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恋 の 戦 。

30 - 生徒抜

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2023年12月20日

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30 生徒抜





『あっちには行かないんですか?』



そう言って人が沢山いるところを私が指さす。



「行かねぇよ。ふふっ。」

「俺はここがいーの」

『 …そうですか』

「あんなとこ行ったら生徒居るもん」

『 いますね、笑』


「ま、高校のオレなんて夜遊びばっかだったもんなー」

『 え?そうなんですか』

「オレ不真面目だったもん。」



あまりにも、意外すぎた。

ちょっとは、チャラいなとは思ってたけど、

夜遊びかー。

やってみたかったな。


片手にタバコを持った手を柵に掛けた先生が言う。

「遊んで、痛い目見て、遊びたいやつは遊んだらいいのよ。とことん。」


『 ふふっ、そんなこと言っていいんですか?』


「あ!女子は別な!女子は夜遊び禁止」



ギロッと横目で睨む先生が続ける。


「夜の街なんて、オオカミだらけだからな」


『 オオカミ、ですか』


「食われても、文句言えねぇんだからな」


『 ……いや、文句は言えるでしょ』


なんて、笑い合ってるビルの隙間が一気に明るくなった。


『 もう、最後ですかね。これが』

「……だな」


何発も、何発も打ち上がる花火。

打ち上がってから、時間差で響く音。



きっと、あの花火の下には何千人もの人が居て、大歓声が起きてる。


でも、私と先生は静かに2人で空を見てる。



この世界には二人しかいない、みたいな。




「あ、終わったかー」

『 終わりましたねー。』


空が一瞬にして暗くなる。


「なぁ、さっき。春は桜、夏は花火、秋は月って言っただろ?」


『 はい。言いましたね。』


「…お前なら、冬はなんて答える?」


『 寒蘭、ですかね。』


私の答に先生は口角を緩めた。


「ふーん、雪って答えないんだ」

『 単純、って言われそうだから。』

「ふはっ、言う準備してたんだけどなー。」


楽しそうに笑う先生が、「秋は月」も単純だよな

ってまた大笑い。


「…寒蘭、かぁ」

『 はい。綺麗な言葉だし。』

「だな」


授業を思い出す。

私が大好きだった、あの授業。


「姫野」


跳ねまくる心臓を服の上から押さえる。


「まだ日本語、ちゃんと好きなんだな」



先生の出す声が、あの低い声が、

耳にちゃんと、流れてくる



『 先生の授業のお陰ですかね。』

「マジ!ふはっ、カンドーすんねぇ。言われると」



もしこれから、この関係から、何もなくても


私は今日のために賭けていたのかもしれない。


そう思える程の、夜だった。


「あの時から、成長したな」


先生は、そう私に言った。

それは、セイトから抜け出した、という訳では無いことは分かっていたけど、嬉しかった。

先生が私の頭を優しく撫でる。


あのときと、同じ。


『 先生……』

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