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加藤あいさ
21
哀 川 せ せ ら .
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ねむ
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引っ掻き傷の壁には血の跡があり、爪が剥がれてもその壁を引っ掻き続けていた事が見て取れた。
引っ掻き傷で書かれた文字の羅列。
「ムスコがヒトヲ ヒトヲコロシテ チカ シタイダラケ ワタシのセイ ゴメンなさい ユルシテ サイ コロサレルコロサレル」
美虹「不気味ね…。精神的に追いやられてるわ」
壁に書かれている引っ掻き傷の文字。その不気味さに美虹は恐怖し、冷や汗をかいてそう呟いていた。
美虹「日記だわ」
引っ掻き傷の壁の近くに黒色の日記帳があった。美虹はそれを拾って中身を見てみると、和水始と思われる手記があった。
『今日は妻と結婚して一年。何を送ろうかと悩む。妻ならなんでも喜びそうだ。安い物を与えても嬉しそうに笑ってくれる。お店が開店したばかりで客は全然入ってこないし、今年も赤字だ。だが、妻が支えてくれるから、もっと頑張ってみよう』
数年後
『今日はめでたい日だ。息子が産まれた。物凄く愛らしい。元気で健やかに育ってくれ』
数年後
『妹が産まれた。息子と同じくらいに嬉しい。経営も波に乗って来たし、この調子で頑張りたい』
数年後
『息子が彼女を連れてきた。随分綺麗な子だ。妻と同じくらいに聡明そうな子だ。結婚式代は幾らだろうか?』
二年後
『妻が行方不明になった。三日経っても帰ってこないし、警察に捜索願いは出した。何処にいるんだ妻は…。それにしても、何処からか腐った匂いがする。この前妻も言っていて、「確認してくる」と言ったきり姿を見ていない』
半年後
『妻の遺体が山で見つかった。どうして妻が殺されなければいけないのか…。寮生活の藍愛と一緒に住んでいる路郎が妻の葬式に出てくれた』
数日後
『息子に地下の部屋を自分の部屋にしたい…とお願いされた。私が昔、本を読むのに使っていた地下の部屋。回転ドアで坂を降りたところにあるあの部屋。ナゴミヤ旅館を経営してから行かなくなったから、息子が使ってくれるなら丁度いい。それにしても、まだ腐った臭いがする。リビングの隣の部屋からかと思ったが、そんな腐った物はない』
四ヶ月後
『藍愛が行方不明になった…!!妻が行方不明になって死体になって帰ってきた…!!藍愛は無事で見つかると良いが…』
日記はここで終わっている。
快晴:なるほど
快晴:妹さんが行方不明になって、何らかの状況の時にあの地下に行って、あの死体塗れの部屋を見たんやな
快晴:そんで、息子さんが人を殺しとるってわかって、「息子に殺された人達への罪悪感」と「次は自分が殺されると言う恐怖」で自殺に追い込まれたんやな
美虹「……。始さんは、被害者ね」
風太「でも信じられへんなぁ。俺が見とったオーナーさん、結構人格者やったで」
快晴:人の腹の中まではわからへんからな
美虹「ん?このパソコンは…」
風太「オーナーさんの何かなん?」
美虹「ん?んー…お?コレは…。電波阻害システム?」
美虹はパソコンを操作して、解除をしようとした。
美虹「パスワードかぁ…」
パソコン画面に映されたのはパスワード。
美虹は頭を抱えて、路郎に関するパスワードを考えるが、全く思い浮かばない。
風太「オーナーさんパスワードのこと何も言うてへんかったやん!!」
快晴「(言うわけないやろアホかお前)」
快晴が内心風太を毒づいてから、ナゴミヤ旅館のオーナー、路郎の事を考えた。
美虹「ダメだ。オーナーさんの名前じゃない…。家族の名前を適当に…!!」
美虹はパスワードを適当に打ち込む。だがどれもハズレで解除出来なかった。
美虹「これさえ解れば別館で警察に通報出来るのに…!!」
そう愚痴りながらパスワードを前に唸っていると、『ピコンッ!!』とスマホから音がした。
美虹は画面を見てみると、快晴からのトークメールだった。
快晴:そのパスワードは放っときましょう
快晴:この別館から警察に通報出来ないモノなら、別館から出たらええだけの話です
快晴:旅館は電波通ってたハズなんで
美虹「あ…」
快晴からのメールを見て、美虹は納得して小さく声を零した。
そのあと立ち上がって、風太と抱えられている快晴を連れて別館の出入口へ向かった。
快晴「(別館のドア蹴破られとる)」
鍵がかかっていた別館の扉。
風太が起きた時に、扉が蹴破られたと考えた快晴は顔全体に巻かれた包帯の下で冷や汗をかき、呆れた顔をしていた。
美虹「出られたわ!!」
風太「おん!!」
快晴「……」
美虹「早く警察に通路しなきゃ!!」
美虹はスマホを取り出し、警察に通報する。
警察『こちら〇〇警察です』
美虹「通じたぁぁ!!」
警察に通報出来たので、美虹は歓喜の声あげ、和水路郎が起こした一連の事件を事細かく説明した。
~~~~
路郎「……」
風太に顔面を入れられて気絶している路郎が目を覚ました。
路郎「(やれやれ、轟雷様に投与する睡眠薬の量を間違えたな)」
路郎はそう思いながら、地下から出て、坂を登り回転式扉から出た。
そして、羽目殺しにしている透明な窓ガラスから、赤ランプを点滅させて走ってくる一台の白黒車。
路郎「(警察か。雨戸様達が通報したのか?)」
美虹が通報してやってきた警察と推測した路郎。だが焦った様子は全くなかったが、少し苛立たしげに顔を歪ませた。
路郎「(僕が捕まったら…。二度とこの生活は出来ないだろうな。そうなったら、女の人を永遠に綺麗にしてあげる事が出来ない。そんなの可哀想だ)」
溜め息をついて胸中そう思っていると、彼は懐からスマホを出して、何度かタップした。
路郎「それに、僕が捕まったら…。ナゴミヤ旅館は経営できないな」
路郎がそうボヤくと、ナコミヤ旅館と別館の壁が爆発し、別館の全館内、路郎本人が一気に炎に包まれる。
路郎「ナゴミヤ旅館は、これより閉店でございます」
炎に包まれながら路郎は端正な顔で微笑み、穏やかな声色でそう言った。