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そして三月の終わり近い日、両親が仕事で帰りが遅くなるため、晶子は定時制高校の終業式の日にカンナと待ち合わせて夕食を外でとる事にした。
午後八時頃、普段より早い時間に下校して来たカンナと晶子は、晶子が通っていた塾の近くの小さな公園で落ち合った。濃いグレーのブレザーの制服姿のカンナは、晶子の服装を見て目を丸くした。
「何だ、晶子。高校の制服なんか着て。もう卒業式終わったんじゃなかったのか?」
晶子はおしゃれなデザインのブレザーの制服を自分で見ながら答えた。
「そうなんだけど、これで最後かと思うと何となく名残惜しくなっちゃって」
ギャハハと笑い出したカンナと肩を並べて駅の方に向かって歩きながら、晶子は少し寂しい気持ちになった。暗くなったこの道を、こんな風にカンナと一緒に歩く事はもうないのだと思うと、何か感極まる物があった。
先に食事を済ませる事にして駅の近くのファミレスに入った。席に向かい合わせに座ってタブレットで注文を済ませると、カンナが期待を込めて訊いてきた。
「なあ、晶子、その制服どうするんだ?」
晶子はわざとジト目をして答えた。
「家に仕舞っておくけど」
カンナがさらに頬を緩めて言った。
「だったらあたいにくれないか?」
「ダメ」
晶子の取りつく島もない返事に、カンナは駄々をこねている小さな子どものような表情になった。
「ええ、いいじゃん。どうせもう着ないだろ?」
「カンナに渡すと、また美少女モデルの撮影会とかに使う気でしょ? 今あたしのとこみたいな有名私立だと、卒業生の制服の悪用が問題になってるの。学校からも制服の扱いは厳重にって注意されたしね」
「ちぇっ。卒業した後まで口出ししてくんのかよ。野暮な高校だな。晶子も生真面目過ぎるんだよ」
「それに思い出の品になるしね。青春時代は終わっちゃたんだし」
その晶子の言葉にカンナがきょとんとした表情になった。
「え? なんで終わりなんだ?」
今度は晶子がきょとんとする番だった。
「だって、高校卒業したんだから、もう終わりでしょ、あたしの青春時代は。あ、そうか、カンナの定時制高校は四年制だから、カンナはもう一年あるもんね」
「いや、そういう事じゃなくてさ……」
カンナは天井を見上げて言葉を探した後言った。
「なんで高校卒業したら青春が終わりなんだ?」
「普通そうじゃない? 大学生はもう大人同然の扱いになるし、二十歳になったら成人だし」
この頃、成人年齢はまだ二十歳であり、18歳への引き下げが国会などで議論されていた。カンナはなおも納得できないという表情で言った。
「だからさ、青春時代がいつからいつまでなんて、そんな事誰が決めんだよ? ていうか、誰に決める権利があんだよ? 本人が自分はまだ青春してるって思うなら、高校卒業してようが、二十歳越えてようが、青春の続きでいいじゃねえか」
「ううん……そういう考え方もありか?」
「そうだぜ。あたいは高校出た後も、二十歳になった後も、まだ当分は青春するつもりだぜ」
料理が運ばれて来て会話は中断した。相変わらず豪快な食べっぷりを見せるカンナを見ながら、どうしてカンナはそんな自由な物も考え方ができるんだろうか、と晶子は思った。
コメント
1件
卒業後の「青春って何?」って話、すごく深かったです。カンナの「誰が決めるんだよ」って言葉が胸に刺さりました。私もまだまだ青春を生きていたいって思わせてくれる回でした🌙🤍
#両片思い
キオネ
219
#命
ruruha
279
40
#⚠️この話は全て私の妄想で書きました
レンコン 煮付け
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