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展望台のある巨大なタワーを登ると、既に何十人と数部隊かの隊員たちが集められていた。
指揮系統にいるのは、先程のUT刑務局副局長、鮪美・B・斗真と、他二人の人物だった。
(少女……?)
その中には、学よりも年下と思わしき少女の姿も見受けられた。
そして、その先には、
「ふふふ……よくまあ、ゾロゾロと……」
取り囲まれる白髪の男が、不適な笑みを浮かべさせる。
(アイツが……件の四天王なのか……?)
俺と学がアウェイにもその場を遠くから見つめる中、少女は俺に目を合わせると、スッと飛び出てきた。
「な、なんだ……? 俺に用か……?」
「こうして会える日を待ち侘びておりました、魔王様」
!?!?
「ちょちょちょちょちょ!! 待て待て!!!」
俺は強引に少女を引っ張り、階下へと走った。
「お前……何口走って……」
少女は、顔を赤らめさせながら口を紡ぎ、
「会えたのは私も嬉しいのですが……その……人目もありますので、強引なのはお控え頂けると……」
ロクな異性関係もなかった俺は、そんな赤らんだ少女を前にたどろんでしまう。
し、しかし、相手は子供だ、子供。
いや、でも異世界年齢的に合法なのか……?
待て待て!! 中身はどうか分からんが、結局のところ見た目は子供だろうが!! アウトー!!
そんなことを頭で考えてる内に、少女は肩をはだけさせると、片膝で地面に足を付けた。
そんな折、学も駆け付ける。
「ちょ、ちょーー!! 白昼堂々何してるんですか!! 児ポですよ!! 児ポ!!」
「違えわ!! 話進まんから、お前もさっさと服着ろ! 第一、俺は”魔王様”じゃなくて、”その息子”だろ!」
「む……そうか……。ならばやはり、魔王様は亡くなられてしまわれたと言うことか……」
(コイツ……親父の配下だってのに、死んだってことも知らなかったのか……?)
「で、どうして親父と間違えたんだ……? 悪いけど、見た目も多分、生まれてからこっちで生きてるし、全然違うと思うんだが……」
「”臭い”よ。魔族の者からは、魔の臭いがする。だから私は直ぐに着付けたの」
(臭い……? もしかして、あの死神が最初に”臭え”って言ってたのも、そのことか……。死地の中の能力……自然と過敏になっていても仕方ない……)
「ちょっと聞き辛いんだけど……お前たち元四天王が、この地球を乗っ取りに来た……ってのは、本当なのか……? だ、だとしたら……!」
そんな俺の言葉に、少女は真剣な眼差しで俺を見つめると、瞬時に腕を上空に伸ばした。
ゴォン!!
次の瞬間、展望台のある上のフロアから、どデカい爆音が鳴り響いた。
「着いて来て!!」
少女の声掛けに、俺たちは急いで戻る。
どうやら、白髪の男との交戦が始まったようだが、数名は黒い円球の中に閉じ込められていた。
「あの黒い玉は私の能力……」
「もしかして……閉じ込めたのか……?」
「えぇ、そうよ。こちらの世界での私は、対UT特務班、No.2 -絶対防御-。前線において、敵からの攻撃全てから皆を守る為の盾よ」
「全然真逆じゃねぇか!! 乗っ取るどころか、めちゃくちゃ守ってんじゃねぇか!! なんなんだよ!!」
「そ、それに、優さん……!! 対UT特務班と言えば、暴走したUT変異体や、UT刑務局のように、宇宙人・地球人を問わず、対人用に強力な戦闘力を誇る者のみで編成された組織ですよ……!!」
「そのNo.2が……コイツ……!!」
その黒い玉を見て、白髪の男もニタニタと笑った。
「フハ! -絶対防御-まで連れて来てるなんて、今回はちょっと辛い戦いすぎるなぁ……?」
「お、おい……アイツも元四天王なのか……?」
「違うわ。鮫島・A・司。何を考えてるのか、捕らえた侵略者を自らの意思で召喚できる謎の男。A型の世代、つまりUT技術の最初期のUT変異体であることは分かっているのに、どこで何を身に付けたのか、資料にはない能力ばかりを秘めていて、未知であり、その狡猾さから、今この世界で最も指名手配されている人物……」
「A型の……世代……!」
何故だか、奴の名を聞いた時、ゾクリと背筋が凍る。
「私の力は、所謂、闇魔法というものなんだけど、この世界には魔法って概念がないから、能力ってことになってるわ。能力名は『重装』。ブラックホール物質を操り、相手の攻撃を吸収して防御に徹しているの」
「ブラックホールを操る!? 無敵じゃねぇか! ならそれでアイツも捕らえられるんじゃねぇの!?」
しかし、-絶対防御-は、静かに首を横に振る。
「見てて」
そう言うと、他には干渉しない豆玉のような黒い玉を手に浮かび上がらせると、そのまま白髪の男に飛ばした。
「あはは、またそれ〜? 効かないんだってば」
そう言いながら、飄々と片手で掴み、ブラックホール物質が含まれると言う黒い玉を握り潰した。
「どうなってるんだ……?」
その光景に、UT技術班にいた学も唸り声を上げる。
「A型世代と言うと、モルモット研究などを経て、一番最初に人間にUT技術を試した被験体……。脳や精神を破壊しないよう、最初は人体の一部のみをと、簡単な実験と成果を上げたのがA型世代のはずです……。ブラックホール物質をかき消すなんて能力は……異常です……」
「ふふ、まあいいや。今回の実験の成果はもう見られたことだし、最後に、君たち刑務局と特務班の底力を試して、終わりにしようかな」
「戯言を……。お前は今ここで捕らえる……!!」
余裕綽々と構える白髪の男、鮫島・A・司に対し、UT刑務局副局長、鮪美・B・斗真が前に出る。
「死神の斗真……君の剣筋ももう知っているんだよ」
鮪美の剣を静かに避けると、その刀を握り締める。
刀は、静かに崩れ、刀身は消えてしまった。
「猿は猿らしく、木の棒でも振っていればいい」
「貴様……!!」
次の瞬間、天井を突き破り、さっき見た小型の侵略者たちが一斉に降り注いでくる。
「さあ、実験の開始だ! この子たちは、さっきの侵略者たちとは違ってね、中に爆弾が仕込まれている。同じように倒しても、ここにいる全員を巻き込むくらいの爆発はしてしまうだろうね……。-絶対防御-の力でも、この数と爆発の前では魔力だろう! はは! 切り抜けてみなよ! 僕を捕まえるなんて、その先の話さ!!」
そうして、手を広げ、鮫島は高笑いを浮かべた。
「クソッ……! こんなモン、どうしたら……!」
そんな時、一人の男が前に出た。
一人だけカチカチのスーツで、整えられた髪型に、眼鏡という、ここにいるのが不自然に見られる、サラリーマンのような男性。
「ここは私に任せなさい。ただ、この数だと私の能力でも半分が限界だ。-絶対防御-! 少しは行けるな!」
「あ、あの人は……?」
俺の問いに、-絶対防御-は真顔で答えた。
「彼も元四天王の一人。最初に、この地球に転移しようと提案したのも彼。今は、『瑛智党』という団体を率いて、主に政治関連に携わってる。ここでの名前は、村田瑛斬」
「村田……瑛斬……。普通の人間として……お前たちは生きているんだな……」
「ふふっ、能力を見たら、普通って言っていられないかもしれないわね」
村田は、両手を広げると、全体を灰で覆う。
その光景を見て、再び学は声を上げた。
「村田瑛斬……! どこかで聞いた名前かと思えば、半年前に山田さんが持っていた、『生命体を遺伝子レベルで崩壊させる拳銃』の元になった人ですよ!!」
「ってことは……!」
次の瞬間、数多の侵略者たちは、灰の中で静かに掻き消されていった。
「-絶対防御-!!」
村田の掛け声に合わせ、-絶対防御-は巨大なブラックホール物質を展開させ、次々に侵略者たちを吸収する。
しかし……
「やっぱりダメ……数匹逃した……!!」
「あっはは! ここまでは予想通り! さあ、残りはどうす……」
飛び出したのは
「ハァァァ!!」
俺だ。
「要は『斬らなければ』よくて、『消滅させれば』いいってことだろ!」
刀を侵略者に当たらないギリギリで振り、蒼炎を侵略者たちに放つ。
「お前は……?」
「一応、この小説の主人公だからな……! そろそろ見せ場作らねぇと、読み手が飽きるんだよ……!!」
ボゥッ!!
そして、残りの侵略者全てを、燃やして葬った。
「へぇ……面白いな……!」
「次は白髪! てめぇ……」
しかし、刀を向けた瞬間、その男の姿はなかった。
「あれ……?」
「アイツはいつもそうなの。どんな能力なのか……捕まえようとしても、消える……」
「魔王の配下たちでも手に追えない……のか……」
UT刑務局とUT特殊部隊により辺りは沈静化し、バイトを抜け出した俺たちも、侵略者の急な襲撃に逃げていたと伝えたら、なんとか誤魔化すことができた。
――
鮪美・B・斗真(UT刑務局 副局長)
能力:死線
死線を感じた時のみ能力が発動。剣術に秀いで、反射神経のみで副局長の座までのし上がる。
-絶対防御-(対UT特務班 No.2)
能力:重装(ブラックホールを操る)
元魔王四天王の一人。魔王ラブな少女。少し変態。
村田瑛斬(瑛智党 党首)
能力:?
元魔王四天王の一人。
鮫島・A・司
能力:?
世界一の指名手配犯。捕らえた侵略者を好きな場所に召喚させることができる。