◎無陀野無人の場合
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今日はエイプリルフール!
最近むだせん忙しくて構ってくんねぇからちょっとだけ意地悪しちゃおう。
「むだせんどんな反応すっかなぁ〜」
四季はまったく予想のつかない無陀野の反応を予想して顔を綻ばせながら部屋に向かった。
へへ、めっちゃ焦ったりしたらおもしろいなぁー笑
コンコン、「むだせん!おれ!入っていい?」
「、、、四季?あぁ、構わないが」
わざわざドアを開けてくれたむだせんは少し困惑しながらも優しい表情で出迎えてくれた。う、これから嘘つくの申し訳なくなってきたな、、
「どうした?急に来るなんて、珍しいな。
だが今日は、俺も仕事を片付けたらお前のところに行こうと思っていた。来てくれて嬉しい。もう少しだけ待っててくれるか?」
うっ、むだせんってまじこういうところだよな。
なんだかんだ俺のこと好きなの伝わってくるし、、
付き合う前はこんなんじゃなかったのに心臓もたねー
あぁ、好きだなぁ。っって!じゃなくて!
今日は目的があってきたんだった忘れてた
「うん、待っとく!あとでちょっと話あるから、いい?」
「?わかった」
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「、、、ふぅ、四季すまない。待たせたな」
、、、!!!!きた!!!
よし腹括れ俺!
「うん、えっとじゃあそこ座って?」
「あぁ、話があると言っていたな。どうした?」
「、、、、、、えっと、おれたち、別れよう」
「断る」
「急にこんなこと言われて、って、え?」
「断る、と言っている。」
ん?まさかの受け入れないパターン?
「いや、その」
「理由くらいは聞いてやるが」
「え、?あぁ、えっと、最近むだせん仕事忙しくて俺のこと全然構ってくれないし、寂しくなっちゃって!」
「、それは悪かった。任務が立て込んでたんだ。
次からはもっと時間を取るようにする。だから別れない。」
あ、すげぇ。もう自分で結論付けちゃったよ。
てか何?俺のことめっちゃ好きじゃん。
やばい、ニヤける。耐えろおれ!!
「俺は四季が好きだ。愛してる。
お前があの日俺に思いを伝えた時点で逃がす気はなかった。
これからもない。って、お前、何を笑っている?」
やばい、もう限界
「〜〜っはは!もう限界!俺のことめっちゃ好きじゃんむだせん!」
「好きだが」
「うん、俺も大好き。ごめん、今日エイプリルフールだよ。」
「、、、!お前。いや、いい。心臓が止まるかと思った。」
「ごめん〜っ」
「全然反省してないように見えるが。まぁいい。
今日は仕事も終わったしたっぷり付き合ってもらう。」
「いいよ!おれもむだせんチャージする!」
そう言って無陀野の体に抱きついた。
「あ、でも寂しかったのはほんと」
「、、、、、、善処する」
◎ 淀川真澄の場合
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よし、ついにこの日が来た。
そう思いながらいつもより目覚めよく起きた四季は前々から練っていた計画を実行するべく、頭の中でシミュレーションを繰り返していた。
その計画とは今日エイプリルフールのこの日、未だベッドの上ですやすやと寝ているこの男に別れようドッキリをすることである。そう思ったのにも理由がある。この男、まったく好きと伝えてくれないのだ。キスやそういう行為はあっちからいつも仕掛けてくるくせに気持ちを言葉にして伝えてくれたのなんて告白されたあの日一回きりだ。
ふん、ちょっとだけ懲らしめてやる。
そうくつくつと笑いながら真澄隊長の反応を思い浮かべていると横から声が聞こえた。
「おいなに朝から気色悪りぃ笑い方してんだ。
目覚めただろーが」
「なにが気色悪いだ!失礼な!
てか、おれ真澄隊長に話あんだけど!」
「あ?なんだよ。こっちも仕事あるんだから早くしろ」
やっぱり酷い!!この人本当に俺のこと好きなのか?!
そう言いたい気持ちを押し殺して計画を実行する。
「もう、いいから座って!
えっーーと、だから、俺と別れてほしい!」
「は?」
ぷぷ、効いてる効いてる。
真澄隊長は基本顔に出ない人だが長く一緒にいればわかるようになってきた。この表情は相当驚いてる。
「いやー実は他に好きな人できてさー。」
四季はあらかじめ用意していた理由を出してより現実味を帯びさせる。
だが真澄は少しの間フリーズした後、すぐに四季の目を真っ直ぐと見つめた。
え、なんだよその反応。じっと見られても、
目が合って数十秒くらい経っただろうか。
真澄の方から口を開いた。と思えば
「っは、いいぜ別に。おれもちょーどそう思ってたからな。」
と少し呆れ笑い気味にそう言われた。
今度は四季がフリーズする。
ドッキリのはずが本当に別れを受諾されてしまった。
え?まって、どういうことだ。
今おれ、何言って、てか真澄隊長いいぜって。
いいのかよ?ちょ頭混乱する。
四季が長い間動かないので、真澄は疑問に思い顔を覗く。
するとまた真澄もフリーズした。
四季が泣いていたからだ。
「うっ、ぐすっ。今日エイプリルフールだから。
本心じゃないっ。なのに真澄隊長っやっぱりそう思ってたのかよ。もういい、」
ずっと気持ちを言葉にしない真澄にやっと説明がついた。
もとから好きじゃなかったから言わなかった。ただそれだけだ。なのに、じゃあなのになんで抱いたりなんてしてんだよ。くそがっ。
怒りで止まらない頭の中とは逆に四季の涙は止まることなく溢れ続けた。
「おい一ノ瀬」
ふと、真澄の声が聞こえる。
「ったく、嘘バレバレなんだよ。
エイプリルフールだなんて最初で気づいてたわ。」
へ?四季の涙が急に引っ込む。
「、、、え?じゃあ別れるのは、?」
「嘘に決まってんだろ。別れるわけねぇ。
俺を懲らしめようとした罰だな?一ノ瀬ぇ」
つまり、真澄隊長には全部バレバレだったわけだ。
くそ、まじふざけんなよ。もう。
先ほど同様、頭の中は怒りに包まれてるが四季は安堵の表情に変わっていた。
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「、、、おい一ノ瀬。一回しか言わねぇぞ。俺はお前が大嫌いだ。これからもずっと一緒にいたくない。今日はエイプリルフールだからな。」
言葉の意味を理解するのに数秒かかった。
まったく、素直じゃない。でも、愛おしい。
「〜っふふ。俺も大好き!真澄隊長っ」
「おいそれじゃ逆の意味になるだろ。」
「分かればいいんだよこんなの!」
「、、、ふぅん。おい四季。」
「ん?」
「愛してる」
「え、!!!今のは、てか名前!!」
「っは、どっちだろうな。」
くそ、真澄隊長にはいつも勝てないんだ。
◎ 皇后崎迅の場合
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皇后崎は俺に手を出してこない。キスはされるものの、未だそういう行為をしたことはない。いや俺高校生男子だよ?
思春期真っ只中だよ?別にただしたいわけじゃない。
もう少し、愛されているという実感が欲しい。
だから俺は今日、皇后崎にドッキリを仕掛ける。
名付けて、別れようドッキリ!
今日はエイプリルフールだし慌てた皇后崎の姿でも見て茶化してやろーっと。四季はわくわくする思いを胸に寮部屋に戻る。
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ドアを開けると、中から物音が聞こえる。
どうやら先に帰っているようだ。好都合、すぐに仕掛けよう。
「おい、ちょっと話ある。」
「あ?なんだよバカ四季。今忙しいんだよ」
くっそこいつまじ殴りてぇ。
でも今日の目的はそれじゃない。一旦冷静に。
「いいから。大事な話。」
我ながら自分の演技力に驚かされる。
役者なれるかも。
四季の態度を見て素直に座り直す皇后崎をまじまじと見つめる。
「えっと、単刀直入に言うと、俺と別れて欲しい。」
「、、、、、、は?」
やべ、やっぱキレるかな??
「、、、、、、理由は」
少しの沈黙の後、急に理由を聞かれて焦った。
やばい、流石に手を出してくれないからとは言えないよな。
えーっと
「あー。他に好きなやつ出来た。」
「、、、そうか。」
咄嗟に出た言い訳がこれしかなかったが皇后崎はすぐに納得したようだ。
それよりも
「なんか言いてぇことないのかよ。俺に。」
普通好きならもっと縋り付いてくるもんかと思っていた、
「っは。お前が言うのかよ。、、、、、、てか、一人にしてくれ」
だいぶ重苦しくなってしまった雰囲気に四季はネタバラシしようかと迷った。でも、いつものように言い返してこない皇后崎に少し疑問を持ったので、もう少し続ける事にする。
「やっぱりお前俺のこと好きじゃなかったんだな。
じゃねぇとそんなあっさり認めねぇし」
四季が冗談混じりにそう言うと、
「っっっそれはっ、お前の方だろ?!」
と急に大声を出されてびっくりした。
てか、こいつ、顔、
皇后崎の顔は今まで見たことないくらい歪んでいた。
まるで捨てられた子供かのように。
「っいつも、俺の大切なものはいなくなるっっ!
お前もその一人なんだろ?!もう、いいから。
俺の前から消えてくれ、」
その時ふと、練馬での話が蘇ってきた。
そういえばこいつ、昔母親と姉を、
まずい、そう思った時にはもう遅かった。
トラウマになった皇后崎の過去を掘り返してしまった。
もともと、誰かに好かれようとは思っていなかったこいつが、一人で生きていくと決めていたこいつが、
心を開いて仲間を作ってようやく立ち直ったこいつを、俺が壊してしまう。
大切な人が離れていくしんどさも、俺が1番知ってたはずなのに、
そう思った四季は咄嗟に皇后崎を抱き締めていた。
「悪い。今言ったの全部嘘だ。お前から離れるつもりなんてねぇよ。今日何の日か分かるか?お前俺に手出してこないから、気持ち確かめたくて、言っちゃいけねぇこと言った。」
「、、、お前っなに。今日、、、?、、、!!まさか、、
まじっふざけんなよ、ばか四季」
「うん、ごめん、悪かったまじ」
「っくそ、、、手出さないのは俺なんかが何かを大事にしてもいいのかなって。こんな俺でも幸せになっていいのかって怖かったんだ。」
「、、、、、、はぁ、このっ馬鹿野郎!」
そう言って気づけば皇后崎を殴っていた。
「幸せになっちゃうダメなやつなんていねぇんだよ!このばか!」
そう言いながらなぜだか四季は涙を流していた。
「っは、なんでお前が泣いてんだよ。」
「っず、わかんねぇよ。
、、、、、、なぁ、皇后崎。俺のこと、抱いてくれるか?」
「言われなくても、そのつもりだよ。バカ四季。
泣いても止めてやんねぇからな。」
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