28 世代
店の外はかなり暗い。
花火はきっと、もうすぐ始まる。
先生は店外に立って、煙草を吸う。
私は近づき過ぎず、少しだけ距離をとって側に寄る。
『 先生』
「んー?」
煙が昇る、煙草を咥えたまま、私を見る。
『 先生は花火、興味無いんですか』
「興味あるか?って言われたらないコトはないけどわざわざ人混みで見たくないな」
『 そうですか』
「お前は?お前こそ花火大好き世代じゃないの」
『 ふふっ、なんですか?それ。』
私が笑うと、先生も笑う。
「いや、だってワチャワチャしてる若者は祭りが好きだろ?」
『 先生には、私がワチャワチャしてるように見えますか?』
「見えない」
先生が笑うと、口からフワァと煙がでる。
『 あー、でもワチャワチャしてないけど、花火はすきです』
それを見上げる。
隣の街でやるんだから、ここからでも見えるかも。桜公園からなら見えるかな。
「見る?」
『 え?』
「花火」
『 あー、もうすぐですよね。桜公園寄ってチラ見してこっかな。』
せっかくの夏だし。夏の雰囲気だけでも感じて帰ろう。そう思っていた時、
「公園より見える場所、あるよ」
『 …..え…….』
「教えてやろっか」
『 え…あの…..』
先生が灰皿にクシャッと煙草を押し付ける。
「お前今日頑張ってたから。ご褒美。」
ピッと私は指さす。
授業中、問題に正解した時と同じ仕草。
『 …ご褒美。』
「おいで」
駅とは逆に歩いていく先生の後ろをゆっくり着いていく。
ちょっと歩くと、立ち止まって、「だから、前も言ったろ?」って呆れ顔。
内容を言わなくても、分かってしまう。
この関係は、何なのだろうか。
『 はい…』
そう言って先生の隣に並ぶ。
何処に向かっているかは分からなかったけど、
正直、花火なんかどーでもいいくらい、胸がドキドキしてた。
だけど
ドーン
「あ…始まったな」
遠くから、花火が打ち上がってくる音を聞くとやっぱり気になってしまう。
「こっち」
『 …え。こんなとこ入っていいんですか?』
ドーン、ドーンと音が響いている中、
先生はカラオケの入った雑居ビルの非常階段を上がっていく。
「ほら、この辺。障害物なくなんの。」
5回まで上がった踊り場。
その先には大きな花が、何輪も咲いていた。
コメント
4件
ねぇねぇねぇねぇどういうつもり? 先生の本音を教えて? からかってる?あそんでる? いつまでたっても私は生徒? これが浮かんでしまった🤣🤣🤣🤣 にしても、ほんとに、どういうつもりだぁ?? 思わせぶりだぉぁぁ でも、嬉しいのわかるー!!