テラーノベル
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大学1年・8月。
冬花が突然、
「あした、お祭り行こ。」
と誘う。
直弥は、
「お祭り?」
「うん。」 「浴衣着るから。」
「……そう。」
「そうじゃないでしょ。」
「楽しみ、とか。」
「……楽しみ。」
ぎこちない。
縁日。
冬花ははしゃぐ。
スーパーボールすくい。
ラムネ。
射的。
直弥は全部、
「へえ。」
くらいの反応。
でもちゃんとついてくる。
途中。
屋台で売ってるかき氷を見つける。
冬花「懐かしい。」「食べる?」
直弥「食べたことない。」
「え?」
「ない。」
「えぇ!?」「じゃあ今日は初めてね!」
冬花がふたつ買う。
赤と青。
「どっちがいい?」
「……青?」
「じゃあ冬花はいちご。」
二人並んで歩く。
少し食べる。
人気のない河川敷みたいな場所。
ベンチに腰掛ける。
しばらく花火を見る。
直弥「……溶けちゃったね。」
冬花「交換しよ。」
そう言って、直弥の青いシロップをすっと口にする。
直弥は少しだけ固まる。
「……。」
「そういうもの?」
冬花は笑って、
「そういうもの。」
と言う。
そのあと、
「はい。」
と今度は自分の赤いシロップを差し出す。
直弥は素直に一口飲む。
少し考えて、
「……甘い。」
冬花 「青も甘かった?」
「うん。」
「同じ?」
「……ちょっと違う。」
「でしょ。」
花火はまだ続いている。
冬花「ねえ。」
「?」
「目、閉じて。」
「?」
「いいから。」
ぎこちないキス。
ほんの一瞬。
直弥は少しだけ固まる。
冬花は照れて笑う。
「……。」
少しだけ不安そうに、
「嫌だった?」
直弥は少し考えて、
「……びっくりした。」
「そっか。」
「でも。」
「?」
「嫌じゃなかった。」
冬花が安心して笑う。
おいしくるメロンパン『色水』。
コメント
1件
ああ、この回、すごく良かったです。かき氷のシロップを交換する仕草、あれ、ただの甘ったるい演出じゃなくて、〈距離の測り方〉そのものだなって思いました。直弥の「……びっくりした」「でも嫌じゃなかった」の間の沈黙に、ほんとの気持ちが詰まってる。冬花が「そういうもの」って笑ってごまかすところも、青春の空気感がぴったりで。タイトル『色水』、最後まで読んでじわっと効いてきました。