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冬の晴れた日、冷たい風が街を包み込んでいた。コートの襟を立て、手をポケットに突っ込みながら歩いていた。足元の雪が薄く残っている道を歩きながら、どこか物寂しさを感じていた。そんな時、ふと目に入ったのは、通りの先にある雑貨屋のウィンドウだった。青い花を模したブローチが、薄く光を反射して輝いている。
それはどこか刹那を思わせる色合いと形で、つい立ち止まってそのブローチをじっと見つめた。あの時、刹那が笑っていた時の表情と、あの花がどこか似ているような気がして、僕の心は少しだけ温かくなる。
“これ、刹那みたいだな…”
気づけば、思わず呟いていた自分に驚く。その瞬間、心の中で何かが小さく弾けるような感覚があった。
“僕、いったいどうしてこんなこと考えてるんだ…”
自分でもよくわからなかった。刹那と会ってから、何度もこうして思い出すことが増えた。刹那の笑顔や話し方、仕草—それがまるで夢の中のように心に残っていた。
しばらくそのまま立ち尽くしていたが、背後から聞こえてきた声にハッと我に返った。
「おい、渉。ずっとボーッとしてるけど、大丈夫か?」
振り返ると、拓海が立っていた。少し驚き、慌てて顔を背ける。
「なんでもないよ、ちょっと考え事してただけだ」
拓海は渉の様子に不自然さを感じ取ったようで、しばらく黙っていたが、やがてニヤリと笑って言った。
「ほんとか?お前、最近なんか変だぞ」
その言葉に心の中でドキリとした。どうして拓海はいつも、自分のことをそんなにも見透かしているのだろうか。
「変って…」
拓海は渉をじっと見つめ、少し考えるような素振りを見せてから言った。
「なんか、最近お前、目が泳いでること多いぞ」
一瞬、息を呑んだ。その言葉に、思わず自分の心が表に出てしまっていることを痛感した。
拓海は肩をすくめ、言葉を続けた。
「ほら、お前、あんまり言いたくないみたいだけど、なんか気になることがあるんだろ?何か思い悩んでるように見えるけど」
その言葉に、渉は顔を赤くして目をそらした。拓海の目には、何かを感じ取ったような、鋭い光が宿っている。
「…何でもない」
僕は無理に笑いながら答えた。拓海はその様子を見て、少し不満そうな顔をした。
「お前、すぐ何でもないって言うけど、無理に隠す必要ないんだよ。誰かに話したら楽になるかもしれないだろ?」
その言葉に、渉はしばらく黙っていたが、心の中で葛藤が続く。拓海は渉の様子を見て、やがてにっこりと笑った。
「あ…俺分かっちゃった、お前、 恋でもしてるんじゃないか?」
その言葉に、渉は驚きの表情を浮かべる。
「恋って…」
拓海はニヤリと笑い、軽く肩を叩いて言った。
「ほら、気になるやつがいるんだろ?」
その言葉に、僕は何も言えず、ただ一瞬、心の中の刹那を重ね合わせた。