願わくば……その空虚さが、彼を救いますように。
彼の中で渦巻くモノの正体。
それはおそらく……孤独という名の病魔だ。
彼は誰よりも優しい男だったよ。
ただ……優しすぎたのだ。
他者のために自らの命すら投げ出せるほどのね。
だからこそ、あんな最期を迎えた。
だが……君たちは違う。
君は彼に似ていない。
だから大丈夫だよ。
きっと、救われるはずだ。
彼はもういない。
だが、私はここにいる。
私を見ろ!……私は、ここにいるぞ!! お前たちの前にいるのだ!!! 傲慢さとは程遠い、悲痛なる叫び。……ふむ、やはり違うな。
まぁいい……。
彼は……どうやら、 己の妄想の中ですら満足できなかったようだ。
ならばいっそ……
私の創り出した幻像の世界へ招待しよう。
ここは……なんだって叶ってしまう場所だからね。
まぁ……そんなことより、 キミはいったい何を願おうというのだ?……ああ、そういうことか。
どうやらキミにも願いがあるようだ。……なら、私もそれに協力しようじゃないか。
まずは、その剣を渡して貰えないだろうか?……ありがとう。
やはり、そうか。
なるほど、確かにこれは、 混沌とした、からっぽの世界だよ。
狂気と正気の境界に立つ者よ。
君は何を想い、ここに来たのだ? 君にとってここは、 ただの幻にすぎないはずだ。
それとも、ここに居続けるうちに、 真実だと錯覚してしまったかな? 君の抱いている幻想は、 いつか必ず終わるぞ。
それにしても……
なかなか面白い発想をするじゃないか。
いや、むしろ、突拍子もないと言うべきなのかな。
そんな考え方があるなんて、思いも寄らなかったよ。
まったく、君というヤツは、どこまで私を楽しませてくれるつもりなんだ? ふむ、どうせなら……もっと見せてくれないか。
この世界を揺るがすような大事件を! 私はね、退屈してるんだよ。
このところ、ずっとな。
退屈しのぎは嫌いじゃないんだ。
ああ、いいとも。
君が望むなら、 いくらだって付き合ってやるさ。
だから……早くしてくれ。
いつまで待たせるんだ? そろそろ飽きてきたぞ。
私が満足するまで、ここから出すと思うなよ。
ほぅ……これが例の、
「世界」というものの正体かい? まさか実在するものだとは思わなかったよ。
まぁ、確かに、 世界とは人間の心の集合体であり、その心が形作る幻想の世界なのだとすれば、
「心」という名の空虚もまた、世界の一部と言えるのかもしれないが……。
ふむ……
心の在り方そのものを問う作品というわけか……。
つまりこれは……
ヒトとは何か? という問い掛けなのか? だとすれば、答えは既に出ているようなものだが……。
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