テラーノベル
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テトリスは、思っていたよりも残酷だった。落ちてくるブロックは平等なのに、
俺の手元ではすぐに歪み、詰まり、崩れる。
負けて、負けて、負けて。
気づけば負けることに慣れ始めている自分がいた。
それでも続けていたのは、
やめる理由を探すのが、もう面倒だったからだ。
ある日、オンライン大会に参加した。
名前も知らない誰かと当たって、
当たり前のように一方的に押し潰された。
対戦相手の名前は
《KIRISHIMA》。
試合後、なぜか通話リクエストが届いた。
「さっきの人?」
少し迷って、通話を繋ぐ。
「強いですね」
自分でも驚くくらい、素直な声が出た。
相手は少し笑って言った。
「始めてどれくらい?」
「一週間くらい」
「俺も同じ」
……同じ?
「きっかけは?」
そう聞くと、返ってきた答えは予想外に軽かった。
「広告。
全国大会優勝ってやつ」
胸の奥が、嫌な音を立てた。
同じ広告。
同じ始まり。
なのに、この差。
霧島蓮と名乗ったその少年は、
才能という言葉を否定もしなかった。
「向いてるかどうかは、やってみたら分かるよ」
その言葉が、
慰めなのか、事実なのか、分からなかった。
通話を切った後、
俺はしばらく画面を見つめていた。
同じものを見て、
同じ場所から始めたはずなのに。
──もう、追いつけないかもしれない。
それでも俺は、
アプリを閉じなかった。
この世界には、
同じ広告を見て、先に行ってしまった人間がいる。
それを知ってしまった以上、
もう、何もせずに戻ることはできなかった。