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※百鬼夜行qn×百鬼夜行mnです
※少しだけ暗め要素有り、ハピエンです。
※なんでも許せる方向け
これは、【神域の彼岸花】の世界線のqnmnが出会った時の御噺。
〈おい!何やってんだよ〉
〈✕✕すなって言われただろ〉
うるせぇな、弱っちいのが悪ぃんだろ。
〈いってぇ!!〉
〈あいつに近寄るとひでぇ目に合う〉
もっとお前らが強ければいいだけの話だ。
〈あいつと関わるのはよせ〉
〈化け物!〉
お前らだって、鬼だろうが!!
『ーーーッ!』
嫌な夢を見た。
俺がまだ獄卒見習いだった頃、周りよりも力が強く、体格も良くて。
誇張でも言葉の綾でもなく、正しく〈触れるものみな傷つけて〉しまっていた頃。
ーーーーーーーーーーー
【めんside】
「ねぇ。そこで何してるの」
特徴のある高い声が耳に届く。
地獄にいる奴らはみなドスの効いた低い声が多いため、珍しいと思いながら顔をあげる。
『……居ちゃ悪ぃかよ』
俺は地獄に、いや、正確には地獄の奴らに嫌気が差していた。
少しでも気が紛れるようにとフラフラ行くあてもなく彷徨っていたら、美しい花畑が見えて、吸い込まれるように開けた場所まで来てしまった。
随分遠くまで来たのだと声をかけられてやっと気づく。
まぁ、こんな美しい場所、地獄にはねぇよなぁ。
逆にここはどこなのだろうと思考を進めたところ、視線の先に答えがあった。
『あーーーー。悪ぃ、ココ、お前の神域か。』
9本の尾に長い耳。
誰がどう見たって九尾のそれだ。
そして、現世にも絶対にないであろう絶景ときた。
あのお狐様の神域に、紛れ込んでしまったのだろう。
『すまん。悪気はなかった。すぐ出ていくから……』
よっこらせと立ち上がり、次はどこへ行こうかと背中を向けようとした。
「まって」
ぴたり。身体が止まる。
脚を動かそうにもビクともしない体に異変を感じつつ、直ぐにでも行動できるよう神経は尖らせておく。
「ごめん、勝手に術を使って。でもそうしないとお前、どっか行くでしょ」
現にどこかへ行こうとしていた手前何も言い出せずにいると、彼はこちらに近づきながら話しかけてくる。
「別にとって食おうって訳じゃないよ。ただ、ちょっと聞きたいことがあって」
少し離れた位置で止まると、彼は俺に尋ねた。
「なんでここまで来れたの?」
含みのない澄んだ翠の瞳が俺を捉える。
彼は本当に純粋な疑問として聞いているように見えた。
『……や、ボーッとしてたら、花畑が見えて……。特になにかしたって訳じゃねぇけど』
「ふぅん。じゃあお前、花が好きなんだね」
『は?なんだってそんな』
「俺の神域に入るにはこの花畑を経由しないといけない。そして、その花畑に行きたいと、明確な意思がなければ踏み入ることさえできないんだ。」
言外に見た目に反して可愛いもの好きなんだねと聞こえて、なんだか腹が立つものの実際に俺は綺麗なものや自然を感じるものが好きなため、何も言えずに口篭る。
「まぁ、理由はわかった」
『じゃあ、俺はこれで「だから待てって言ってるだろ」ッグ!!?』
変な体勢で静止の術をかけられたため、首があらぬ方向に曲がるところだった。
『ってぇな!何すんだよ!』
「理由はわかったけど、まだ分からないことがあるだけ」
お狐様の考えることは全くわからん。
傍若無人な閻魔サマの言うことをはいはい聞いている方がまだマシだと思う。
『はぁ……?俺みたいな取り柄もねぇ下っ端鬼に天下のお狐様が聞くようなことあんのかよ』
「ある。なんでお前はそんなに傷付いた顔をしているの」
元々低空飛行だった機嫌が急降下して地に落ちる。
「ここにはお前の好きな花が沢山ある。この世のどこよりも美しい景色がある。それなのにお前は
「それ以上戯言をほざく様ならその口引き裂いてやる!!!」
……はぁ?」
背中の鶴嘴を面前に引き抜き臨戦態勢をとる。
そんなことしたって無駄だと分かりきっていても、止められなかった。
ここは奴の神域。奴が死ねと言えば生あるものみな死に絶える。
それは俺、鬼とて例外ではない。
それでも。そうでもしなければ。
全てが壊れてしまうと思った。
「ねぇ、ちょっと」
〈あいつに関わるとろくな事にならん〉
『……近付くな』
「それ、危ないって」
〈あれは厄だ〉
『うるせぇ、 』
「ねぇってば」
〈バケモノが!!!!〉
『黙ってろ!!!』
「誰に向かって言ってんの?」
冷たいものが額に当たる。
細くしなやかな指が、俺の真っ赤に染まった視界をクリアにしていく。
次に見えた翠の双眸は、変わらず真っ直ぐに俺を射抜いていた。
「お前が誰を視ているのかは知らないけど、今ここにいる俺はお前に傷付けられるほど弱くないよ」
挑発的に歪んだ口許が、いやに鮮明に映る。
「ふふ。かわいいやつだね、お前」
額から、頬に。
するりと撫でられる感覚に、肌が粟立つ。
「ねぇ、名前を頂戴」
細められた眼に、俺は為す術もなく喉を鳴らすしかなかった。
『……めん』
「めん、 ……めんね。覚えたよ」
「俺はおんりー。この神域の主で、天狐」
天に通ずるものに真名を知られた存在の末路は酷いものだと伝え聞いたことがあるが、果たして吉か凶か。
「お前にバケモノって言ったやつ、全員鏖にしてあげようか」
うっとりとした表情でとんでもないことを言う彼に、俺はきっとそのどちらでもあり、どちらでもないと悟る。
『それは、やめておいた方がいい』
「弱い方が悪い。でもそうだね、精々言いつけるだけにしといてあげるよ」
誰にとは聞かなかった。恐らく俺よりはるかに上位の存在に心の中で手を合わせる。
「さっきよりずっといい表情してる」
そういえば、ずっと抱えていた鬱屈とした気分が、今は晴れやかに感じる。
「俺はそっちの方が好きだよ、めん」
初めての好意的な感情に慌てふためく俺をくつくつと笑いながら眺めるおんりー。
「ねぇ、俺と友達になろう」
トモダチ……?
知らない言葉に首を傾げた俺に、人間たちが使っている言葉だと補足をくれる。
「仲のいい存在のことをそう呼ぶみたい。人間って面白いよね」
この前も〜、と昔話が始まるも、俺は〈仲のいい存在〉という言葉を咀嚼するのに精一杯だった。
「〜、〜……って、めん、聞いてる?」
『!っすまん、聞いてなかった』
「あはは!正直だね、それでこそ俺の友達に相応しいよ」
涙を浮かべながら笑う彼に、こちらまで笑顔になる。
笑うのなんて、いつぶりだろうか。
「っと、そろそろ帰るよ。ありがとな、おんりー」
『いーえ、こちらこそ。またいつでもおいでよ、歓迎する』
手を振るおんりーに、今度こそ神域を去る。
正直友達のくだりも気まぐれだろうと本気にしてはいないが、それでも何となく、俺という存在が許された気がして頬が緩む。
『戻りました〜』
「おかえり〜!」
『……は?』
帰ってきた冥界の門には、見知らぬ顔。
金色の髪と髭を携えた筋肉質な男が、閻魔サマの服を着てそこに居た。
『え、あの、誰っすか』
「あれ?聞いてない?猛クレームが入って前任者が辞めちゃってさ〜。代わりに僕がやれって言われちゃって!」
困るよねほんと〜などと宣う彼に、一瞬覚えのある顔が過ぎる。
いやそんなまさか〜。
この短期間で?あれだけの会話で?
あるわけないと思いつつ、冷や汗がこめかみを伝う。
「あぁでも安心して!僕の仕事には罪の審判の他に、就業関係の改善も含まれてるから!以前よりも働きやすいと思うよ!」
ニカッ!と歯茎を出す笑い方にがくりと肩を落とす。
大変な友達に縁を結ばれてしまったと気付いたが時すでに遅しである。
お礼の菓子折りに思いを馳せながら、いつも通りの場所へいつもと違う雰囲気を感じながら向かうのであった。
俺の友人へ初めてのプレゼント、気に入ってくれた?
《昔の夢を見て思い出したが、なんでそんなに気に入られたのか、未だにわからん》
〈かわいかったから〉
《????》