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これ以上邪魔されてたまるか。絶対に模倣犯を捕まえてやる。そして、残りのゲームを終わらせるんだ。
「今日は課題提出日だ、後ろから集めてくれ」
先生が数日前に出した課題、確かカバンの中にはあったはずだ。やっているかどうかは別としてな。
「くそ、こんなにプリント入ってたっけな」
俺は勢いよく大量のプリント類をカバンから出した。見覚えのない紙の束が床に散らばる。
「これ、は……」
「お前、それ怪文書じゃないか」
見上げると、そこには先生が立っていた。違う、俺はこんなの知らない。
「これは、俺のじゃないです。全く身に覚えがないんです!」
「言い訳は不要だ。後で職員室に来なさい」
周囲から疑いの言葉が聞こえる、疑いの目線を感じる。俺じゃないのに、俺は止める側で、友人と一緒に解読していたのに。俺が平和を作っていたんだぞ……!
「拓斗、とりあえず落ち着くんだ。どうやら誰かに嵌められたみたいだね」
「そんな呑気なこと言ってられるか、俺じゃないんだ、本当に俺じゃない!」
「分かっているよ。君は僕を騙せない、そもそも人を騙すような奴じゃないことも承知の上だ。だからこそ先生に言い分を話しておいで」
「分かった……」
俺はもう戦意消失していた。俺にこんなことをする奴は、一体誰なんだ。何の恨みがあってこんなことするんだ。俺は一直線に職員室へと向かい、扉を開けた。
「貝塚です、〇〇先生はいらっしゃいますか」
「ああ、例の。それなら奥の席で待っているよ」
近くにいた先生が案内してくれた。案の定、俺の担任は険しい顔をしている。
「今までもお前がやっていたのか」
「違います。本当に俺じゃないんです」
「でも、実際カバンの中に紙が入っていたじゃないか」
「いつの間にか入っていたんです。誰かが、俺を嵌めるためにわざと入れたんです」
ダメだ、全然響いてない。これは絶対に信じてもらえないだろう。
「誰かって、誰なんだね」
「それは、分からないです……」
生徒会長のことは言えない。しかも、嵌めたのは生徒会長ではないと俺は思っている。そんな卑怯なことをする奴ではない。曲がりなりにも正義を持っている奴だ、こんな方法はきっと選ばない。
「貝塚、先生は見損なったよ。お前が平然と嘘をつく奴だなんて、少しは良心があると信じていたんだがな」
「だから違うんですってば。俺は犯人ではありません」
「まだしらを切るのか。先生も擁護しきれんぞ」
「擁護も何も、俺はやってません」
確実に犯人だと思い込んでるな。こんなの、何を言ってもダメじゃないか。まあ、元々平気で生徒を疑うような先生だしな、俺のほうこそ見損なったよ。
「一週間の謹慎と反省文の提出を言い渡す。校長と話し合った結果だ、しっかりと反省しなさい」
「そんな、だから俺は……」
「言い訳するんじゃない! いい加減見苦しい、さあ、話は終わりだ。教室に戻りなさい」
「……はい」
ああ、俺の人生は確実に終わった。どうして誰も、信じてくれないんだ。担任だけじゃない、職員室にいた先生もどうせ俺を犯人だと決めつけてる。俺は肩を落とし、とぼとぼと教室に戻った。
「うわ、犯人が戻ってきたぞ」
「あんなことするなんて信じられない」
「まさか貝塚だったなんて」
そんな言葉が色んな所で囁かれている。俺は悪くない、俺じゃない。証拠なんてこの紙切れしかないくせに、それで全て決めつけてしまうなんて、非道にもほどがある。
「拓斗、その顔は、ダメだったみたいだね」
「お前はいいよな、疑われる気持ちなんて分からないだろ」
「そう卑下するものでもないよ」
「じゃあ、お前がなんとかしてくれるのかよ」
「僕ではどうしようもない。君自身で解決しなければ意味がないだろう」
「そうやってお前はいつも他人事だよな。俺の気も知らないで」
どうせ処分は決定されたんだ。大人しく家に居よう。
「拓斗、僕は……」
「偽善者ぶるなよ。虫唾が走る」
友人を本気で睨んだのは初めてかもしれない。それだけ、俺の心には余裕がなかった。
事情を聞いた両親は、俺に一言だけ言う。
「大変だったね」
両親はいつも、俺が問題を起こしても、俺を責めることはしなかった。今回もそうだ。友人の家族、および親戚はみんな『優しい』んだ。そう、不気味なほどに。
「母さん、父さん、俺が何したのか聞いたんだろ」
「大丈夫よ、全て分かっているから」
「そうだ、拓斗は何も心配いらないぞ」
俺が友人に相談した翌日には全て事が終わっている。それは毎度のことだ。この家系は、友人を中心に回っているから、誰も友人を疑わないから。
「俺は少し部屋で休むよ。迷惑かけてごめん」
「迷惑だなんて思ってないわ、いつものことじゃない。じゃあ、夕ご飯できたら呼ぶわね」
「男は少しやんちゃなくらいが丁度いいからな。それじゃ、父さんも休ませてもらうよ」
どこかおかしい、そんなことは分かっている。でも俺は、この家族がとても大事で、とても好きだ。細かいことは考えずに、俺はベッドに横たわった。その瞬間、携帯が震え始めた。
「拓斗、調子はどうだい」
「携帯番号は登録しない主義じゃなかったのかよ」
「僕たちは親戚同士だ、携帯番号を調べるなんて朝飯前だよ」
「そりゃそうか。で、何の用だよ」
「君の謹慎期間だけど、明日には終わるはずだ。当然反省文もない。それだけ伝えようと思ってね」
「何言ってんだ。俺の謹慎期間は一週間って……」
俺は理解した。開けっ放しにしていた部屋のドア、その先には微笑む母の姿があった。もう、手を回したのか。
「よかったね、拓斗。一日ゆっくり休んで、明後日会えるのを楽しみにしているよ」
「ああ、そうだな……」
友人はあっさりと通話を切ってしまった。タイミングを見計らい、母が俺に声を掛ける。
「拓ちゃん、夕ご飯できたわよ」
「あ、うん。今から行くよ」
俺の環境は学校以外、平和そのものだった。
しっかりと一日休み、いつものように登校した俺だったが、廊下ですれ違う先生や生徒の目はどこか蔑んでいるように見える。
「おはよう、拓斗」
いつも通りなのは友人だけだった。
「お、おはよう」
「まだ調子が優れないのかい? 別に謹慎期間でなくとも、体調が悪いなら休んでも良かったんだよ?」
「いや、そういうわけじゃ」
「そうか、分かった。普段休まないから、久しぶりに休んでしまって気まずいんだろう。その気持ちは分からなくもない、だが君は気にしなくていい、いつも通りに、ね」
「あ、ああ……」
俺は何も言葉が出なかった。俺が日常に戻ったとして、周りの反応や態度は変わらない。その中でいつも通りにしている友人が、俺は怖くて仕方がなかったのだ。
「よく平気でいられるな」
「一緒の空間にいるなんて耐えられない」
「犯罪者め」
根本的な解決はしていないみたいだ。その証拠に、俺はまだ陰口を言われ続けている。
「貝塚、もう二度とこんなことはするなよ」
「だから……いや、はい……」
先生に反論する気力もなかった。どうせ何を言っても信じてもらえないのだから。
「本当に失礼な先生だ。拓斗は何もしてないっていうのに。僕の話も通じなくてね、あの時は大変だったよ」
「担任はそういう奴だから、仕方ない」
「君は優しいね。もう君は罰を受けることはない。安心するといいよ」
「あ、ありがとう……」
そういうことじゃないんだ。確かに助けてもらったことは分かっている。友人の力がどれだけのものか詳しくは分からないが、感謝はしている。でも、傷が癒されたわけでも、心のもやもやが晴れたわけでもない。