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(RAN視点)
「カイリュウ、…昨日はごめん、」
朝、出勤してすぐにカイリュウが調理場で作業をしているのを見つけて、挨拶よりも先に、昨日の事を謝ろうと声を掛けた。
俺の声に気付き、こっちを向いたカイリュウは少し気まずそうにしながらも首を振った。
「いや、…俺も、なんか変な空気にしてもうてごめんな、」
「…ううん…、手伝うよ、?」
「、おん、ありがとさん、」
カイリュウの隣に行き、作業を手伝う。
……昨日、どうやったんかな。
セイトさんとの事が、気になる。
まだ少し気まずい空気の中で聞いてもいいものか、悩みながらも口を開いた。
「「あのさ」」
「っ、」
「……えっ、?」
俺が言葉を発したのと同時にカイリュウの声が重なって、2人で顔を見合わせた。
カイリュウも何か言おうとしたのが気になって、え?と声を漏らすと、一度口をギュッと噤むも、また話し始めるカイリュウ。
「……ランから言え、」
「っ…なんで、?」
「ええから」
「………セイトさんとの飲み、どうやったん、」
なぜか少し緊張しながらも、聞いてみる。
セイトさん曰く、2人は仲が良い。
ナオヤの事があるにしろ、まぁきっと、楽しく飲んだだけだろう。
昨日は、ナオヤの事が気がかりだったくせに、カイリュウがどうだったかを気にしている自分がいた。
「っ、どうって、別に、…」
「……え、?」
「あっ、これ違うやんけ、…ちょ、ラン、それ取って、」
「あ、うん…、」
別に、とだけ言って、作業を間違えるカイリュウ。
なんだか様子がおかしい事に気付いて、余計に気になってしまう。
「カイリュウ…?…なんかおかしい。」
「っ、おかしないやろ、俺だってミスる時くらいあんねん、」
「そうやなくて…
「おはよう」
「「わっ、!!」」
後ろからセイトさんの声がして、2人でびっくりしながら振り返る。
「……朝から仲良さそうやな。」
俺だけを見て、そう言い放つセイトさん。
その少しムッとした顔を見て、確信してしまった。
薄々、そうやとは思っていたけど。
この人、カイリュウの事好きやろ。
……じゃあ、もし、カイリュウが本当にセイトさんを好きなら…、?
「…っ、…おはようさん、セイト、」
「…おはよう、カイリュウ。…昨日、ありがとうな、?」
「おんっ、…あ、まだナオヤ来てへんから、俺受け取るわ、」
「ほんま、?重いで、?」
「っ……う、一緒に来てくれ、」
「ふっ(笑)そのつもりやから安心せぇ。」
「カイリュウ、俺持つよ。」
「……っ、ええ、セイトにやってもらうから。」
「っ、」
そう言って、2人で荷物を奥に運んでいく。
……華奢なくせに。なんで俺に頼まないんだよ。
“俺やって友達なんやからしゃあないやろ…っ、!”
昨日、カイリュウが声を荒らげて発したその言葉が、頭に響く。
カイリュウが、セイトさんを好きなんやとしたら。
ナオヤはどうなる、?
……いや。
ナオヤの心配よりも先に、自分が動揺している。
なんで。俺は3人には関係ないのに。
「…あんがと、セイト。」
「華奢なんやから、無理すんなや?」
「っ、…お、おい、っ、」
会話をしながら、2人が戻ってきた。
華奢なんやから。そう言いながら、セイトさんがふいにカイリュウの腰を抱いた。
動揺して、瞬きが多くなるカイリュウ。
……なんだよ、この空気。
「……昨日、いきなりごめんな?カイリュウ、」
「…もう、ええから、…」
「……ちょっとは意識してくれとんやな?」
「っ、…もう、はよ行けやっ、」
「はいはい。(笑)…じゃあな、ラン。…あ、後でまた来るからよろしく。」
俺の肩をトン、と叩くと、そのまま通り過ぎて店を出て行った。
「……カイリュウ、」
「なんや、」
「………昨日、何かあったやろ、」
「っ、…もうその話はしたやろ、はよせな時間ないで、」
「なんで言ってくんないの、」
「お前に関係ないからや」
「っ……、」
関係ない。確かにそうだ。
お節介にも程がある。
別に、俺に言うことでもない。
でも、なんだか急に、一線を引かれた気がして悲しくなる。
悲しいし、……なぜか、悔しい。
「……なんか、あったんやね。」
「っ、……なんやねん、また、ナオヤって言うんか?」
「え、?」
不服そうな顔で、俺を見るカイリュウ。
そう言われて、正直なところ、ナオヤの事を考えていなかったことに気付く。
「……っ、違う、」
「違わへんやろ。……わかっとるから、言われんでも。」
「……違うって、カイリュウ、」
「……じゃあ他に何があんねん、」
そう言われて、言葉に詰まる。
違うけど、何かと言われれば、分からない。
でも、ただ単純に、セイトさんに惹かれていそうなカイリュウに、寂しさを覚えていた。
「……カイリュウは、?」
「え、?」
「さっき。何言おうとしたん、」
「っ……、」
「それは、聞いてもええやろ?」
「……、……お前が気にしとんのって、ナオヤだけなん、」
「……っ、え…、」
「っ、やっぱなんでもあらへん。…早く店開けるで、」
そう言って、少し慌てたように調理場を出て行った。
***
「カイリュウ、ランちゃん、おはよ〜♡」
若干2人で気まずいまま開店準備をしていると、ナオヤがいつもの様子で出勤し、おはよう、と柔らかく声を掛けてきた。
「おはようさん、お前遅いねん!」
「おはよう、ナオヤ」
ナオヤの元気そうな様子にホッとしていると、俺とカイリュウを交互に見ながら何か言いたげな顔をした。
「なに?2人気まずいん?」
「「っ、」」
いきなり核心を突くナオヤに、思わず俺もカイリュウも動揺する。
「お前、喋ってへんではよ手伝えや!」
「そういう事言うてくる時は大体焦っとるんよな〜?ね〜?カイリュウっ、?」
「っ、あ!」
ガシャン、と物を落として明らかに焦っているカイリュウ。
「っ、ふふ、(笑)」
手を動かしながらも、ナオヤの言う通りすぎるカイリュウの動きに、思わず笑ってしまった。
「っ…おい、ラン!何わろてんねん…っ、!」
「……ごめん、可愛くて。(笑)」
「、はっ、?」
「あれ〜?♡ランちゃん、素直やなぁ〜?♡」
だって本当に、可愛かったから。
カイリュウが怒った気がしたけど、本当に思ったことだからと謝らずにいるとナオヤに煽られる。
「っ……おいナオヤ、お前今日もおらへんなったらど突くからな。」
「え〜なんで〜?ランちゃんと2人きりが恥ずかしいからぁ〜?」
「っ、お前ほんまに…!!誰のせいやと…っ、
「えっ?」
「…っ、もう、うるさいねん。時間ないねんから、はよせぇよ…っ、」
カイリュウが思わず何かを口走りそうになって、反応したナオヤに慌てて取り繕うようにそう言った。
***
店を開けるも、まだ朝早いため海辺にも人がちらほらいる程度で、まだまだのんびりした時間が流れていた。
「……あ、なぁ、もしかしてもうセイちゃん来た、?」
「っ、ん、え、?」
調理場で在庫を確認しながらナオヤがそう聞くと、返事がもたつくカイリュウ。その声に、ちらりと2人を見ながら横で聞き耳を立てた。
「なに?変な声出して。」
「出してへんわ…っ、…来たで、セイト。」
「えぇ〜!もぉ〜!今日会えへんやったやんかぁ〜!」
「知らんわ、お前が遅いからあかんのやろ…っ、」
いつものように会話しているようで、やっぱり何か動揺しているカイリュウ。
……やっぱり、好きなんかな、セイトさんのこと。
「……2人とも、本当にセイトさんのこと好きやね。」
「……っ、え、?」
「ランちゃん、?」
思わず、ポツリとそんな言葉を発してしまった。
急な俺の発言に驚く2人に、何言っとんやろ俺、とハッとする。
「あ、いや…っ、」
「ランちゃん、もしかして嫉妬してるん〜?♡」
「えっ?」
“嫉妬”
ナオヤの言葉に内心焦る。
俺、確かに、……嫉妬、しとるんかも。
なんで?……誰に、?
「え〜♡も〜!可愛いなぁ?ランちゃんの事も、もちろん大好きやでっ?なぁ?カイリュウっ、?」
「っ、!は、?な、なんで俺に振るねん…っ、!?」
「何焦っとんの?ランちゃんの事安心させたらなあかんやろ?ほらっ、”大好き”はぁ〜?♡」
ナオヤが楽しそうにカイリュウを煽り、グイッと俺の方にカイリュウの身体を向けさせた。
その瞬間バッチリと俺と目が合い、途端にどんどん顔が赤くなっていくカイリュウ。
その姿に、急に胸がぎゅっと締め付けられた。
はっ…?…なんなん、それ、?
可愛い、やん、、
心臓が、ドキドキと音を立てた。
「っ、あ、あほっ、ナオヤ、お前とちゃうねん……っ、
「言ってくれんの?」
「、え、っ、?」
目を泳がせるカイリュウに、思わずそう言った。
聞きたい。カイリュウの口から。
そう思ってしまった。
「きゃ〜♡ほら、カイリュウっ、?ランちゃんも言ってほしいねんって〜?♡」
「〜っ、/…っ、おまえっ、ちょっと来いっ、!」
「えっ、?!」
「あっ、ちょっと!どこ行くねん!」
「買い出しや!買い出し!!」
カイリュウにいきなり腕を掴まれるとぐいぐいと引っ張られ、そのまま店の外へと連れ出された。
***
俺を引っ張ったまま、スタスタと前を歩いていくカイリュウ。
「っ、カイリュウ、…ちょっと、まって、」
声を掛けるも何も言わず、顔も見えなくて少し不安になりながらも話を続ける。
「なぁっ、ナオヤ、1人で大丈夫なん…っ?」
そう言うと急にピタッと足が止まって、カイリュウにぶつかりそうになりびっくりしていると、くるっとこっちを向いた。
「……っ、お前、…ナオヤのこと好きなん、?」
「…えっ、?」
予想もしていなかった言葉に驚いて目を丸くする。
俺の腕を掴むカイリュウの手に、心做しか力がこもった気がした。
「………そうなんやろ、?ナオヤのことしか言わへんやんけ、……昨日、なんかあったんとちゃうん、」
「昨日、?」
「昨日。心配なんはわかんねんけど、…なんか、やけに肩持っとったやんけ。……あれって、そういうことちゃうの、」
「えっ?まって、なんでそうなんの…」
「っ、…さっきだって、ナオヤがセイトに会えへんやったって言うてたの、あれに嫉妬したんやろ?」
「、ちがっ、…あれは、」
「っ、別に、隠さんでええやんけっ、まぁ、ナオヤはセイトにあんな感じやし、しんどいかもしらへんけど、…別にまだ勝ち目が無いわけじゃ…
「違うって言っとうやん!!」
「っ……、え…、」
どんどんと勘違いを重ねていくカイリュウに我慢できなくなって、大きい声を出してしまった。
「…っ、ごめん、大きい声出して。…でも、カイリュウが話聞かんから。」
「……や、…ごめん、…勝手に、なんか色々言うてもうて、」
「……てか、逆やし。」
「逆、?なにがやねん、」
「………セイトさんに嫉妬したのは、当たってる。」
「っ、…なら、やっぱり、」
「……カイリュウが、セイトさんと何があったんか、何も教えてくれんやったのが…寂しかっただけ。」
「……っ、へ、、?」
「……ナオヤは、関係ないけん、」
自分で言いながら、自分の素直な気持ちに困惑していた。
…俺、カイリュウのこと、なんやと思っとるんやろ。
ただ、仲良くなれたから。同志やって、距離が近くなったから。……弟みたいやって、可愛がってくれたから。
だから、ちょっと、寂しくなっただけ。
…それだけ、なんかな。
「……ほんまに、?」
「ほんまやって。……てか、カイリュウこそ、なんでそんなにナオヤを気にするんよ。」
「っ、…せやから、言うたやろ、あいつは遊、、
「それだけ?」
「……っ、俺のことは、ええねんっ、」
「おい、散々人に詰め寄って自分はそれっ、?」
「っ、…ああもう!はいはい!お前がナオヤナオヤ言うから、なんか嫌やってん!そんだけ!もうおしまい!」
「、えっ、?…ちょ、カイリュウっ、まって話し終わってないけん!」
早口で捲し立てて、その言葉の意味を考える余裕を与えないまま、さっさと歩き始めるカイリュウ。
こうなったら全て聞いてしまおうと、カイリュウについていきながらも言葉をぶつける。
「ナオヤ、あいつ昨日おらへんやったからな…ちょっとくらいサボっても許されるやろ。おい、ラン、アイス奢ったる。」
「っ、おい。カイリュウ、俺まだなんも聞いとらんけん!セイトさんと何したんよ、なぁ!」
「っ、…ふは、気になんねや?教えたらん。笑」
「……っ、は?おい!なんか楽しんどるやろ、?笑」
「別に。…今更気にして、遅いっちゅうねん、」
「っ、……あ〜もういい。1番高いアイス買ってもらうけん。」
「ぶっ、ええよ、経費やし。笑」
「ナオヤに言うぞ。」
「共犯やろ、お前も。笑」
「ふふっ、…そっか。」
結局カイリュウとこうして話すのが楽しくて、お互いの言葉の意味を深く考えられないまま、2人でこっそりサボって、コンビニを目指して海沿いを歩いていった。
***
(SEITO視点)
今日は、ナオんところの配達がやたら多い。
さっきも来たけど、もう一度会社から持ってきた荷物を運び、海の家へ向かった。
昨日、カイリュウを抱きしめたときは、ぽかんとした顔をしていた。意識されてへんやったかな、なんて思っていたけど、今朝さり気なく腰を抱いたとき、なんとなく、いつもの顔とは違っていた。
少しでも、カイリュウの意識が変わってくれてたらええねんけど。
「こんちはぁ〜」
「っ、あれ?!セイちゃん!?♡」
店に戻ると、ナオだけがカウンターの奥で作業をしていた。
「お、ナオ来とったん?おつかれさん、」
「お疲れさま〜♡え〜!セイちゃん今日はもう会えへんと思ってたから嬉しい〜♡」
「……あれ、カイリュウとランは?」
「ん?あ〜、なんかなぁ、買い出し言うて出てってもうてん!も〜、カイリュウ、あいつ絶対サボってんねん。ランちゃんまで連れてっちゃってさぁ、」
「……へぇ、?」
カイリュウが、ランを連れて?
……まぁ、言うても同じ従業員や。そんな心配することやあらへん。
大丈夫、俺の方が距離も近い。
……キスは、拒否されたけど。
でも、あれは急すぎたから。
違うタイミングなら、きっと。
「……セイちゃん、?」
「っ、え、?」
「どないしてん、なんか考え事?」
カイリュウの事を考えていると、ふいにナオが顔を覗き込んできて、俺の様子を心配してくれる。
……ナオは、カイリュウの幼馴染だ。
俺とランよりも、カイリュウの事を知っている。
俺にも、懐いてくれているし、ランの上司でもある。
………ナオになら。
打ち明けても、いいかもしれない。
「……ナオ、」
「ん?あ、セイちゃん、荷物手伝うで?」
「あ、…おん、じゃあこの軽いの、お願いしてもええ?」
「うん!もちろん♡」
ナオが荷物を奥に運んでいくのを眺めながら、重い方の荷物を手に取ると、少し緊張しながらナオの元に行く。
「……ナオ、」
「ん〜?なぁに?どしたん?セイちゃん?」
「…っ、あんさぁ、」
言葉に詰まる。
誰かに、ちゃんと話したかった。
初めて、気持ちを言葉にする。
「……俺、実は、カイリュウのこと好きやねん、」
「……え?」
荷物を整理しながら俺の話を聞いていたナオの手が、打ち明けた瞬間ピタッと動きを止めた。
コメント
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やばいですなおちゃんにだれかレスキューを🛟

なおちゃーん😭😭 海辺ら辺の物語もそうだし、大学組の話も気になりすぎて、、 次の話も楽しに待ってます!!

いつも、素敵なお話を書いてくださり、ありがとうございます! ナオちゃんが切ない、、みんな報われてほしい、、 続き、楽しみに待ってます!