めんどくさがりの魔法学校！

夏菜side

優秀な人はアクシデントの対応も慣れている。人生には想定外のトラブルが付き物。不慮の事故、予期せぬ邪魔者、些細なミス。しかし、どんなトラブルに見舞われようとも、即座に体勢を立て直し、全ての物事を完璧に遂行する。そんな優れたリカバリー能力が、優秀な人には欠かせない。そう、たとえそのトラブルが＿＿うっかりやり過ぎた、というものだとしても。

「おい、なんだ今の大爆発は……！？」

「標的が、消えた……？　跡形も無く……だと？」

会場のざわめきの中、夏菜は地面に手を付き、静かに演唱し、地面の中に爆発を起こさせた。そうすることで、大地は揺れ、地震のように思わせる。

「こ、今度は何だ！？」

「地震……っ！？」

そして運がいい事に、クレーターの下にはなんと温泉が湧いていた。なんで湧いていたかはもうほっとくとして、爆発のガスを温泉溜まりに溜める。これで言い訳はなんとか通用する！

目立つのは菜乃葉並に嫌いな夏菜はすっとぼけた声を出す。

「あれあれ〜、な〜んかガス臭い気がするぞ〜？」

夏菜の発言の最中、標的の立っていた地面から、ゴボゴボとお湯が吹き出し始める。そして、ガス溜まりから漏れ出した独特の硫黄臭が会場内に漂い出す。

「おい、あれは温泉じゃないか？　それにこのガスの臭い……地中に、ガスと温泉が埋まっていたのか？」

「漏れ出たガスに引火すると、爆発が起きるよな。さっきの大爆発も、ガス爆発だった！？」

「地震の影響でガスが漏れ出し始めていたのか？　いや、地震は爆発の後だったような……？」

騒つく会場の声を聞きながら、夏菜は満足気に頷く。

「ふぅ……どうやら完璧に誤魔化せたようだな」

地中にガス溜まりを仕込む事で、先程の魔法による爆発も、ガス爆発だったと思わせる。夏菜の得意魔法にしか出来ない技による誤魔化しだが、何とかそう思わせることに成功した。

「いやでも、そもそもあの魔法、なんかデカくなかったか？」

「ああ、無茶苦茶大きな花びらだった。あれ、ガス爆発が無くてもヤバかったんじゃね？」

「絶対ただ者じゃないよな、あの新入生。どこの貴族家の人間だ……？」

ただし、爆発前の魔法は誤魔化しようがなかった。夏菜の魔法と地震、立て続けに起きた珍事に、会場の騒めきは一向に収まる気配がない。

夏菜

「……完璧に誤魔化せたようだな」

夏菜はもう、何も聞こえないフリをした。

菜乃葉

（あの人…爆発系の魔法か？貴族…ではなさそう。じゃなければあんな黒色の巫女服なんて着てないし…新入生にしては威力が凄いなぁ…あの二人もヤバいけど）

美音

「菜乃葉ちゃーん！筆記試験いくよー！」

菜乃葉

「あ、うん、今行く」

実技試験の後には、筆記試験も行われた。夏菜なら全問正解も頑張れば可能だが、それは『普通の学生』に出来ることではない。さっきの実技試験でも目立ったし、そこそこの点数になるよう、適度に正答と間違いを織り混ぜ、無難な解答に仕上げる。

夏菜

「どこからどう見ても、この上なく普通の解答。………な、はず」

自分の解答用紙を確認し、夏菜は上機嫌で呟く。実技試験での出来事はもう、意識の外に追いやっていた。優秀な人は、現実逃避も一流にこなす。

試験終了の合図。試験官に解答用紙を手渡し、筆記試験会場の部屋を出る。

「筆記試験難しかったなぁ。　全然自信ないや、私。夏菜ちゃんはどうだった？」

夏菜

「あんまり、難易度高かったし。でも、のんはきっと大丈夫」

「えっ、そう？」

夏菜の友達、のんは結構、いやかなり頭が良い。

自分では自信を持てないようだが、のんの正答率はかなり高い。新入生の中でも上位の成績だろう。

のん

「あっ、でも。夏菜ちゃんは筆記試験低くても大丈夫なんだ。だって、実技試験はぶっちぎりだもんね？」

夏菜

「ん’’ん……あーうん、ドウダロウネー……」

夏菜は「せっかく良い感じに忘れてたのに！」と言いたい気持ちを抑えて、適当に言葉を濁した。

のん

「そうそう。モブクズなんて、すっかり腰抜かしてちゃってたんだからね」

夏菜

「ふーん、あのモブクズが？」

のん

「うん、モブクズが」

笑い合いながら「いい気味だ」と夏菜は思った。元はと言えば、モブクズが色々やってくれるからこんな事態になったのだ。つまりモブクズ、あのバカが全部悪い。俺は悪くない。

そんな会話を交わしている間に、2人は女子寮の前に辿り着く。

夏菜

「じゃあ、また」

のん

「うん、またね、夏菜ちゃん」

同じクラスになれると良いな。そんなことを考えながら、夏菜は寮に入っていくのんを見送った。

菜乃葉side

美音

「筆記試験、どうだった？！菜乃葉ちゃん！」

菜乃葉

「…まぁまぁ」

美音

「私は頭良いから楽勝だったよー！」

美音は実技試験の不安気な表情と一転し、晴れやかでスッキリした表情で筆記試験から帰ってきた。

よほど自信があるようで、本当に頭が良いというのがひしひしと伝わってくる。

しばし談笑をして歩いていると、女子寮についた。

部屋も割り当てられていて、二人一部屋となっている。

美音

「おんなじクラスになれたらいいね！」

菜乃葉

「そうだね」

美音

「絶対だよ！」

菜乃葉

「そうだね」

適当な返事を返す菜乃葉にもーっ！と怒る美音にクスリと笑い、それぞれ寮の中に入っていった。

菜乃葉

（部屋は306…3階か）

用意されているエレベーターに乗り、3階に到着した。部屋は306だから、6番目の部屋

無事に部屋を見つけれて、その部屋の中に入る。

部屋に入ると、白い壁に木製の暖かみのある床で、二段ベッドが目立つシンプルで綺麗なお部屋。

ここで共に暮らすもう一人の人はまだ来ていないらしいから、荷物を壁に寄せて置き、二段ベッドの下のベットに腰掛ける。

菜乃葉

（あれ…なんかベッドに膨らみが…）

ベッドにこんもりとした膨らみがあることに気づいた菜乃葉。何があるのか興味心で布団をめくった。

菜乃葉

「…ぇ、」

「………」

めくった布団から現れたのは水色の肩したまで伸びた髪に、伏せ目気味の宝石のようなブルーグリーンの瞳の少女。

数秒後、お互い固まり、水色の髪の女の子はまた布団を被った。

菜乃葉

「……ェ」

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のん

女の子

優しく少し静か

花や歌が好き

人を傷つける人は少し苦手

所持魔法…読心魔法、創作魔法