自然に返ってくるのを聞いたのは、久しぶりだった。





その日の夜。

ミナトの端末には、またしても通知が届いていた。


「対人共鳴スコア異常:観察対象昇格」

「新たな関係性反応が検知されました」


彼は通知を閉じ、スケッチ帳の最終ページを開いた。


「感情は、ひとりじゃ生まれない。

共鳴して、言葉になって、

世界がやっと“少しだけ”変わる。」




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