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◻︎豚に真珠



「お気遣いありがとうございます。でも私、着飾らなくてもとっても幸せなので、必要ないんですよ」


思いっきりにこやかに返す。ぷっと笑ったのは我が夫の、光太郎。


「あっはっは、だよな?ブランドとか着飾っても中身がな、ほら、あれだ豚になんとかってやつだ」


夫が言い終わらないうちに、みるみる月子の顔が赤くなっていく。夫が言いたいことを私も思いついて笑いを堪えるのに、必死になってしまった。そんな私たち夫婦を見て、さらに月子の顔が赤くなった。


___これでは赤い顔のトト◯だ。


“月子おばちゃんって、トト◯みたいだよね?”


と言っていた伊万里《いまり》のセリフを思い出す。その体型と動きで、確かに連想してしまう。


「なんなのよ、バカにして!お兄さんはいいわよ、なんの苦労もなく暮らしてきたんだから」


「なんのことだよ、離婚のことか?そんなの月子自身の問題だろうが。それにな、うちにはうちの事情ってもんがあるんだからな」


___ん?何を言い出すつもりなんだろう?



光太郎が何のことを言っているのかわからなかった。


「おっと、時間だ、行かなくちゃ。とにかく月子、自分の生活は自分で立て直さないとこの後どうなっても僕は知らないからな。時々ここに顔を出して、おかしなことをしてないか監視するからな。行くぞ、涼子」


それだけ言うと、夫はさっさと立ち上がった。私も急いで帰るためにさっき脱いだ上着を持った。


「おかしなことってなによ」


「身内でも、犯罪をおかしたら即訴えるからな。じゃ、親父、お袋、また来るわ」


まだ何か言いたそうなブランドトト◯を一瞥して、先に出て行った。


「待ってよ、光太郎さん。あ、そうだ、お義母さん、次はお義母さんの都合がいい日に合わせますよ、私が車で送るから」


お義母さんの今の楽しみの、“お惣菜を作って届ける”の予定の話だ。


「ホント?じゃあまた電話するわね、よろしく」


お義母さんと私だけの間で通じる話をしていると、月子がわって入る。


「ちょっとお義姉さん、お母さんに何かおかしなことしてるんじゃない?何の話してるのよ?」


「え?あ……」


答えに困っているとお義母さんが立ち上がった。


「涼子さんはね、私がとても欲しかったものをくれたのよ、月子には絶対手に入れられないものよ。でも教えてあげなーい」


月子に向かってあっかんべーをしているお義母さんが、可愛い。


「な、なによ、私に手に入らないもの?そんなに高価なものなの?」


___またお金の話か


「ということで帰ります。待って、光太郎さん!」



私は急いで夫の後を追った。いそいそと歩く夫の背中を見て思い出した、今日は料理教室の日だ。







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