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13 - 第13話 それぞれの過ごし方

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2025年04月22日

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◻︎料理教室効果?



家までの帰り道、さっき夫が言いかけたことを訊いてみた。


「あれ、何を言おうとしたの?」


「あ?あー、アレね。うちだって離婚の危機なんだぞって言おうと思ったんだけど」


「え?」


「考えたらさ、僕がちゃんとすれば回避できるんだったと思い出して、“これは違うな”と思って言うのをやめた。月子なんかに話してもわからないだろうしな。親父たちにそんな話ししたら、また慌てるだろうし」


「あ、まぁね。私は離婚したいわけじゃないから、そこんとこわかってくれてたらオッケーだよ」


「料理も楽しくなってきたしな。僕、才能があるらしいよ」


先生におだてられたのかもしれない。でも、そう言われて悪い気はしないだろうし、きっとこの人は褒められて育つ人なんだと思われたのだろう。


___当たってるし



「フンフンフフフン♪」


運転しながら鼻歌まで出てくるようだ。料理教室には、先生の他にも女の人がいるのだろう。そして、なんだかんだと話が弾んで楽しいのだろう。最近の光太郎を見ていればそれがわかる。髪もさっぱりしてるし、毎日きちんと髭も剃って清潔感がいっぱいだ。定年退職して何もせず家にずっといられるより、楽しみを見つけて外に出てもらう方が、お互いの精神面でもプラスになる。


___これはアレだな、恋をすると綺麗になるというのは、老若男女関係ないってことだ


イヤイヤやっているのでないなら、どんどんやってほしい。おかげでキッチンも綺麗になってきたし。


「じゃ、このまま行ってくるよ」


私を玄関先でおろすと、そのまま行ってしまった。料理教室で食べてくるのだから、今夜は自分一人分でいいと思うと、とっても気持ちが軽い。


「何をたべようかな?」


冷蔵庫を開けて、ちくわとネギと卵を出し、冷凍庫からご飯を出す。炒飯とスープで決まりだ。1人分だけの晩ご飯だからと、贅沢をする気にはならないのは不思議だ。とっても気持ちが軽いのは、夫の分まで考えなくていいという気持ちと時間の余裕ができるからだ。何も縛るものがないという事実が、気持ちを軽くしてくれているのだ。


晩ご飯はできるだけ簡単に済ませて、さっさとお風呂に入ってゆっくりしたい。光太郎は料理教室で作ったご飯を食べて、ご機嫌で帰ってくる。週に一回でも、気分転換ができて私も楽しい。


___そろそろ晩ご飯でも作ってもらおうかな


料理の基本は教室で教えてもらうとして、家では冷蔵庫にあるもので作れる料理をおぼえてもらうことにしよう。


___それからあとは、掃除かな


光太郎が身の回りのことをできるようになると、きっと私はもっと自由になれる、そんな予感がしている。



さっさと片付けて、お風呂も済ませてソファでゴロゴロ。やるべきことはやった、明日でいいことは明日やる。このまま眠りについてもなんの不都合もない。よくわらかない番組をやってるテレビもスイッチオフ。


___はぁ、幸せだなぁ


お腹も満たされ、ぼんやり過ごしていても誰にも咎められないこの時間が最高だ。まだ本格的に寝るには早い時間だ。買ったまま読んでいなかった雑誌でも読もうかとテーブルに手を伸ばした時、マナーモードにしてあるスマホが光った。


___あ、なーんだ、グループLINEか


思わず「ちっ!」と舌打ちしてしまう。子どもたちが同級生という、いわゆるママ友から始まって今でもなんとなく続いている仲良しグループのLINEだ。この歳になって《《仲良し》》もないだろうと思うのだけど、なかなか抜けるのも億劫でそのままだった。


子どもたちが卒業してしまった今は、共通の話題も特にない。だから最近はそれぞれの家庭の不満や自慢がちょこちょこと送られてくるくらいだ。


「苦手なんだよなぁ……」


自慢話ならまだいい、苦手なのはそれぞれのお姑さんの愚痴や夫への不満の書き込みだ。ここ(グループLINE)でごちゃごちゃ言ってる暇があったら、直接話したらいいのにと思ってしまう。ネガティブな発言は、受け取る側もネガティブな気分に引っ張られてしまうし、そうならなかったならなかったで『どうせ他人事よね?』なんて冷たい人扱いされてしまう。同調圧力とでもいうのか、同じような感覚でないといけないらしい。


子どもの同級生の親というカテゴリーでしか繋がっていないと思うのだけど、このグループのメンバーはみんながお互い親友だと思い込んでる人たちばかりだ。


「さてと、一応、読んでみますか」


未読58件。

うっかりこんなにも溜まっていた。


___ヤバいぞ、これは


用事で出かけていて、読めなかったことにしておく。こんなのに下手に関わったら、夜更けまで付き合わされそうだ。スマホはそのままにして、寝転がって雑誌を読み始めた時、車の音がして光太郎が帰ってきた。


「ただいま」  


「おかえり。どうだった?今日のメニューは」


「うまい豚汁ができたよ。あれだね、豚汁ってさ、何を入れても良さそうだね。今度作って涼子ちゃんにも食べさせるよ」


「おー、それは楽しみだこと」


「あ、そうだ、その前にっと……」


光太郎は、料理教室への通学カバン(?)の中から、エプロンと三角巾を取り出した。洗濯かごに入れるつもりだろう。


「えーっと、ポケットの中身はなし、それからひどい汚れもなしと」


「あ、ねー、エプロンと三角巾なら、洗濯ネットに入れといたほうがいいよ。絡まっちゃうんだよね。そうすると傷んじゃうし」


「わかった!で、スイッチはどうしようか?」


「それは明日、私がまとめてやるわ。あ、でも…」


「僕が干しておくから大丈夫」


そう言いながら親指を立てる光太郎。


___ほっほぉ!私が言いたいことを先に読んでくれるとは


「やった、助かる。ありがとう」


素直に“ありがとう”の言葉が出てきた。







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