30 生徒抜
『あっちには行かないんですか?』
そう言って人が沢山いるところを私が指さす。
「行かねぇよ。ふふっ。」
「俺はここがいーの」
『 …そうですか』
「あんなとこ行ったら生徒居るもん」
『 いますね、笑』
「ま、高校のオレなんて夜遊びばっかだったもんなー」
『 え?そうなんですか』
「オレ不真面目だったもん。」
あまりにも、意外すぎた。
ちょっとは、チャラいなとは思ってたけど、
夜遊びかー。
やってみたかったな。
片手にタバコを持った手を柵に掛けた先生が言う。
「遊んで、痛い目見て、遊びたいやつは遊んだらいいのよ。とことん。」
『 ふふっ、そんなこと言っていいんですか?』
「あ!女子は別な!女子は夜遊び禁止」
ギロッと横目で睨む先生が続ける。
「夜の街なんて、オオカミだらけだからな」
『 オオカミ、ですか』
「食われても、文句言えねぇんだからな」
『 ……いや、文句は言えるでしょ』
なんて、笑い合ってるビルの隙間が一気に明るくなった。
『 もう、最後ですかね。これが』
「……だな」
何発も、何発も打ち上がる花火。
打ち上がってから、時間差で響く音。
きっと、あの花火の下には何千人もの人が居て、大歓声が起きてる。
でも、私と先生は静かに2人で空を見てる。
この世界には二人しかいない、みたいな。
「あ、終わったかー」
『 終わりましたねー。』
空が一瞬にして暗くなる。
「なぁ、さっき。春は桜、夏は花火、秋は月って言っただろ?」
『 はい。言いましたね。』
「…お前なら、冬はなんて答える?」
『 寒蘭、ですかね。』
私の答に先生は口角を緩めた。
「ふーん、雪って答えないんだ」
『 単純、って言われそうだから。』
「ふはっ、言う準備してたんだけどなー。」
楽しそうに笑う先生が、「秋は月」も単純だよな
ってまた大笑い。
「…寒蘭、かぁ」
『 はい。綺麗な言葉だし。』
「だな」
授業を思い出す。
私が大好きだった、あの授業。
「姫野」
跳ねまくる心臓を服の上から押さえる。
「まだ日本語、ちゃんと好きなんだな」
先生の出す声が、あの低い声が、
耳にちゃんと、流れてくる
『 先生の授業のお陰ですかね。』
「マジ!ふはっ、カンドーすんねぇ。言われると」
もしこれから、この関係から、何もなくても
私は今日のために賭けていたのかもしれない。
そう思える程の、夜だった。
「あの時から、成長したな」
先生は、そう私に言った。
それは、セイトから抜け出した、という訳では無いことは分かっていたけど、嬉しかった。
先生が私の頭を優しく撫でる。
あのときと、同じ。
『 先生……』
コメント
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今回のお話もエモいなーって感じてたら、 最後の主さんの顔見て内容飛びました!笑 めっちゃ可愛いじゃないですか!? てゆうか、失礼だったら申し訳ないですが中学生くらいですか?笑
待って、いくつなの?(笑)まだ子供じゃないか!最近の子は、語彙力ないとかよく言う割に、とんでもない物語書くじゃん!びっくり((((;゚Д゚))))!!おばちゃんびっくりして腰抜けた。逆に若いからかけるのかもね……。これからも続き楽しみにしてます(^^) うちの娘に文章の書き方教えて欲しいわ(笑)
かわいすぎない?