「どうしても伝えたい」
泣き疲れ、私はいつの間にか眠りに落ちていた。
何度も 紀坂(きさか)に手を伸ばすのに届かなくて、うなされるようにして夢から覚める。
朝、ぼんやりした頭でシャワーを浴びるうち、紀坂が離れていった現実を思い出して、涙が溢れそうになった。
日比野(ひびの)に別れを告げられたのは、単に離れる決意ができたからだけじゃない。
日比野と別れたら、紀坂に自分の気持ちを伝えようとしていたから頑張れたんだ。
「あなたが大切だ」と、「傍にいてほしい」と伝えようとしていたから、勇気を出せたのに……。
日比野に抱きしめられた私を、紀坂は無機質な瞳で見ていた。
去り際にかけられた言葉も思い出し、いくらでもよくない考えが浮かんでくる。
(このままもう会えないのかな)
こぼれた涙を消すように、シャワーのお湯を顔に当てた。
……だめだ。泣いても仕方ない。なにも始まらない。 ****************************
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