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先生が気付き始めたのは、この頃だった
俺の視線
俺の知識
俺の笑顔の奥にあるもの
いつものように笑っても、目の奥が強ばってる
歩くとき、さりげなく背中を向けないようにしている
教室では俺の言葉に反応しすぎないようにしている
全部バレバレだった
逃げようとしている。俺から
でも……無理だよ
ある日、先生のスマホを盗んだ
ロッカーに置いてあった
偶然なんかじゃない
そういうタイミングをずっと見張ってたから
ロックは簡単に解除できた
パスコードは「0205」
先生の誕生日
ライン表には職員とのグループチャット、友達、家族とのやりとり
その中にひとつだけあった『転勤希望』の下書きのメール
ーー【理由】特定の生徒からの過剰な干渉があるため・・・
「は………………………………?」
心臓が、ぐちゃっと潰れた音がした
やめて
俺から逃げないで
俺だけを見てって、ずっと言ってるじゃん
次の日
先生の机にメモを置いた
ー転勤だめ。するなら先生のことを壊してでもここに縛るー
鉛筆の字は滲むように細く、震えるように丁寧に
放課後、先生は俺を呼び出した
誰もいない会議室
「翡翠くん…何がしたいの?」
その声は怯えと怒りが混じっていて。でも俺は構わずに笑った
「先生が好き。壊れるくらい。壊してでも手に入れたいぐらい」
「それは……愛じゃない」
「じゃあ先生が言う愛ってなに?」
「誰かと笑いあうこと?」
「相手に心配されること?」
「そんなの全部邪魔なんだよ」
「………」
「俺だけを見てよ先生。先生が俺の事しか考えられなくなるようにしてあげるから」
その時先生は、言葉を失った
言葉を詰めて目を伏せた
その姿が美しかった
泣かせて傷つけて、それでも最後に笑って名前を呼んで欲しい
それが俺の”愛”