撮影に関する説明を受けた後、さっそく衣装に着替え、メイクを済ませて撮影スタジオに入る。
「ミセスグリーンアップルの皆さんです、本日はよろしくお願いしまーす」
「よろしくお願いします、大森でーす」
「若井です、よろしくお願いしまっす」
「藤澤です、よろしくお願いしまーす」
小物などもちゃんと用意されており、普段の撮影と何ら変わりないクオリティに舌を巻く。
「まず大森さんからソロとってきまーす」
「はーい、お願いします」
撮影スタッフらが指示をうけあれやこれやと準備にかかる。その時
「あっ、これ持ってあの位置立って」
「えっ」
急にレフ板を渡される涼ちゃん。どう考えたってあんなきらびやかな格好をしたスタッフいないだろとは思うが、まぁそこは仕方ない。
え、え、と戸惑う涼ちゃん。てっきり、いやスタッフじゃないので、と返すと思いきや
「この辺で大丈夫ですか?!向きは?!」
こう?こうですか?真剣な表情で向きの確認をしている。思わず吹き出す俺。奥で若井も肩を震わせているのがみえる。どうしよう、今日の撮影、俺の腹筋が心配になってきた。
無事撮影が終わり、昼食休憩になる。差し入れにプリンがあったよと伝えられていた涼ちゃんはうきうきだ。
「涼ちゃん今日のケータリング何ある~?」
「えーとね、チキン南蛮かな?これ。あとはね、なんか焼いた魚のと、野菜の……青椒肉絲だ」
「じゃあ俺チキン南蛮のやつ!」
涼ちゃんと若井がケータリングの弁当を見ながらわいわいと話している。
「てか涼ちゃんさっきスタッフと間違えられてなかった?」
若井がにやけながら先ほどのドッキリのことを話題に出し、反応を窺う。
「ね~!僕もびっくりした~」
でもちょっと面白かったよね、あれ。と涼ちゃんは笑う。
「でもどうなのあれ、失礼じゃない?イラっとしなかった?」
結構突っ込むなぁ若井。俺は涼ちゃんの反応を見つつ、控え室に仕掛けられた隠しカメラの方を確認する。確かあそこの物陰とそこの隅と……。
「え、僕ミセスって分かりにくかったってことだよね?もっと派手にした方がいいかなぁ」
そう言って涼ちゃんは明るいトーンの毛先をくるくるといじる。十分派手だろ。あと微妙に話がかみ合ってないのも涼ちゃんらしいといえばらしい。
「藤澤さーん、すみませんちょっと確認お願いできますか」
3人で弁当を食べていると仕掛け人のスタッフが声をかけに来た。ここで席を外している間に俺が涼ちゃんの分のプリンも食べてしまうというシナリオだ。涼ちゃんが部屋を出ていくと、すぐに別のスタッフが来てプリンの空き瓶を机に設置していく。
「涼ちゃんプリン好きだからなぁ」
すでに弁当を食べ終わった若井がプリンを開けながら楽しそうに言う。何となく察してはいたが、この企画、若井はなかなかに楽しんでいるらしい。
「いやでも怒りはしないでしょ」
「分かんないよ、お腹減ってたら怒るかも」
顔を見合わせて二人で笑っているところに、ちょうど涼ちゃんが帰ってきた。
「ただいま~、何?なんか二人楽しそう」
「いや、俺がプリン美味しいって話してたの」
俺の言葉に涼ちゃんが、お~、と声をあげる。
「プリンね、え~楽しみ!」
「あっ、俺、涼ちゃんの分も食べちゃった」
「えっ」
そっと彼の前に空になった瓶を二つ並べてみせる。涼ちゃんはそれを見てから、横にいる若井が食べかけのプリンの瓶を持っているのを見て「あっ、みっつ……」と小さく呟いた。あ、これは罪悪感。動揺して思わず台本から外れて謝罪の言葉を口にしかけたとき
「でも元貴が珍しいよね~、美味しく食べれたならよかったですよ。今日はスケジュールも詰まってることだしね」
そういってうんうんと頷く涼ちゃん。ちょっと落ち込み気味だが、それを悟らせまいとしているのが分かる。あぁもう、あとで好きなだけプリン買ってあげよう。若井が涼ちゃんの様子に可哀想になってしまったのか「俺のひとくちいる?」と台本無視で聞いている。は?ちょっと、それじゃあ俺だけひどい奴じゃん!あ、しかもあーんしやがって若井このやろう。俺の嫉妬などよそに嬉しそうな涼ちゃん。……この企画、受けなきゃよかったな。だって、この後の「④苦手な生姜を騙されて食べさせられる」の仕掛人も俺なのだ。
「ごめん涼ちゃん、代わりにこれあげる」
差し出したのは生姜味ののど飴。透明な包み紙なので、見ただけでは味は分からないものになっている。
「え、ありがと~、なにこれ」
「んー、のど飴」
「のど飴なんだ、これ。初めて見た~元貴いつも舐めてるのと違うよね?」
えっ、めずらしく鋭いな。
「何の味か当ててみてよ」
すぐに食べてもらうために誘導する。いつもはあまりない展開に涼ちゃんはちょっと怪訝そうだ。
「え、じゃあいただきます?」
小首を傾げながら包み紙を開けて、べっ甲色のそれを口に含む。
「ん゛っ!」
即座に顔を顰める涼ちゃん。
「ん゛~~!!え゛あっ、僕ッ、これッ、苦手なやつ!」
椅子から立ち上がって、口を押えながらバタバタと動き回る涼ちゃん。たぶんティッシュか何か、飴を吐き出していいものを探しているのだろう。
「ごめっ、出させて……」
顔を真っ赤にして目を潤ませながら懇願する涼ちゃん。え、なんかえっろ。ちょっと……いや、だいぶ、お茶の間に流すにはアウトな映像になってないかこれ。慌てて隠しておいたティッシュボックスを差し出す。無事ティッシュに飴を吐き出した涼ちゃんはごくごくとお茶を飲んでから
「元貴ー!これ生姜の味するよー!」
と半泣きで俺に訴える。俺はちょっと笑いを堪えきれない。
「え、だってのど飴だもん」
「えー!のど飴だっていろいろあるじゃない……レモンとか……」
首を傾げながら口を尖らせる涼ちゃん。まぁ予想していた通りだが、これくらいで彼は怒ったりしないのだ。
※※※
新生活新しいことがたくさんでどたばたな作者です
皆さんからのコメントに元気もらってます……!いつもありがとうございます〜😭✨
コメント
18件
いろはさんの🍏への理解度にはいつも圧倒されます...🙈涼ちゃんがめちゃくちゃ涼ちゃん。今回も最高です!ありがとうございます〜!💗🙌🏻
涼ちゃんかわいすぎる~! めちゃくちゃにやにやしながら読んでる(笑) 続き楽しみにしてる!でも無理せずにね💦
もう、ニヤけが止まらない。不審者みたいになってると思う笑 涼ちゃんのドッキリ番組本当にやって欲しいと思ってしまいましたね💕︎