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リアへ
これを読んでいるってことは、僕はもう、君の隣を歩けていないんだろうな。
先に謝っておくよ。
置いていってごめん。
でもね、不思議と心配はしてない。
だってリアは、いつだってそうだったから。
怖がりで、優しくて、すぐ立ち止まってしまうくせに、それでも誰よりも前に出ようとする。
剣を振る理由を、何度も何度も、自分に問い直す人だった。
あんなに真面目に「正義」を考える天使、僕は他に知らない。
初めて会ったときのこと、覚えてる?
リアは優秀で、前線に立つのが当たり前みたいな顔をしてた。
でもその目は、少しだけ寂しそうで、「これでいいのかな」って、ずっと心の奥で問い続けているみたいだった。
話しかけたら、驚くくらい不器用で。
冷たい天使だって噂が嘘みたいに、すぐ顔に出るし、怒ると分かりやすいし、褒めると照れるし。
ああ、この人は“迷うことをやめられない人”なんだって。
それが僕は、嬉しかった。
だってね、迷えるってことは、誰かの痛みに鈍くなりきれていないってことだから。
もしこの手紙を渡したのがガブリエラ様なら、きっと今のリアは、考えることをやめて、剣を振ることだけを選んでしまっているんだろう。
考えるのが、怖いんだよね。
分かるよ。僕も、何度もそうだった。
天使として生まれて、「悪魔を倒すことが正義だ」って教えられてきた。
疑う余地なんて、最初からなかった。
でもね、戦場で出会った瞳の中に、どうしても“ただの悪”を見つけられない瞬間があった。
恐怖に震える者。
守ろうとする者。
必死に生きようとする者。
それを全部ひとまとめにして「悪」と呼ぶには、僕は少しだけ、弱すぎた。
だから剣を取った。
憎しみじゃない。
怒りでもない。
守りたいものが、そこにあったから。
リア。
もし君が、誰かを憎まなきゃ剣を振れなくなったら。
その時は、どうか立ち止まって。
怒りは強い。
悲しみも強い。
復讐は、驚くほどまっすぐ前を向かせてくれる。
でもね、それは“楽”なんだ。
考えなくて済むから。
中庭で話したよね。
君は、迷っていい。
疑っていい。
飲み込めない言葉があるなら、それはまだ終わってないだけだ。
生まれながらに決められた正しさよりも、自分で選んだ正義のほうが、きっと重い。
だから苦しいし、だから間違えそうになる。
それでも——
君が考えて、悩んで、それでも選んだ道なら、きっと後悔しない。
たとえ世界が君を責めても、君自身が自分を見失わなければ、それでいい。
僕は信じてる。
リアが、自分の選択で、自分自身も、周りの人も、幸せにできるって。
もし僕のことを思い出してくれるなら、どうか悲しい顔じゃなくて、あの中庭で笑ったみたいに笑ってほしい。
君の隣を歩けた時間は、僕にとって誇りだ。
ありがとう。
そして——
これからも、前を向いて。
リアの一番の親友
――セリス