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(RAN視点)
休憩から戻ると、店にはなぜか私服姿のセイトさんがいて、出かけたきりだったナオヤもそこにいた。
朝、セイトさんに対抗心を出してしまった俺は、少しの気まずさと申し訳なさが入り交じった挨拶を交わす。
セイトさんは挨拶を終えると突然カイリュウの腕を掴み、借りるなと一言ナオヤに告げた。
「っ……うん、ええよ、」
「…っ、!おい、セイト…っ、」
なんだかいつもの調子と違うナオヤの声と、連れて行かれるカイリュウに意識が錯乱する。
カイリュウと目が合うも、少し暗い顔のナオヤが気になり、視線を向けた。
2人が店から出ると、ナオヤに声をかけた。
「…ナオヤ、?大丈夫、?」
「…っ、え?なにがっ、?」
話しかけるといつもの顔に戻るも、少し動揺している気がして心配になる。
「……っ、ナオヤ、
「ラン兄!」
「っ、え、?」
ナオヤと話を続けようとすると、後ろからリュウキとハヤトに声を掛けられ振り返る。
「さっきはありがとう、ごちそうさま。俺らもう行くね、」
「お仕事頑張って!」
「あっ…うん、2人ともありがとう。…リュウキ、がんばってな?笑」
「う、うん…」
2人にお礼を言って、照れるリュウキにエールを送ると、後ろからたっくんがやって来て2人に合流した。
「……、たっくんも、またよかったら話そ?」
「…うん、ありがとう、ラン。」
「……あ、僕、ちょっとサークルのみんなのとこ行ってくるね?ラン兄、本当にありがとう!」
「あ、うん、ハヤトもありがとう…っ、」
「えっ?ちょ、おいトム!」
たっくんが来るやいなや、リュウキに気を遣ったのか、ハヤトは理由をつけて海の方に走って行った。
「……リュウキ、行こっか。」
「っ、え、…あ、う、うん…っ、」
「ふふ。……じゃあ、ばいばい。」
リュウキの腕を掴むたっくんと、戸惑いながらも嬉しそうなリュウキを見て、顔が綻んだまま2人を眺めて手を振った。
「あ、ラン兄、また来てもいいっ、?」
「うん、ええよ。」
「ありがとう……っ、じゃあね、!」
振り返ってそう言いながら手を振るリュウキを見送っていると、その様子を見ていたナオヤが話しかけてきた。
「…ランちゃん、知り合い、?」
「あ、うん、まぁ、そんな感じ。」
「……なんか、幸せそうやね。」
「え、?」
ナオヤを見ると、たっくんとリュウキの背中を見つめながら、そう呟いた。
見た事のない、少し寂しそうな顔だった。その表情が気になりながらも、たっくんの言葉を思い出す。
……きっと、たっくんも色々あったんだろうな。
「……そんなことも無いんじゃない、見えないだけで。」
たっくんに思いを馳せて、そう返事をすると、なんだか驚いた顔で俺を見るナオヤ。
「っ……なんや、ちょっとランちゃんが年上なの、実感したなぁ…、」
さっきから声が弱弱しいナオヤが心配になり、またお節介な面が出てしまう。
「……ナオヤ、…なんかあった?俺でいいなら、話して。」
「っ、ううん、なんでもあらへんよ、?も〜っ、ほんまに、ランちゃんは、中身も男前やなぁっ、?」
明るく振舞おうとしていてもどこか影があって、無理をしていることはすぐに分かった。
さっき、セイトさんからカイリュウを借りると言われたとき、明らかに様子がいつもと違っていた。
そういえば、セイトさんをナオヤから紹介されたとき、話し方に甘い雰囲気が漂っていた気がする。
……そういうことか、と、なんとなく察しがついた。
もし、セイトさんの事が好きなんだとしたら、確かにこの状況は辛いだろうな。
……俺も、なんとなくわかるから。
………なんで、わかるんだろ。わかんないけど。
「……ナオヤ…無理、せんでよ、」
「あはは…っ、も〜、ランちゃんがそんな顔せんでええねんで?優しい子やなぁ…っ、?」
我慢しているような姿に、思わずナオヤの背中を撫でた。
「え、?…2人なんしてん、」
声がして振り向くと、カイリュウとセイトさんが戻ってきたようで、カイリュウはそう言って目を丸くしていた。
「あ、…おかえり、」
「っ、あ、おかえり〜!♡さっ、仕事仕事〜!」
2人を見るなり、パッと元に戻り、店の奥に向かうナオヤ。
「…ラン、?ナオとなんかあったん?」
「あ、いや…っ、大丈夫です。」
「そうなん?……じゃあ、カイリュウ。仕事終わったら教えてな、?」
「っ、お、おん…」
セイトさんがカイリュウへそう言い残し、店を出て行った。
仕事が終わったら。
なんとなく、その言葉が引っかかった。
***
(KAIRYU視点)
「……ラン、ナオヤと何かあったん、」
「え、?」
「…今、さすってたやろ、…背中、」
ここに帰ってきた時、ランがナオヤの背中に触れていた。
その姿を見た瞬間、ドキッと心臓が大きく跳ねた。
また、ナオヤへの警戒心が働いたのか?
でも状況的にそうではなくて、自分でも戸惑う。
「あぁ、…うん、…ちょっと元気なかったけん、」
さっき、俺がセイトに連れて行かれる時、確かに無理をしていた。
やっぱり、その事を気にしているのか。
俺のせい、そう思うと罪悪感に襲われる。
「……まぁ、確かにそうやな、」
「心配やな、」
「え、?」
「ああ見えて中身は繊細な感じするから」
ナオヤが行ってしまった店の奥を眺めながら、ランが呟いた。
心配そうに見つめるその目に、なぜか胸がザワつく。
「……そんなことお前にわかるん?」
「っ…いや、イメージでしかないけど。俺に話してって言ったけど、話してくれんやったし…」
「……ふぅん、」
「俺じゃ頼りなかったみたい」
寂しそうな顔をするランに、なんだかモヤモヤが広がっていく。
なんやこれ。
ランは、ただ心配しとるだけやのに。
俺だって、もちろんナオヤが心配や。…なんなら多分、俺のせいやし。
そう思うのに、さっき、俺から目を逸らしてナオヤの元に向かったランのことがずっと引っかかっていた。
「……で、カイリュウは、セイトさんと何話しとったん、?」
「えっ、?」
「……話したんやろ、?」
「っ……あぁ、…うん、…今日、飲み行かへんかって誘われてん。」
ふいにセイトの事を聞かれて、思わずセイトに誘われた事を言ってしまった。
なんとなく、なんでか分からへんけどランに言いたいという気持ちがあった。
「……2人で?」
「おん、」
「っ…ナオヤって、セイトさんのこと好きなんやろ、?」
「え…っ、?」
「なんとなく分かるけん。……それ、ナオヤは大丈夫なん、」
「っ…、」
なんやねん。
さっきからナオヤナオヤって。
俺だって、そんなこと分かってんねん。
なんでお前に、そんなこと言われなあかんねん。
ナオヤの心配ばっかかよ。
……俺が行くことは、少しも気にならへんねんな、
ああ、なんや、なんで俺、こんなイライラしてんねん。
俺だって、ナオヤを悲しませたくない。当たり前やろ。
でも、だからって、セイトを蔑ろになんてできない。
それに、なんでお前に。
「そんなんっ、俺やって友達なんやからしゃあないやろっ、!」
つい、声を荒らげてしまった。
びっくりしているランを見て、我に返り謝る。
「っ、ごめん……」
「………それって、本当に友達なん、」
「は、?」
まるで、”ナオヤのことを考えられない自分勝手な奴”と言われたみたいで、心が重くなる。
……なんやねん、じゃあ、どうしたらええねん。
てか、なんで、俺のことは無視やねん。
「っ……、俺の立場もわかってや…っ、」
言い争う元気も無く、それだけ嘆いて、ランから離れて仕事に戻った。
***
(RAN視点)
ナオヤが心配という気持ちがありつつも、頭の片隅にずっと、”仕事終わったら教えてな”というセイトさんの言葉があって、気になって何を話したか聞いてみる。
「今日、飲み行かへんかって、誘われてん」
その言葉を聞いた瞬間、ナオヤがセイトさんの事を好きだと多分知っているはずなのに、という気持ちと、セイトさんと2人きりで飲むという事に対しての謎のモヤモヤした気持ちが生まれた。
でも、この状況でそんなモヤモヤなんてぶつけている場合じゃない。
「……それ、ナオヤは大丈夫なん、」
内心、綺麗事やな、と少し感じていた。
本当は、行ってほしくない気持ちが半分を占めていた。
俺って、なんでこんなにカイリュウの事気にしとんやろ。
自分でもよくわからない。
心の中のモヤモヤした気持ちを解明しようとしていると、カイリュウが急に声を荒らげた。
「そんなんっ、俺やって友達なんやからしゃあないやろっ、!」
その声にびっくりして、発言に内心動揺する。
カイリュウは、常に周りを見ていて、時には自分を抑えてでも、人の気持ちを優先するところがあると勝手に思っていた。
でも、”ナオヤが好きな相手”よりも、”自分の友達”を優先したカイリュウに、少し違和感を覚えた。
もしかして、セイトさんに少し気持ちがあるんじゃないか、そう思った。
自分も好きだから、ナオヤを優先できない。
それなら、納得がいく。
「………それって、本当に友達なん、」
自分でその考えに至りながらも、なぜか苦しくなって、心が焦り始めて、そんな事を言ってしまった。
友達だからしょうがない、という言葉が、本心なのか、知りたくて。
本当はセイトさんの事を友達なんて思ってなくて、好きだからムキになってるんじゃないか、そうザワザワする心を鎮めたかった。
「っ……、俺の立場もわかってや…っ、」
嘆くようにそう呟いて去ったカイリュウの様子に、やっぱりそうなんやなと思った瞬間、息が詰まるような気持ちになった。
…………………
結局、そのままカイリュウとはあまり言葉を交わさずに、仕事を終えた。
カイリュウは「おつかれさん、」とぶっきらぼうに俺に言うと、さっさと帰ってしまった。
「……ランちゃん、カイリュウと喧嘩でもしたん、?」
その様子を見ていたナオヤが、心配そうに話しかけてくる。
「いや…ううん、…俺が踏み込みすぎただけやけん、」
カイリュウがセイトさんのことを好きなんじゃないか、と思いながらも、同じ相手を好きなナオヤに、そんな事を言えるわけもない。
2人が飲みに行くことも言えないまま、1人でモヤモヤしながら帰り支度をした。
***
(KAIRYU視点)
「なんかカイリュウ、イライラしてへん?」
「え?」
居酒屋の個室でセイトと合流し、何杯かお酒を飲んだ後そうセイトに突っ込まれた。
……図星だった。
ずっと、ランの事でイライラしている。
なんであんなん言われなあかんねん。
その想いが、消えないままにここに来てしまった。
そんな事はセイトに関係ないのに。
「してへん、」
「どないしたん、言うてみって。」
「お前に関係あらへん。」
つい、そう口走ってしまうと、ムッとした表情になるセイト。
あかん、さすがに無神経やった。心配してくれとんのに。
謝ろうと口を開こうとした矢先、セイトが話を続けた。
「なんやねん、ランのことか?」
「っ、は、?」
「図星かよ」
すぐに言い当てられ、内心びっくりしながらも反論する。
「…っ、ちゃうわ、」
「……お前、なんでそんなあいつに入れ込んでんねん?」
「入れ込んでへんわ、会ったばっかやねんそもそも」
「……ほーん。じゃあ一目惚れとか?」
「っ、なんでそうなんねん、」
「だってイケメンやん、あいつ。」
「……っ、アホ。そんな目で見てへん、」
「ほんまか?」
「弟みたいなもんやから。ただ世話焼きたなるだけや、」
「……へぇ、」
ランの事ばかりを畳みかけられ、セイトを見るとボロが出そうで顔を見れずにいた。動揺を隠すように、ただひたすら食べ物を口に運んでいるとセイトが続ける。
「……じゃあ、俺は?」
「え、?」
聞こえてきたセイトの言葉に、箸が止まる。
「俺は、そういう目で見てへんの?」
「っ……なんやねん、いきなり…、」
「……俺は、そういう目で見てんねん。」
「………、は、?変な冗談ええねん、」
「ほんまやって。……なぁ、こっち見て。」
止まった手を、ふいにセイトに掴まれて焦る。
「…っ、なんやねん、」
「……まって。そっち行くわ」
「えっ、」
そう言うと、俺の隣に座るセイト。
急に近くなった距離に動揺する。
「……な、なんで来んねん、」
「意識してほしいから。」
「っ…、お前、さっきから何言うて…っ、」
言い終わる前に、俺の肩を掴み、顔を覗き込んでくるセイト。
「…カイリュウ、」
俺の名前を呼んだ瞬間、目が合った後、
セイトの視線が唇に落ちた。
***
(SEITO視点)
「!っ…あかん……、」
キスしようと顔を近付けると、カイリュウが俺を突っ撥ねた。
「……、っ、…ごめん。いきなり、」
やっぱり、いきなりすぎたよな。
あかん。先走りすぎた。
……つい、カイリュウが、ランの事を考えている気がして。
少し気まずい空気が流れると、カイリュウが口を開いた。
「っ……お前、酔いすぎや。…大目に見たるから、そっち戻れ、」
「…っ…カイリュウ、俺、
「ごめん。お前と飲んでんのに、イライラして。…こんなん嫌よな、」
急に弱弱しくなるカイリュウに、何も言えなくなる。
きっとこれは、俺を気まずくさせないようにするための、カイリュウの優しさだ。同時に、さり気なく気持ちをかわされた気がしてモヤモヤする。
……やっぱり、掴めそうで掴めない。
でも、こういう優しいところも、好きな要素の一つで。
踏み込みすぎたと反省しながらも、まだ諦めの悪い俺がいた。
「……俺こそごめんな、…なぁ、ちょっと散歩せぇへん?」
「散歩、?」
「うん。…店、出よ。」
店を出て、海沿いを2人で歩く。
「は〜、あっついけど、風が気持ちええな」
空気が変わったことで、またいつものように話し始めたカイリュウの声に安堵する。
「夜は静かでええな、ここ。」
「せやねん、昼間はあっついし人多くて落ち着かへんけど、夜はわりと好きやわ」
風で髪をなびかせて、少し微笑みながら海を眺めるカイリュウが、街灯に照らされている。
その横顔に、綺麗だな、なんて少し見惚れる。
「……好きや、俺も」
海を眺めるカイリュウを見ながら、そう言葉を放った。
「え?ほんまに?お前は昼間の方が好きそうやのにな?笑」
俺の言葉を素直に受け取ったカイリュウが、こっちを見てそう言いながら笑う。
「まぁ、昼間も好きやで?カイリュウがおるし。」
「ふはっ、お前、そんなん言うてうちにサボりに来とるだけやんけ。」
「……バレてもうた?」
「バレバレやアホ。笑」
俺の言葉を無意識なのかさらっとかわしたカイリュウに、少し悔しくなりながらも、話を合わせるとまた笑顔になる。
……まぁ、今日は、その可愛い笑顔で許したるわ。
「…カイリュウと話すの、楽しいねん」
「せやろな」
「おいなんやねん自分で言うなよ(笑)」
「ぶふっ、ええやろほんまの事やねんから」
「も〜ほんまに…」
「…まぁ、なんだかんだ、俺も嬉しいしな。お前来ると。」
「…っ、」
掴めへん、くせに。
許したろって、思ったのに。
いつも、俺をそうやって、離してくれへん。
気持ちを抑えきれずに、足を止めてカイリュウを抱きしめた。
「っ、!えっ、ちょ、せい…っ、」
「……っ、…ごめん、…カイリュウ、」
「…え、?」
「気、つけてな…っ、?おやすみ…っ、」
「っ、…お、おん…っ……おやすみ…、」
また、踏み込みすぎるのが怖くなって、すぐに身体を離して謝ると理解が追いついていない様子のカイリュウ。
なんだか2人でソワソワしたまま、おやすみと言い合って帰路に着いた。
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せつないっっっ!! 毎回続きが気になりすぎてます🤩 かいるーさんらんちゃん寄りかな? せいちゃん頑張れ🥺