at視点
at 逃げちゃった、
ちぐが足早に教室を出ていく背中を見ながら、俺は家へ足取りを進めていた。
家に着いて、洗面台に向かうと、
鏡に映った数字は、「265」
見慣れないものに慣れてきた自分が、ちょっと嫌になる。
at(……また出てる)
7話の朝、あの”1000”が出た時から、全部変わった。
それまで「恋」とか「好き」とか、正直他人事だったのに、
今はもう、否定できない。
at(俺……ちぐのこと、好きなんだ)
洗面台の前で、ぽつりと吐いた言葉がやけに重たくて、
その直後、数字がピクリと揺れて「265」から「267」になった。
家にいると、隠してたはずの感情が漏れる。
学校では出ない。出さないようにしてる。
自分の数字を誰にも見せたくないから。
でも家じゃ無理だ。
気を抜いたら、すぐに浮かんでしまう。
at(ちぐのこと考えると、すぐこれだ……)
しかもあいつ、もう完全に俺のことが好きだって、自分で分かってる。
「811」だった数字が、あっという間に「830」を超えてるのを、俺は知ってる。
放課後、ふらついてるちぐに声をかけただけで、
嬉しそうに笑って、また上がった。
その反応が、可愛すぎて、ずるいくらいまっすぐで――
at(……やばいな、ほんと)
俺のほうが、大人ぶってるつもりだったのに。
ちぐのまっすぐな「好き」に触れるたびに、
数字が、勝手に跳ね上がっていく。
at ほんとに、隠せないな、これ…
呟いた声に応えるように、
鏡の中の数字が「267」から「272」に変わる。
at(こんなん……もう、逃げられないじゃん)
ちぐが好き。
あいつの全部が、好き。
それをまだ伝えたくないのは、
今の関係を壊したくないから――
それだけ。
でも、きっと限界は近い。
この数字が、俺の気持ちを全部、暴いてしまう前に――
俺の口で、言わなきゃならない。
at(……怖いけどな)
数字よりも、ちぐのまっすぐな目を見る方が、
ずっと怖い。
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コメント
2件
かちゃま~.ᐟ.ᐟ やっとコメントできるようになった~.ᐟ.ᐟ これから沢山する~.ᐟ.ᐟ 神作あざますっ!aっちゃんかわい~! 暇だから♡押しまくってくる~