優斗の大会優勝から数日。
学校では「優斗先輩すごい!」と話題になり、
彼を見る人の数もさらに増えた。
紗菜は少し距離をとって、
遠くからその光景を見ていた。
そのとき——。
「紗菜!」
突然、優斗が人混みをかき分けてやってきた。
「放課後、一緒に帰らない?」
周りの視線が一気に刺さる。
紗菜は慌てて小声で言った。
「せ、先輩…みんな見てます…!」
「見られて困ること、俺たちあった?」
その言葉に紗菜の心臓が止まりそうになる。
放課後。
校門を出ると、優斗は紗菜の歩幅に合わせてゆっくり歩いた。
「紗菜さ、俺のこと隠そうとしてないよな?」
「そんな…隠す理由なんてないです」
「なら良かった。
だって俺、紗菜のこと…ちゃんと大事にしたいから」
その声が真剣で、紗菜は胸がじんと熱くなる。
「先輩…わたしもです」
二人の影がゆっくり重なりはじめていた。
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