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空は綺麗だ。僕が医者にもう長くないとそう言われた時も空は美しく澄み切っていた。
「なんで僕なんだろう」
誰にも聞こえないくらいの声でそう呟いた。これは数十分前の話だ。
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「非常に言いづらいのですが、早野凌也さん」
そう医者は僕の名前を呼び1拍を置いて口を開いて言った。
「あなたはもう・・・長くはないでしょう。もっても1年です」
そう僕へと告げたのだった。
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それから僕は退院の準備をするため病室へと戻った。ひと通り準備を終えたため外を眺めていた。余命宣告を受けても不思議と清々しさが僕の心の中にあった。辛くなかったわけじゃない。でも、なぜだか心のモヤが晴れたような、そんな気がした。
「なんで、なんだろうな」
荷物を持って医師の元へ軽く挨拶し、僕は外へ出た。そんな中、僕はふと考える。残りの余生をどのように過ごすか。1年と限られた時間で何もせずに終えるのは勿体ないと思ったのだ。考えに考えた僕はその答えを導き出した。
『人の役に立ちたい』
これが僕の出した答えだった。そうと決まったら早速行動に移そうと考えたが、たったひとつ、されどとても大きいひとつの壁があった。
「人の役に立つってどうすればいいんだ?」
そう、たった短い1年の中で困ってる人を助けたり、人の役に立ったりする場面に直面することなんてそう多くもないのだ。だからこそ、そのような機会を数多く設けられる『何か』が僕には必要なのだ。
「ねぇ、君」
そう声がした方へ視線を送ると、そこには1人の少女が立っていた。肩より少し上まである黒髪に、幼めの顔をしていた。
「はい、なにか御用でしょうか」「何について悩んでるの?」
単刀直入に彼女は僕へそう尋ねた。だがこんな悩み、人に言えることではないと考えた僕は悩みの内容についての言及は控えることにした。
「あぁ、いえ。大したことではないので、お気になさらず結構です」
「そっか。それじゃあ、いつか聞かせてくれたら嬉しいな」
「まぁ、また会える保証なんてありませんけどね」
そういうと彼女は、ニヤリと笑い言うのだった。
「会えるよ。きっと私たちは、またどこかで」