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いさなの瞳が鋭く光る。太宰治――この名前を聞いた瞬間、彼の心の中で何かが反応した。かつてのポートマフィア幹部であり、今は武装探偵社のメンバーであるこの男の存在は、間違いなくいさなの計算外だった。

いさな:「君が太宰か…」

太宰は軽く肩をすくめ、興味深そうに笑った。

太宰:「ああ、そうだよ。君が噂に聞く“海中の死神”か、面白いね。」

いさなは一歩前に出ると、無意識のうちに足元から水が静かに広がり始める。太宰の目がその動きに反応し、少しだけ楽しげな表情を見せた。

太宰:「おや、早速異能の使い手か。だが、僕の異能に比べれば、君の能力なんて……」

いさな:「異能の強さだけが全てだと思うなよ。」

太宰はあっさりと腕を組んだまま、冷静にいさなを見つめた。

太宰:「ふふ、そうかい。だが、君はまだ若い。海中の死神として名を馳せるには、少しばかり時間が足りないようだ。」

いさなは無言で太宰を見つめ、その後冷静に答えた。

いさな:「君のような元幹部が、わざわざこんな場所に足を踏み入れる理由は一つだろう。興味があるからだ。」

太宰はその言葉に満足そうに微笑んだ。

太宰:「その通り。でも、僕は興味本位で来たわけじゃない。君の異能には、もっと深いものを感じるんだ。」

いさなは自分の周囲の水を少し強く波立たせ、空気を張り詰めさせた。

いさな:「なら、君の目の前で証明してやるよ。」

太宰の表情が瞬時に変わり、鋭さを見せる。

太宰:「それは楽しみだ。」

一瞬、二人の間に緊張が走ったが、そこに割って入るように芥川の声が響いた。

芥川:「いさな、銀が急いでいるんだ。後で話す時間はある。」

いさなはしばらく太宰を見つめた後、無言で頷き、歩き出す。

いさな:「また今度な。」

太宰は肩をすくめると、軽く手を振りながら言った。

太宰:「ああ、また会おう。でも、その時は君の異能にもっと興味を持ってみせるよ。」

いさなが去った後、太宰はゆっくりとその場に残り、しばらく黙って立ち尽くしていた。

太宰:「面白い…あの少年、いさなには隠された力がある。海中の死神にしては、あまりにも冷静すぎる。それに、彼の背後にはあの銀がいる…この街で何が起こるのか、もっと見極めなくては。」

その後、いさなは銀の元へ向かう途中、再び思案にふける。

いさな:「太宰か…。俺に興味を持つなんて、予想外だ。でもどう動こうと、俺には関係ない。俺の守るべきものは、この街だ。そして、銀だ。」

銀のもとへ向かう足取りは決して重くはないが、心の中で新たな波乱を予感している自分がいた。

痛いの嫌いな海男

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