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息を切らしながら双子の案内に従い走る。着いた先にいたのは不気味な人外だった。黒いドロドロした液体のような物に、大量の目がついている。口らしき部分もあり、辺りにあるものを食していた。月華はこのような人外を見慣れているが、剣は見慣れていない。思わず顔をしかめた。
「あー大丈夫??ねぇ月弥、その子避難させてあげてよ、それまでは俺らがあいつの相手するから!!」
「そのつもりだよ。」
月弥は剣の手をひいて物陰に隠れさせる。
「音をたてないように。」
人差し指を口に当て、剣に忠告する。
「わ、分かった……。」
月弥は「いい子。」と微笑んで剣の頭を軽く撫でてから月華達とあの人外を相手にしていた。双子は片腕がないにも関わらず、俊敏な動きで相手を翻弄していた。あの二人だけでも倒せたんじゃ…??と剣が思った矢先、あの人外から触手のような物が伸びてきて月華達に巻き付いた。
「っ!?!?なんだこれ……!?」
月華は触手の拘束が強すぎたのか顔をしかめている。やられっぱなしはわけにもいかないのか、千切ろうとしてるみたいだがびくともしない。
「おっ、と……。」
ギリギリ月弥はかわし続けてるようで、体力にも余裕があるようだった。
「わっ……。」
「…ちっ……。」
双子の赤い髪の毛の方は拘束されては驚いた声をあげ、双子の白い髪の毛の方はまたか…とでも言いたげな表情をした。
「ねぇロワ、また捕まっちゃったんだけどどうする~?」
「どうするもなにも、切るしかないだろ、……拘束が強すぎるが。月弥は避けられてるが、片方はもはや飲み込まれそうだぞ……。」
白い髪の毛の方はロワというらしい。ロワの言葉を聞いて月華に視線を戻すと、今にもあの人外の口に入れられそうになっている。
「ッッ、月華君ッッッッ!!!!」
自分の安全は今はいい。月華を助けなければという思いでいっぱいになった剣は何も考えずに物陰から飛び出す。
「っ、馬鹿!!剣は隠れてろ…!!」
月華は剣に向かって叫ぶ。
「今はどうだっていいッッ…!!」
剣は勢いよく人外の口の中へ飛び込む。
「ッッ!!!!剣!!!!」
「剣!?!?」
月華と月弥の悲痛な叫びが響く。双子も驚いたまま声をあげられずにいる。剣は飲み込まれてころされてしまったんじゃないか、嫌な予感が全員の頭をよぎる。しかし次の瞬間、人外は全員の拘束を解いた。そして勢いよく剣を吐き出す。剣は飛ばされた後、動揺はしていたが体勢を整えて見事に着地した。
「剣…お前そんなに凄かったのか……。少し甘く見すぎてたな。ありがとう。」月華は感謝を述べるとひるんでいた人外に向き直り、走っていく。
「………ふんっ。」
ゴッと鈍い音が響いたかと思うと、月華が人外の目を思いっきり踏んづけていた。人外はもがき苦しむような悲鳴をあげて消滅していった。
「不意を突かれた…。」
不満そうにする月華だったが、倒せたのは事実。剣は嬉しそうに月華に抱きつく。月弥達も寄ってきて、双子からは感謝された。
「いやぁさっきもあいつに手こずっててさぁ、月弥にも手伝ってもらおうと思ったんだ。」
「さっきより拘束が強くなってたな…。月華と剣とかいったか、無理させてすまない。」
ロワは深々と頭を下げた。月弥は剣と月華に「良かったな。」とでも言うように微笑んだ。その後剣は、中々の実力があると見込まれ、敵対的な人外討伐をすることになった。無事今回の件は終わり、全員が屋敷へと戻って行った。その一部始終を見ていた人物がいたとも知らずに。