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「恋は盲目で、恋人たちは自分たちが いかに
愚かなことをしているかわからない。」
- ウィリアム・シェイクスピア
バタン
莞爾は家に戻って玄関でうずくまった。情けないため息と同時に京蔵の泣き顔が頭に浮かぶ。下校中、彼を慰めつつ泣き顔を頭に焼き付けててしまったことへの罪悪感と背徳感に抗う彼はすでに疲れ切っていた。おそらく自分が京蔵に欲情したことはバレてないと思う。けど明日からどう顔を合わせればいいんだ…
きっと京蔵に話しかけられたら顔を見れない自信がある。
「こんな時親がいたら…こういう相談とか乗ってくれたのかな…」
莞爾の両親は彼が中3の冬、3人でドライブ中に事故を起こして亡くなった。後部座席にいた莞爾は奇跡的に生きてはいたものの、そのまた両親の血縁もとうにいなかっため、施設や引き取り手を振り払い、国からの補助金でしばらくやり過ごしていた。公立高校に入り、そこからはバイトをして食い繋ぎをしている。
(…お父さんお母さんごめんなさい、俺「普通」になれなかった…)
「あなたは特別じゃなくても大切な子、普通でいいのよ」
「普通が一番なんだよ。」
「どうか普通でいてね。」
過去によく両親から聞いた言葉。「普通」 そうしてれば両親はすごく喜ぶ。一人で朝起きて、いつも通り学校へ行き、友達とたわいのない話をし、好きな女の子もできて、…そんな普通を繰り返す。だってそうすればずっと平和なんだから。
もう二人はいないのに?
誰が文句も言わずにやった宿題を褒めてくれる?誰が先生に怒られた俺を叱る?
誰が同性の友を好きになった俺をさげすむ?
…そうだ、もう俺を褒めてくれる、叱ってくれる、さげすむ、縛り付ける両親はもういない。
もういないんだ……
俺は京蔵を好きになった、それは紛れもない事実だ。俺はいつも通り一人で朝起きて、学校へ行き、友達とたわいのない話をし、好きな人ができて、…いつもより少し違う日常を繰り返す。
久々に心がスッキリした、いつのまにか30分の経っている。急いで晩御飯を作らないと宿題をする時間がなくなる……いや、宿題は朝に分けてやろう。少しはサボってもいい機会になるかもしれない、明日も早い。そんな心の重しをおろせた莞爾は、心地のいい解放的かつ不思議な気持ちに包まれたまま夜の支度を始めた。