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## 第12話:熱砂の要塞
吹き荒れる熱風が、プロト・ウイングエックスの装甲を絶え間なく叩く。地平線まで続く赤茶けた砂の海。そのただ中に、陽炎に揺れながらそびえ立つ巨大な影があった。
かつての連邦軍が遺した極大の補給拠点、通称「メギド要塞」。長年、流砂に埋もれ死に体だったはずのその要塞は、いまや無数のサーチライトを砂嵐の中に躍らせ、不気味な脈動を繰り返していた。
「……見つけたぜ。あそこが、連中が巣食ってる『メギド要塞』か。想像以上にデカいガラクタ山だな」
コクピットのゼロ・ドラートは、サングラス越しにメインモニターを見据えた。背部では、ガドルフの手によって再生された6枚の飛行ユニットが、熱砂を切り裂くように青白い光の尾を引いている。
「……ゼロ、気をつけて。あの場所から、冷たい悪意が流れてくる……」
隣に座るミラが、シートの端を細い指で強く握りしめた。彼女の感応波は、要塞の奥底で渦巻く殺気と、そこを守る兵士たちの高揚した精神を鋭く捉えていた。
「へっ、歓迎の挨拶が来る前に、こっちから顔を出してやるよ!」
ゼロがスロットルを押し込んだ瞬間、要塞の外周に配置されていた対空砲座が一斉に火を噴いた。砂嵐を切り裂いて放たれる対空弾の雨。
「まずは小手調べか! 行くぜ、ガンダム!」
ウイングエックスは空中を滑るように旋回し、砲火を紙一重で回避する。
その直後、要塞のハッチから十数機の量産型MS『オーリー』が、まるで羽虫のように飛び出してきた。
『目標確認! 白いMSと聖女を捕獲せよ! 抵抗するなら機体は大破させても構わん!』
敵隊長の号令と共に、オーリー隊がマシンガンを乱射しながら四方から襲いかかる。
「ちっ、有象無象が! 邪魔なんだよ、どきやがれっ!!」
ゼロは背部のウイングを扇状に展開し、空中での急制動をかける。一気に背後を取った一機に対し、バスター・サテライト・ライフルの銃身で殴りつけ、そのまま地面へと蹴り落とした。
続けざまに放つビームの火線。再生された飛行ユニットの恩恵は絶大で、以前なら墜落していたような無茶な機動も、今のウイングエックスは軽やかにこなしてみせる。
「あはは! 最高だぜ! 身体が軽い……まるで羽が生えたみたいだ!」
ゼロは歓喜の声を上げながら、敵陣のど真ん中へと突っ込んでいく。左腕のディフェンサー・バスターシールドから光刃を形成し、すれ違いざまに二機のオーリーを真っ二つに切り裂いた。爆炎が砂嵐の中で黄金色に弾ける。
だが、その狂騒を切り裂くように、一筋の鋭い高出力ビームがウイングエックスのすぐ脇を通り抜けた。
「――っ!? 誰だ!」
砂塵の向こうから現れたのは、これまでの量産機とは一線を画すシルエット。漆黒の装甲を纏った指揮官機、ジェニス・改『ノクターン』。そしてその背後には、同じく黒く塗装された精鋭部隊が、冷徹な隊列を組んで空中に静止していた。
『浮かれているな、白い少年。真の戦場は、ここからだ』
通信回線から響くのは、ルカス・ギルモアの冷たく理知的な声。
彼が合図を送ると、精鋭たちが一斉に散開し、ウイングエックスを包囲するようにして高出力ビームライフルを構えた。
「んだよお前、何者だ?!!」
『私の名前はルカス・ギルモア、我らの目的はミラの奪還、そしてその忌まわしきシステムの回収だ。貴様のような野良犬に、これ以上の自由は与えん』
ノクターンが手に持った大型ヒート・アックスが赤く熱を帯びる。
同時に、メギド要塞の頂上部がゆっくりとスライドし、巨大なメガ粒子砲の砲塔がウイングエックスに向けられた。要塞そのものが、一つの巨大な生物のようにゼロを飲み込もうとしている。
「ミラ、掴まってろよ! こいつは……今までのザコとは格が違うぜ!」
「……大丈夫。ゼロとなら、どこまでも行ける」
ミラの言葉が、システムのノイズを消し去る。
ゼロは操縦桿を握り直し、不敵な笑みを浮かべた。
熱砂の要塞を舞台に、少年と少女の運命をかけた、空前の空中大決戦が幕を開ける。
**次回予告**
要塞の猛火に晒されるウイングエックス。
ルカスの冷徹な刃が、ゼロの自由を切り裂く。
絶体絶命の窮地、ミラが捧げた祈りが、月から降り注ぐ光を呼び覚ます!
次回、『月下に輝く翼』
**「これが……俺たちの本当の力だぁっ!!」
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