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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第41話 〚海翔の異変に気づく回〛
――担任視点――
最初に違和感を覚えたのは、
名簿を見ていた時だった。
(……あれ?)
班名簿。
部屋割り。
修学旅行の最終確認。
どれを見ても、
海翔の名前の位置が、妙に安定している。
班長だから、
という理由だけでは説明がつかない。
——常に、澪の近く。
(偶然、か?)
担任は、教室を見回した。
澪はいつも通りだ。
友達に囲まれて、
静かに笑っている。
海翔は、
問題行動はない。
成績も態度も優等生。
(……でも)
視線をずらすと、
海翔がいた。
姿勢が、わずかに硬い。
周囲を見ているが、
確認する順番が決まっている。
——澪
——その周囲
——教室全体
(……警戒してる)
修学旅行の説明中も、
他の生徒が気を抜く場面で、
海翔だけが集中を切らさない。
(普通の“班長”じゃない)
その時、
西園寺恒一が少し身じろぎした。
海翔の視線が、
一瞬だけ鋭くなる。
——そして、すぐに逸らす。
(……今のは)
担任の中で、
点が繋がり始めた。
(海翔は、
“何か”を察知してる)
それが、
成績でも、問題行動でもないことは明らかだ。
— —人。
(誰かが、
誰かに対して、
危険だと思っている)
放課後、
教室が空き始めた頃。
担任は、
海翔を呼び止めた。
「海翔」
海翔は、
一瞬だけ肩を強張らせてから、
いつもの顔に戻る。
「はい」
(……この反応)
「最近、疲れてないか?」
探るような質問。
でも、核心には触れない。
海翔は少し考えてから、
正直に答えた。
「……少しだけ」
それだけ。
言い訳もしない。
誰の名前も出さない。
(守ってるな)
担任は、確信した。
——この子は、
自分のためじゃなく、
誰かのために張り詰めている。
「無理はするな」
「何かあったら、
ちゃんと大人を頼れ」
海翔は、
小さく頷いた。
「……はい」
その目は、
逃げていなかった。
(……覚悟の目だ)
担任は、心の中で決めた。
(修学旅行中、
この班は重点的に見る)
(特に——
澪と、その周囲)
何も起きていない。
けれど、
“起きる前”の空気は、
確かにそこにあった。
担任は、
静かに教室を見渡した。
——まだ、間に合う。
そう信じて。
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