松本家は伝統と格式を誇る一族として地元に貢献し、松本会計事務所はこの地域では大きな会計事務所として世間に知られていた。
だが、その家の名誉を一夜にして失墜させる出来事が発生することとなる。
ことの発端は、野島隆也が松本和子を訴えたところから始まった。
義母がダンススクール内、及び街頭において不同意セクハラ、ストーカー行為の証拠を持って、彼女を直接告発することとなった。義母はこのことが公になることで社会的な地位を大きく失う恐れがあったため、示談を望んできた。言われた通り以上の金額を払うと隆也に言ってきたのだ。
和子は事態が大きくなることを最も恐れている。金で解決してきたのが今までの手口だ。そして彼女は、ここから被害者に圧を掛けてくる。
『ご両親や親族が会社で立ち行かなくなれば さぞお困りになるでしょうね』と。
しかし野島隆也は示談をぜったいに許さなかった。どんな好条件も全てはねのけ、彼は声を大にして訴え、今まで彼女が犯してきた罪や性犯罪の被害がいかに深刻であることを伝えた。折り合いがつかないため、遂に裁判に持ち込んだ。
いよいよ、調停が始まる。
和子との裁判が開かれた。法廷は緊張感に包まれ、メディアや傍聴人が多く集まっていた。スキャンダラスな裁判なので当然注目の的となった。
隆也は弁護士の亜澄と共に法廷に立ち、和子を相手に戦う準備を整えていた。相手の弁護士も優秀だったが、取るに足らなかった。大きな証拠の前には手も足も出せず、こちらの圧勝の気配が色濃かったからだ。
そのような状態であるため、裁判は公然と行われ短期間で終わったが、和子のせいで松本家の名前が社会的信用に傷をつけることとなった。証拠が明確であり、彼女の行動は一般常識で許容される範囲を大きく超えていた。
結局、和子は公の場で野島隆也に対する謝罪とともに、高額な補償金を支払うことで決着がついた。
家に戻った和子は、騒ぎを知った夫の宗助から平手打ちを喰らった。
「松本家の看板に泥を塗るようなことがよくできたなっ!!!!」
バチン、バチン、と何度も頬を叩かれた。
厳格な昭和夫を持つ和子が、息子や若く自分に逆らえない男性に固執した理由を垣間見た。和子がこうなったのは、厳しい夫のせいだった。
「もうしわけ…ございません……」
「お前の安っぽい謝罪でどうにかなると思ったら大間違いだぞ!!」
赤くなった頬をさらに叩かれ、和子は堪らず床に倒れこんだ。腫れあがった頬がじんじんと熱を持ち、切れた口内からは血の味がした。
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