テラーノベル
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屋上。
警察の足音が近づいてくる。
「屋上を確認しろ!」
「急げ!」
蓮が振り返る。
蓮
「もう時間がない!」
ひかり
「どうしよう…!」
その時、月が自信満々に言った。
月
「こうする!」
蓮とひかりは顔を見合わせる。
蓮
「……え?」
月は屋上の向こうを指さした。
すると、プロペラの音が響く。
バタバタバタバタ……
一機のヘリコプターが屋上近くまで飛んできた。
蓮
「ヘリ!?」
ひかり
「お兄ちゃん、これどうしたの!?」
月はニヤリと笑う。
月
「説明はあとだ!」
「二人とも先に行け!」
蓮
「でも、お前は!」
月
「俺なら大丈夫だ。」
「今はひかりを頼んだぞ。」
蓮は一瞬迷ったが、力強くうなずく。
蓮
「……わかった!」
ひかりは月の前まで歩いてきた。
ひかり
「お兄ちゃん……」
月は優しく笑う。
月
「心配するな。」
「また会える。」
ひかりは涙をこらえながらうなずいた。
ひかり
「うん……!」
二人はヘリコプターへ乗り込む。
プロペラが勢いよく回り始める。
バタバタバタバタ……
ヘリコプターはゆっくりと空へ飛び立った。
その直後――
屋上のドアが勢いよく開く。
警察官たちが駆け込んできた。
警察官
「いた!」
しかし、そこに立っていたのは――
ひかりの服装に変装した月だった。
帽子を深くかぶり、後ろ姿だけでは見分けがつかない。
警察官が近づく。
警察官
「君が、ひかりちゃんだね?」
月は少し緊張しながらも、小さくうなずく。
月(変装)
「……そうです。」
警察官
「無事でよかった。」
「それじゃあ、一度帰ろうか。」
月は静かに答える。
月(変装)
「……はい。」
警察官たちは月を連れて屋上をあとにした。
その頃――
空の上では、ヘリコプターが町を離れていく。
窓から外を見つめるひかりは、小さくつぶやいた。
ひかり
「お兄ちゃん……。」
蓮は隣で静かに言う。
蓮
「きっと大丈夫。」
「約束しただろ。また会えるって。」
ひかりは涙をぬぐいながら、小さく笑った。
ひかり
「うん。」
二人を乗せたヘリコプターは、青い空の向こうへと飛び続けていった。
その頃——
警察署の応接室。
制服姿の警察官が、向かいに座る月に静かに話しかけた。
警察官
「まずは落ち着いて話を聞かせてください。」
月はゆっくりとうなずいた。
月
「……はい。」
しばらく黙っていたが、意を決したように口を開く。
月
「最初に言います。」
「俺は……**ひかりじゃありません。**」
警察官たちは驚いた表情を見せる。
警察官
「え?」
月は変装を解き、帽子を外した。
月
「俺は、**阿須賀月**です。」
「ひかりの兄です。」
部屋が静まり返る。
警察官
「どういうことですか?」
月は深呼吸をして、ここまでの出来事を順番に話し始めた。
月
「妹が家を出たと聞いて、俺はずっと探していました。」
「海辺の町でようやく見つけたんです。」
警察官はメモを取りながら聞いている。
月
「そこで蓮という高校生と一緒にいるのを見ました。」
「最初は連れ戻そうと思いました。」
少し間を置いて続ける。
月
「でも……」
「二人の話を聞いて、俺も自分の過去を話しました。」
「そして、ひかりが自分の意思で蓮と一緒にいたいと言ったんです。」
警察官
「つまり、無理やり連れ出したわけではない、と。」
月ははっきりとうなずく。
月
「はい。」
「少なくとも、俺が見た限りではそうです。」
さらに続ける。
月
「それと……」
「俺も昔、家族との関係で悩んで家を出たことがあります。」
「だから、ひかりの気持ちも少し分かるんです。」
警察官は静かに耳を傾ける。
月
「もちろん、家出をしたことが正しいとは思っていません。」
「でも、まずは怒るんじゃなくて、話を聞いてあげてほしいんです。」
部屋にはしばらく沈黙が流れた。
やがて、一人の警察官が口を開く。
警察官
「事情は分かりました。」
「まずは、ご家族とも連絡を取りながら、安全を第一に考えて対応します。」
月は小さく頭を下げた。
月
「ありがとうございます。」
月の胸には、ひとつの願いだけがあった。
(ひかり……。)
(今度会えたら、ちゃんと話そう。)
(兄として、今度は叱る前に、お前の話を聞くから。)
月はそう心の中で誓い、静かに窓の外を見つめた。
ヘリコプターは青空の下を飛び続けていた。
機内では、幸山蓮と阿須賀ひかりが窓の外を眺めている。
ひかり
「どこに向かってるんだろう?」
蓮
「さあ……」
「月も行き先までは言ってなかったしな」
しばらくすると、ヘリコプターがゆっくり高度を下げ始めた。
ひかり
「あ、降りるみたい!」
蓮は窓から下をのぞき込む。
住宅街が見えてきた。
蓮
「ん……?」
さらに近づく。
見覚えのある公園。
見覚えのあるコンビニ。
そして――
蓮
「……え?」
蓮は目を丸くした。
蓮
「ちょ、ちょっと待て……」
ヘリコプターが一軒の家の近くに着陸しようとする。
蓮は思わず叫んだ。
蓮
「ゲッ!」
ひかり
「えっ?」
蓮は頭を抱えた。
蓮
「おれんちかよ!!」
ひかり
「えぇぇ!?」
ヘリコプターはゆっくりと着陸する。
ブワァァァ……
プロペラの風で木々が揺れる。
ひかりは窓から家を見つめた。
ひかり
「ここが……蓮くんの家?」
蓮は苦笑いを浮かべる。
蓮
「そう……」
「まさかここに連れて来られるとは思わなかった……」
ひかり
「ど、どうするの?」
蓮は家の玄関を見つめながら、小さく息をついた。
蓮
「……逃げても、いつかは向き合わなきゃいけないか。」
その言葉に、ひかりは静かにうなずいた。
ひかり
「一人じゃないよ。」
「私も一緒にいる。」
蓮は少し驚いたあと、笑みを浮かべた。
蓮
「……ありがとう。」
二人はヘリコプターを降り、ゆっくりと家へ向かって歩き始める。
蓮にとって、本当に向き合わなければならない相手が、その家の中で待っていた。
玄関の前。
蓮は深呼吸をした。
蓮
「……よし。」
ひかりは少し緊張した様子で隣に立っている。
ひかり
「大丈夫?」
蓮
「……正直、大丈夫じゃない。」
苦笑しながら玄関のドアを開ける。
ガチャッ。
蓮は家の中へ向かって声をかけた。
蓮
「た……ただいまー。」
ひかりも、小さく頭を下げる。
ひかり
「お、おじゃましまーす。」
しばらくすると、リビングの方から足音が聞こえてきた。
蓮の父と母が姿を現す。
二人とも驚いた表情で蓮を見つめた。
母
「蓮……!」
父
「お前……!」
一瞬、部屋が静まり返る。
蓮はゆっくりリビングへ歩いて行き、二人の前で立ち止まった。
そして頭を下げる。
蓮
「勝手に夜中に家出した、**幸山蓮**だ。」
「……すまん。」
父も母も、しばらく何も言わなかった。
その沈黙の中、ひかりは緊張しながら一歩前へ出る。
ひかり
「えっと……。」
「はじめまして。」
「**阿須賀ひかり**です。」
ぺこりと頭を下げる。
少し照れたように笑って、
ひかり
「一応……」
蓮の方をちらっと見てから、
「蓮の彼女……かな?」
と言った。
蓮
「えっ!?」
蓮は顔を真っ赤にする。
父と母も驚いて顔を見合わせた。
母
「彼女……?」
父
「そういうことなのか?」
蓮は慌てて手を振る。
蓮
「い、いや、その……!」
「事情がいろいろあって!」
ひかりも慌てる。
ひかり
「ご、ごめんなさい!」
「言い方が変でした!」
父は少し厳しい表情のまま、二人を見つめる。
そして静かに言った。
父
「……まずは座りなさい。」
「叱る前に、話を聞こう。」
その一言に、蓮は少し目を見開いた。
これまでなら、先に怒られると思っていた。
しかし今回は違った。
蓮は小さくうなずく。
蓮
「……うん。」
ひかりも安心したように息をつき、蓮の隣へ座った。
こうして、蓮が家を飛び出した本当の理由を話す時間が始まろうとしていた。
コメント
1件
読み終わりました…🥀 屋上の場面、月が自ら囮になる展開、すごく胸にきた。「また会える」って言った時の優しさ、好きです。 後半、月が警察署で本当のことを話すところ、自分の過去も重ねて「叱る前に話を聞いてほしい」って伝えるの、凄く大人だなと思った。 最後、蓮の家でひかりが「彼女」って言っちゃうシーン、ちょっと照れたけどほっこりしたよ(笑) 続き、気になります…!