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努力すれば、少しは追いつけると思っていた。毎日ログインして、
負けた試合を見返して、
操作を身体に叩き込む。
ブロックの形を覚え、
置き場所を考え、
速度を上げる。
確かに、前よりは勝てるようになった。
最初の頃とは比べものにならない。
それでも――
霧島蓮には、勝てなかった。
ランキング表に並ぶ名前。
《KIRISHIMA》は、いつも俺より上にある。
一度だけ、運良く当たったことがある。
結果は、完敗だった。
「悪くないよ」
試合後、蓮はそう言った。
「前より、かなり良くなってる」
その言葉は、
慰めに聞こえてしまった。
俺が一週間、必死に積み上げたものを、
蓮は軽く越えていく。
彼は言う。
「考えなくても、指が動くんだ」
それを聞いた瞬間、
胸の奥で何かが音を立てて折れた。
俺は考えなければできない。
考え続けなければ、置けない。
それが、才能の差なのだと
理解してしまった。
学校では、眠くて集中できない。
友達と呼べる相手も減った。
それでも画面の向こうでは、
蓮が勝ち続けている。
努力しても、
越えられない壁がある。
それでも俺は、
テトリスをやめなかった。
やめた瞬間、
この差を認めたことになる気がしたからだ。
俺はまだ、
負けを確定させたくなかった。