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「雅人はどうする? 購買行く?」
「売り切れが多かったからあんまり行きたくないかな。今日は学食にしようよ」
「席、空いてるかな。今からだとかなり混雑してそうだわ」
「そうなんだよねぇ…」
男2人で文句を垂らしながら廊下を歩く。昼飯を前に激しい運動をしたので疲労感と空腹感がハンパない。
食堂へとやって来ると大勢の学生を発見。彼らに混ざるように行列へと並んだ。
「アイツ、うぜーな。ちょっと調子乗りすぎじゃね?」
「でも仕方ないよ。僕達が|智沙《ちさ》のケータイ使えなくしちゃったんだし」
「しかも男みたいな見た目のクセに。まだあれで可愛いかったら許せるんだけど」
「そ、それあんまり関係なくない?」
「何を言ってるんだ! 美女に死ねって言われたらご褒美だが、そうじゃない奴に同じ台詞を言われたら悪口になるんだぞ!」
「そんな暴言、誰の口からも聞きたくないよ…」
自分達がパシリをさせられていたのは先程の女子生徒に借りがあったから。数百円の差を気にする学生には負担の大きい借りが。
「はぁ…」
職員室近くにはメダカを飼育している水槽がある。ある日、彼女がその水槽の前で中のメダカをケータイで撮影。そこにたまたま自分と友人が通りかかり、驚かそうと背中を強く押したのだ。
だがその行動が原因で運悪く彼女の端末が手元から落下。ポチャンと音を立てて水没した電子機器は見事に使い物にならないプラスチックの塊となっていた。
「あ~あ、どこかにお弁当を作ってきてくれる優しいお姉さんはいないものか」
「颯太って年上が好みなんだっけ?」
「上でも下でも構わないぞ。姉ちゃんも妹も地縛霊も許容範囲だ」
「ねぇ、金縛りっていつぐらいから起きてるの…」
貴重品を壊した犯人には当然その弁償が義務付けられる。とはいえバイトもしていない人間にはそんなお金なんて用意出来るハズもない。
その状況を見かねた彼女が提案してきたのが2週間のパシリ。これで故障したケータイ代を許してくれるというのだから安い労働だった。
「お腹空いたぁ…」
自分にとってこの学校には気を許せる相手が3人いる。1人は同じ家に住んでいる妹。
残る2人が隣にいる男子生徒と、先程の女子生徒。全員が中学時代から付き合いのある人物。知り合いが少ない人間にとって彼らは尊い存在だった。
「そういえば今日は朝からずっと元気なくない?」
「え?」
「珍しく宿題も忘れてきてたし。どうかしたのかよ?」
「い、いや……何でもないから気にしないで」
それぞれ注文した物を持つと食堂を移動する。水の入ったコップを付け加えながら。
「はぁ…」
まさか居候が1人増えたなんて。内容がブッ飛びすぎていて打ち明けられなかった。
「悩みがあるならいつでも言えよ。俺達、友達だろ?」
「うん、ありがとう」
「怒られる時は一緒だぜ。廊下に立たされる時もな」
「たまには遅刻しないで登校しようよ…」
本日は高校生活で初となる宿題サボリを経験。その原因は昨晩の出来事。華恋さんの事ばかり考えていて翌日の予定が頭に浮かばず。結果、ノートを白紙のまま持参する羽目になってしまったのだ。