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第一シーズン「水底の掠奪者」総集編(オリジナルストーリー付き)
横浜の夜の街が、海風とともに静寂に包まれる中、ポートマフィアの本部では新たな動きが始まっていた。
数十もの傘下団体を束ねるその組織は、以前は太宰治、芥川龍之介、そして中原中也といった有名な異能者たちによって支配されていた。しかし、今では太宰は退職し、Aは戦死。残る幹部の席も空席のままだった。その空白を埋めるために現れたのが、17歳の少年、いさなだった。
いさな――その名はすぐにポートマフィアに知れ渡り、すぐに注目の的となった。彼の異能、「海中の死神」は、ただの能力にとどまらず、その力がどこまでも脅威として感じられた。水と痛みを操り、他者を精神的にも肉体的にも支配する力。それは、すぐにポートマフィア内で「恐ろしい新人幹部」として伝説となった。
そして、彼が幹部席に名乗りを上げると、その決意が早くも試されることになった。最初の試練は、中原中也との戦いだった。空気が冷たくなる中、倉庫に広がる水の波紋がその場の緊張を一層高め、いさなは一切の容赦を見せることなく中原を圧倒した。
中原が負けを認めた後、彼の中でいさなに対する感情が複雑に絡み始めた。中原はかつて、ある秘密の任務を命じられていた。それは「海中の死神」の存在に関わるもので、いさながまだ小さな頃から周囲に噂されていた。だが、いさながポートマフィアに加わるとは予想していなかった。
「お前、まさか…」中原は自分の思考を整理しながら口を開く。
「いさな、お前が“海中の死神”であるなら、ただの力ではない。お前の背後には、俺が知っている以上に大きなものが絡んでいる。」
いさなは無言で中原を見つめる。彼の背後には、ポートマフィアの領域に深く関わる謎の人物が影を落としていた。
一方、ポートマフィアの勢力が安定する一方で、外部からの脅威も現れ始めていた。横浜の街で不正規な勢力が動き出し、数年前に倒れた大物犯罪者が暗躍を始めたのだ。
その名は「ダークセイバー」。ダークセイバーは、ポートマフィアの裏で動いている秘密結社「X」とも関わりがあるとされ、その正体を知る者はほとんどいない。だが、その動きは確実にポートマフィアを脅かしている。
いさなは、この新たな脅威について情報を集めていた。ある晩、彼はポートマフィアのアジトを抜け出し、街の隠れ家にて密会を持つことになる。
いさなの心の中には、守るべき存在があった。それは銀――ポートマフィアの元幹部であり、いさなの恋人である。銀がいさなに与えた言葉は深く心に刻まれており、いさなは彼を守るため、そして横浜の平穏を守るために動き続けていた。
ある晩、いさなが銀と会うために出かけた先で、新たな人物が現れる。それは、かつてポートマフィアに所属していた異能者で、今は「ダークセイバー」と呼ばれる勢力に属している者だった。
その名はレオン。レオンは、いさなにとって予想外の人物であり、かつての仲間であった。しかし、裏切り者としてポートマフィアを去った過去があり、今では新たな力を得てポートマフィアを脅かす立場に立っていた。
「いさな、君はまだ若い。それに、君の守るべきものもわかっていない。」レオンは冷笑を浮かべながら言う。
「お前が何を言いたいのかはわからないが、俺はもう迷わない。」いさなの目は鋭く、決して後退しなかった。
レオンといさなの間に新たな戦いの予兆が生まれつつあった。
そして、いさなの物語に新たな人物が絡み始める。太宰治――元ポートマフィア幹部であり、現在は武装探偵社に所属している彼は、いさなの力に強い興味を示していた。
太宰は、いさなが「海中の死神」としての名を馳せる背後に潜む真実を知っている。いさなには、ただの力だけではない、何か深い秘密があると感じ取っていた。彼の異能が単なる物理的な支配ではなく、精神的な力にも関わると感じ取ったのだ。
「君の力は、ただの水の操り手ではない。君の痛みの支配は、人間の限界を超えている。…それがどういうことか、僕は理解したい。」太宰はその言葉を軽く告げる。
いさなはその言葉に反応することなく、ただ冷徹に太宰を見つめる。「君が何を考えていようと、俺には関係ない。ただ、俺はこの街を守りたい。それだけだ。」
太宰はしばらく黙っていさなを見つめてから、ゆっくりと微笑む。「面白い。君のような少年が、どこまで突き進むのか、見届けさせてもらおう。」
いさなはポートマフィアに新たな風を吹き込んだ。しかし、彼の存在が明らかになるにつれ、いさなを試すような出来事が次々と起こり始める。裏切り者、潜む脅威、そして複雑に絡み合う人間関係。それぞれがいさなの試練となり、横浜の街はますます騒乱の色を濃くしていった。
いさなは心に誓っていた。自分が守るべきもの、愛する者、そして自分の信念。それらを守るため、彼は何も恐れない。
だが、彼の前に立ちふさがる者たちもまた、彼にとっては避けて通れない試練となるだろう。
この街で何が起きるのか――その答えは、いさな自身の手に託された。
スピンオフ
横浜の青空が広がる、穏やかな昼下がり。ポートマフィアの幹部と探偵社たちがいつもとはちょっと違った雰囲気で、街の賑やかな商店街を歩いていた。今日は、珍しくみんなでショッピングに出かける日だ。
いさなは、カジュアルな服装で笑顔を浮かべながら歩いていた。隣には銀、彼女のいつもの冷静な表情に、今日は少しリラックスした様子が見える。
「いさな、あれ、どう思う?」銀が指さしたのは、並んだアクセサリーのコーナー。金色のペンダントが光を受けてきらきらと輝いていた。
「うーん、可愛いけど、派手すぎるのもな。」いさなは少し考え込んでから答える。「でも、銀には似合いそうだよ。」
「派手なのは好きじゃないけど、少しだけ…」銀はちょっと照れたように言って、ペンダントを手に取った。「買ってみようかな。」
その後ろでは、中原中也と太宰治が小さな口論を繰り広げていた。
「中也、これ、どう見ても君に似合わないだろ。」太宰が手に取ったTシャツを、嫌そうに見て言った。
「うるさいな、太宰。俺は気に入ったんだ。」中也は少し顔をしかめながらも、しっかりとTシャツを握りしめた。
「君がそれを着るなら、私は逆に着たくなくなるな。」太宰は面倒くさそうに肩をすくめながら言ったが、その目はどこか楽しそうだった。
いさなと銀は二人のやり取りに笑いながら通り過ぎ、次に向かうのは雑貨店だ。店内には色とりどりのアイテムが並び、すぐに目を引くものがいくつもあった。
「これ、どう?」いさなが指さしたのは、小さなクマの形をしたぬいぐるみ。
「それ、可愛いけど、どこに飾るの?」銀は困ったように言った。
「飾らなくても、家で抱きしめるのも悪くないじゃないか。」いさなは笑いながら言い、そのままぬいぐるみを手に取った。
その時、後ろから声がかかった。「ぬいぐるみを抱くんだ…今度はお前があの冷徹な雰囲気を消してしまうのか?」
振り返ると、そこにいたのは中原と太宰だ。二人ともすっかり楽しげな様子で、買い物に興奮している。
「気にするな。こういう小さな楽しみも悪くない。」いさなはぬいぐるみを抱えながら言った。
「それより、みんなでお昼にしようか。」銀が提案すると、みんなが頷いた。
その後、みんなで近くのカフェに向かう。テラス席に座り、冷たいドリンクを片手に、のんびりとしたひとときを楽しんだ。
「やっぱり、こういうのがいいな。」中也が少し目を細めて言った。
「毎日の仕事に追われてばかりだったからな。」太宰も同意する。「たまにはこうして、何も考えずに過ごすのも大切だ。」
「たまにはこういう時間も悪くないよね。」いさなはぬいぐるみを膝の上に乗せて、満足げに言った。「日常が平和で、みんなでいるだけで楽しい。」
「その通り。」銀が微笑んだ。「これからも、こういう時間が続いていけばいいね。」
そして、みんなはしばらく、静かな午後を楽しんだ。空の青さが、心地よく、ぽかぽかと陽気に包まれていた。今日は、ポートマフィアの仲間たちにとって、何もかもが平和で穏やかな日常だった。
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