29 見れますか
「あ、ちょっとコンビニ行ってくるわ」
『 行ってらっしゃい』
先生に「行ってらっしゃい」なんて言葉を言うとは思っていなかった。
だって、行ってらっしゃいって私の元に帰ってくるって感じじゃん。
新婚さんみたい、笑
だめだね。こんなこと思っちゃ。
先生がコンビニに入っていく。
何買うのかな。
先生がいない、1人の花火は、違う。
寂しい。
1人花火は、嫌い。
早く来てよ、先生。
先生がいない間に、ドーン、ドーンと花火が上がる。
青、ピンク、緑、紫、赤………
青、かな。先生は。
中々コンビニから出てこない先生に待ちくたびれて、目合うかな。
と思って下を向いていた視線を上にあげる。
「ほい」
『 うわっ!びっくりした、』
なんだ、すぐ来たじゃん、
まだ、見てればよかったな。下。
いや、でも今、隣に居るんだもん。
花火、見てるんだもん。
それだけで、充分。
「姫野は、これだよな?」
そう言ってミルクティーを私に出す。
まだ、覚えててくれたんだ。
『 え…いいんですか』
「お前、頑張ってたからな。ご褒美。」
姫野、と1回呼んでくれたのは嬉しかったけどすぐお前、に変わっちゃった。
焦らすね、先生は。
「春は桜。」
『 え?』
「夏は花火。」
「秋は…」
『 月。』
「ふふっ、分かってんな。」
先生より先に月、と答えてしまった。
『 月、見れますかね?ここから』
「見れるよ。きっと」
先生は、きっと気づいてない。
私が言った『ここから、 見れますかね』は、
『 先生と一緒にみたい』なのに。
コメント
7件
静かに進んでる気がする2人の関係…… すごく、色んな期待しちゃうけど、逆も想像しちゃうし……もどかしいけど、このもどかしさがたまらない!!
しょっぴーと花火見れるって最高じゃん笑