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『第三部』
翌日、公園に集まった僕らは、なぎさの家へ向かった。
「ここだ」
真っ白な壁の、二階建ての家の前に立ったかな。
「なぎ───」
「待て」
走り出したリクを静止したかなは、なぎさのお母さんが家を出るのを見届けてから声を上げた。
「おい、委員長」
バタバタと、足音が聞こえる。
「なぎさ?」
名前を呼んだかなは、ベランダから顔を出したなぎさを見て顔を綻ばせた。
「…かな?みんなも…何でここに」
「かなに場所聞いて来た。なぎさも一緒に行こうよ」
「でも…」
「あんたたち何してるの?!」
甲高い怒号に、その場の全員が顔をしかめたのがわかった。
「だめよ、凪。部屋に戻って勉強しなさい。今がどれだけ大事な時期かわかってるの?ここで少しでも怠けたらこの後に───」
「…嫌だ」
「⋯今、何て言ったの?」
「嫌だ!」
初めて聞く、なぎさの怒った声だった。
「何で母さんの言うこと聞かないといけないの?!何で友達くらい自由に作らせてくれないの?!何で?!ねえ、答えてよ!」
なぎさのお母さんの瞳が揺らぐ。
「母さんの課題も全部終わらせた。大学だってA判定もらってるし、先生にも褒めてもらってるよ」
なぎさの声が弱くなって。
いつの間にか近くにいたなぎさのお父さんらしき人が、お母さんの肩に手を置いている。
「旅行行く予定だから、行ったらその分帰るのは遅くなるけど…ちゃんとその分勉強するから」
涙ながらに行ったなぎさに、お父さんらしき人が優しく声をかける。
「今までごめんな」
「…父さん」
お母さんはいなくなっていた。
「旅行、楽しそうじゃないか。行っておいで」
「…ありがとう」
「帰っても、無理に勉強しろとは言わない。ちゃんと高校を卒業してくれればそれでいい」
なぎさはこくっと頷いて、行ってきます、と呟いた。
「行ってらっしゃい」
お父さんを見送ってから、目元を赤くしたなぎさが家の外に歩いてきた。
「かな、それにみんな。…ありがとう」
「初めての反抗、認めてもらえてよかったな」
「かなはいつも一言余計なの」
それで、となぎさが顔をこっちに向ける。
「何を使って、どこに行く予定なの?」
「新幹線で東京行くつもり。俺のおじさんが今東京いるから、初日はホテル泊まって次の日からはおじさんの家に泊まる予定」
「費用はどうするの?」
「ホテル代はおじさんが出してくれるって。新幹線は自腹かな」
そうして僕らは、東京へと旅立った。
新幹線からは、ゆらゆらと風に揺れるマリーゴールドが見えた。
新幹線を降りると、見たこともないくらい大勢の人々がいた。
「え、何これ」
「これが東京駅だよ。ホテルまで近いから歩いていくね」
「ハルなんでそんな詳しいの?」
「自分、東京から引っ越してきたから」
「ねえ、リクいないけど」
なぎさの声に、全員がその場を見回す。
「リクー!」
僕が叫ぶと、リクがたたっと走ってきた。
「ゆう、よかった。気付いたらみんないなくなってて」
「東京駅は迷路だから気をつけてね」
ホテルに入ると、用意されていた部屋は1人部屋と4人部屋だった。
「どうする?」
「自分1人の方がいい」
そう言って、ハルが1人部屋に入っていった。
荷物を置いてハルの部屋の前に行くと、ハルがちょうど出てきたところだった。
「お風呂入ろ。汗すごいんだよね」
「わかる。結構動いたよね」
青いのれんをくぐる。その時、視界にひらりと赤がひらめいた。
「…ハル?」
ハルが、赤いのれんの前に立っていた。
「何で、そっち…」
「…自分、女だけど」
その場に、衝撃が走る。
唯一動けたのは、なぎさだった。
「どういうこと。説明して」
だんっと壁に手をついたなぎさ。
…と壁の間には、ハル。
「ねえ。何で隠してたの?」
「…なぎさ」
「…何?」
「全然届いてないけど」
なぎさの顔がみるみる赤くなる。
「ふっ、あははっ!」
ハルが吹き出して、声を上げて笑う。
「何がおかしいの!」
「だってっ、全然っ、届いてない…!」
笑いながら言ったハル。
なぎさは小柄だから、ハルの首くらいまでしか身長がない。
「ねーもういいから!何で男子のふりしてたの?」
「別に、男子のふりしてた訳じゃないよ。最初からちゃんと女子だし」
「こっちが勘違いしてただけ、ってことか」
「そう。だから誘われたときはびっくりした。リクは分かってたんじゃない?」
「うん。手が何か違うなって…無理に聞きたくなかったから」
「それはありがたいけどね。好きでこの格好してるから、変に言われたら逆に嫌だったと思う」