コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
break out ifです。
曲見てからの閲覧を推奨します
「おい来たぞ…ッあいつらが特殊部隊Snowだ…」
6人の男たちが外套を翻し堂々と歩みを進める。
「にゃっはは〜w俺たちなんか噂されてんね!」
ピンク髪の彼がひらりと周りの人間に手を振る。
多くの人間はその美しさに呆気を取られているが、数人は「ヒィ!」と言い逃げてしまった
「およよ?」
「この前歯向かってきてたやつじゃん、ウケる」
クールな彼の周りには真紅の鉱石でできた花弁が舞っている。
それもまた多くの人間が目を惚けさせているが本人は気づかない
「2人とも、周りなんか気にしちゃダメだよ、任務任務!」
「あざとい警察です!逮捕ォーーー!!」
「えぇ?!」
異能力者で編成されている特殊部隊Snowは、無能力者では対処できない事案を片付ける組織であり、
少人数ながら軍隊並の力を保有している。
異能力者のみ立ち入りを許される施設に颯爽と6人は入って行った。
6人それぞれの席に座り班長である岩本が前の席へ腰を下ろす
「阿部、今日の仕事って?」
班長である岩本が阿部に問いかける。
「ん!えっとねぇ…」
阿部が手を左から右へ宙を回せばデジタルウィンドウが表示される。
「バーメン地区に若者の異能力者が監禁されてるから助けろ、だってさ」
「ふーん、つまり?」
宙に舞う花弁をくるくる弄りながら見透かしたような目で問いかける
「とっとと軍の傘下に入れろってことっしょ!」
そう言って佐久間は時空を歪めて宙にねっ転がる
「お前なぁ…もう俺らしかいないからって能力当たり前のように使うなよ…」
「んえぇ…」
「なるほどな。…ところで、6人全員招集ってことは理由があるんだろ?」
「はは、ご名答。なんとその異能力者3人もいるんだって」
「厄介だね、それはしんどい」
「6人で制圧と勧誘ってわけか」
「よし、さっさと終わらせますか。」
岩本が立ち上がれば皆立ち上がり、それに着いていき中庭に出る
「阿部、バーメンまでどんくらい?」
「んー車で1時間とか?」
「佐久間は能力でいけるよな。」
「にゃす!合計4人くらいなら!…20分くらい?」
「じゃあふっか以外よろしく」
「にゃすにゃす」
佐久間が手を合わせ広げれば空間が歪んだ入り口が現れ、そこに佐久間含め4人が中の異空間に入る。
「阿部、ナビ頼んだ」
「はーい、じゃああっちで!」
中に入った佐久間が手を広げて閉じれば空間も閉まり、元の景色に戻った。
「よし、ふっか行こうか」
「やっぱ照も乗ってくのねw、はいよー」
深澤が下を向き、目を瞑り、何かを唱える。
そしてゆっくり状態を起こすと周りからぶわ、と鉱石が集まる。
それが羽根になり、口ばしになり、胴体を創り上げ、大きな鳥の姿を形どっていく。
「ふーぃ、行こっか!」
「おう、乗らしてもらうな」
2人が背中に乗り、深澤ぽんと背を叩けば空へ飛びったっていった。
ーーーーーーーーーーーー
「おー、もう10分くらいでつきそうだね」
ナビを見ながら阿部が時間を計算し、佐久間に伝えた。
「まじぃ〜?」
佐久間は汗をぽたぽた垂らしながら空間を現地へ繋げていく
「佐久間大丈夫?しんどかったら言ってね」
「いやー…しんどいってゆーか体が暑くなんだよね」
「お、ちょっと冷やそうか?」
そう言うと舘が手からパキキ、と氷の粒を作り出す
「俺の周りだけ冷やしたり出来る?」
「お安いご用だよ」
宮舘が手をふわ、と舞わせれば氷の粒が幻想的に佐久間の周辺へ纏う。
「あ゛〜涼し、ありがと!」
「お、現地はもうちょい先だけど…これ1人外出てんね」
カメラをウィンドウに写し、みんなに共有する。
すると渡辺がいじっていた鉱石をパリンと割りキレる
「はぁ?まじかよ」
「走ってるし逃がされたのかな?ここはふっか達にお願いするよう連絡するね」
「あーね」
自分がやらなくていいのなら、と機嫌を戻したようだ
「おし!ちょっとコツ掴んだ、飛ばすよーッ」
ギュイン、と空間が歪み全員が揺れる外套を少し抑えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ピコンッと音がして阿部からのメッセージを受信する
「照、1人脱走してるって」
「マジ?」
「んでそれお願いされたw」
「ほんとじゃん…マップだと西に32°くらいだな」
「おk、一旦道塞ぐように降りるかぁ」
視線の下に必死に走る金髪の男が見える
「ふっか、あれ」
「お」
全速力で降下させ、男の行き先を塞ぐように着陸する
「ぅああッ…いだ…」
尻餅をついた男に2人は歩いて迫ってゆく
「おつかれさま、また喚ぶからね〜」
そう言って、深澤が触れたところから大きな鳥もバラバラと砕け、消えてゆく。
「おー、君おっきいねぇ。とりま俺らに着いてこない?」
帽子をくい、と直しながらにこりと微笑んでみせる
「ふっか雑すぎ、俺ら軍なんだけど一緒に仕事しない?」
こちらも同じように振る舞う。
しかし彼にとって2人は敵に見えているようで、聞く耳を持たない
「い、いやだ…ッお前らだって俺らを利用するんだろ…」
その男がゆっくり立ち上がれば岩本を越す身長を持つ美しい顔立ち青年だった。
「わぉ…びじん」
何言ってんだ、とでも言うように深澤の背を岩本が叩く
「いやだ…蓮にぃと康二君が機会をくれたんだ…!俺は誰にも従わない‼︎」
そう言って、彼が手で銃の引き金を引くような動作をした。
そこに銃はないはずなのに、まるで本当に撃っているような…
すると、ラウールの後ろでガシャゴチャ音を鳴らして銃器やロケットが錬成されていく。
「おいおいまじか…ッ」
深澤も即時に能力を使い鉱石を操り喚び戻す
「落ちつけ、俺らはお前らの敵じゃねぇ!」
岩本はそう叫ぶが能力の放出に集中しているラウールには届かない。
そのため、話の通じないラウールを眺めて、彼の能力を分析し始める。
「照やべーって!一旦飛んで逃げよう?!」
既に深澤が乗り、飛び立とうとする鳥に岩本は先行け、と促した
あ、と何かに気づき岩本は歩みを進める
「これ…起動しねぇな!」
岩本はラウールにそう叫ぶ
「…ッうるさ…ぃ」
ぼたぼた汗を流し能力を操りきれていない彼に岩本は近づいていく。
深澤は空から現状を見守っていた
「これ、お前じゃまだ使いこなせねーよ」
パチン、と指を鳴らせば幻想のように銃器が燃え、塵のように消えていく。
「ん、一緒に兄ちゃん達んとこ行こうな」
ラウールの肩をぽん、と叩けばふらりと倒れるように眠った。
「ふっかー、あいつらんとこ行こ!」
遠くから「あいよー」と聞こえ、大きな鳥がどん、と着陸してきた。
ーーーーーーーー
「んあー!とぉーちゃく!!」
佐久間が捻るように手を広げれば現場への空間がこじ開く。
渡辺は大きなあくびをしながら異空間から出てくる
「ふぁ〜…ねむぃ」
「佐久間、ありがと!」
阿部もナビの画面を閉じ、感謝を述べた
「にゃすにゃす!」
カン、カンと古い廃工場の中に男4人の靴の音が響き渡る。
「随分古いね、ツタも張ってる」
宮舘がツタを触って凍らしてみるも、その生命力に反発された
「これ、能力かも…」
「…そうかもね。広いし見つけんのたいへんだなぁ…どうしよっか」
マップを眺めながら阿部も頭を掻く
「俺が空間こじ開けて探そうか?」
「さっきまで使いまくったんだからちょっとは休めよ。俺がやる」
「しょっぴー珍し!やる気あり?」
「うるせー…」
渡辺が手を前に伸ばし、唇にそっと指を滑らす
「…探してこい」
そう言って息をふっと吐けば鉱石の花弁が四方八方へと舞ってゆく。
そして渡辺は目を瞑り神経を集中させる
「んあー、いない。ここもいない…ここは?ん…罠か、一丁前に罠なんか置きやがっ…あ。」
パッと目を開き上を指さす。
「そこか」
ピンッと宮舘が指を弾けば天井がピキキ、と凍り崩れ落ちる。
「うわああああ、いややああああッ」
「…ッ康二」
と同時に茶髪の関西弁が自らで空中に鉱石を生み出しちょっとづつ転げ落ちてくる。
「うぎゃっ…いだいねんもぉ…ってぎゃああああああ?!?!!」
「うるっさ…」
渡辺は耳を塞ぎ阿部は視線を合わせるように屈んだ
「こんにちは、向井康二さん…ですよね?」
「はいぃ…怖い人達ですか?」
「違うよ。君たちをスカウトしたいなって」
「すかうと…?研究とか人体実験じゃなくて?」
「俺らも異能力者だよばーか」
「あと、ラウール君も保護してるんだ。着いてきてくれる?」
す、と画面を空中に出し眠るラウールの写真を見せれば向井はキ、と睨んでくる
「康二…」
渡辺が上にいる人間に気づき叫ぶ
「おーーーーーい!そこにいるやつーー!!降りてこーい!」
「嫌だ!!!!もう人に利用されんのなんて懲り懲りなんだよ!」
目黒の体からぶ、わっとツタや植物が生み出される。
しゅるると伸び続けるツタは向井を掴み屋根まで持ち上げ、4人のことも拘束しようと伸びてくる。
「わ、わ…ッめめ怖すぎやってえええええええええッ‼︎」
「およよ?!宣戦布告ゥ?!なら俺っちやっちゃうよ!」
手を大きく広げてぐわ、と空間を跨いで一気に屋根にあがった佐久間は目黒を掴んで拘束しようとする
「かくほぉ!」
「め、めめにいじわるせんといて!!」
と、同時に佐久間がもといた場所に弾き飛ばされた。
「んぇえ?!空間の歪みを戻された?!にゃんデェ?!」
「向井康二ってやつ、鉱石生み出すだけかと思ったけどあれ空間書き換えてんぞ」
傍観していた渡辺もまずい、と気づき襲ってくるツタをスパスパ切って援護している。
「マジィ?!」
「うーん、ツタが困るね。翔太、あそこら辺一帯切れない?」
「あの量を?太さもあるしなぁ…」
「「「「あ。」」」」
ーーーーーーーーーーーー
「ハァ…ハァ、康二動ける?逃げよう…ッ」
「で、でもラウが…」
目黒が康二の手を引き屋根から梯子に移動している時だった
「今は俺らだけでも逃げ
じゅ、と音がしたと思えば
目黒が張ったツタが塵になって焼き切れていく
「な、なんで…ッ⁈?」
「残念だったな。植物と炎じゃそっちの分がわりーみてぇだ」
鳥に乗った深澤がひらひらと手を振っている
「みんなー、きたよー」
じゃあ、と隙を見て渡辺が花弁を目黒と康二の周りに纏わせ、
ぴた、と円になって体を這うようにくっつけるとパキパキと鉱石に変えていく。
「おーし、そんじゃ帰りますか」
ーーーーーーーーーーーー
人数も増えたため、軍の車で帰ることとなった。
ガタゴトと車輪の音が車内の静寂を埋めていた。
目黒が初めに口を開いた。
「俺ら、これからどうなっちゃうんですか?」
阿部が作業中のウィンドウを閉じ、質問に答える
「うーん、多分だけど、俺らと働くことになるんじゃないかな?」
「…康二とラウールも一緒ですか?」
はらはらと美しすぎる涙を流す。落ちた水滴は床に花を咲き誇らす。
「…ッ⁈、2人とも能力が強すぎたんだね…」
何もない場所から生命に近いモノを編み出す彼の能力は誰もが欲しがるだろう…
「そうなんですか?」
「そうなん?」
「うん、能力者でもここまでの人はあまり見ないよ」
すり、とラウールの頬を撫でる。彼は未だ眠っている
「ラウール君の能力は2人と違ったね…文明に近い能力、なんだろう。海外の能力でよく見るものだった」
「…ラウールは外から来たんだ」
「せやねん。俺らはずっとこの世界で生きていたけど、ラウールが外から入ってきて、
俺らにいろんなことを教えてくれたんだ」
「2人はどこで育ったの?」
2人は顔を見合わせて、向井が口を開いた。
「しろい壁のなーんもないとこ」
まだ調べるべきことがありそうだ。
「…そっか、ラウールと出会えて良かったね」
「うん、俺らほんとに幸せ者」
この笑顔を守りたい、と阿部は2人を撫でた。
渡辺がウトウト外の景色を眺めている
「しょっぴー、拘束解いたげて」
「ん」と指を上にくい、と曲げれば
2人を拘束していた鉱石が花弁に変わりヒラヒラと舞い落ち、消えていった。
「すごい…綺麗だ」
目黒が消えていく花弁を手に取りすり、と触れる。
「お前だって花出せんだろ」
「ぇ、ここまで操れませんから…」
「…仲間になったら、色々教えるよ」
「ッ…ありがとうございます…」
「わ、…ぇと、おおきに…ッ」
またグスっと泣き出して、困っている渡辺にくすくすと阿部が笑う
この3人が仲間になって9人で活動し出すのは、まだ知らない未来の話。
Fin.