第三話
”皆でお泊まり会!”(前)
ビーッビーッという音が玄関から鳴ったため「はーい」と声を掛けながら早歩きで扉の方へと向かう。
「いらっしゃーい」
「邪魔するぞ」
「トランプ持ってきたからジジ抜きやろうぜー」
「なぜジジ抜き、普通ババ抜きじゃね?」
「お菓子とかジュースとか色々持ってきたぞ!」
一気にオンボロ寮はガヤガヤとした雰囲気になり、その声に釣られてゴースト達とグリムがやって来た。
「お客さんかい?」
「宿泊客だよ」
「皆いらっしゃい」
「よく来たな!」
揃うことの無い足音を耳で拾いながら談話室へと歩く。するとなにかに気づいたのかジャックがスンスンと鼻を鳴らした。
「なんかいい匂いがするな」
「お、ジャック氏もう気がついたでござるか」
「なぜイデア先輩」
「ふっふっふー、皆さん前に言った通り夜食は抜いてきましたよね」
「抜いてきたぞ」
「僕も」
「俺もー、だから腹が空いてんだよなぁ」
「んじゃ、皆で飯食うか〜」
ユウはドヤ顔で親指を立てた。
「え!監督生ってその体で飯作れんの!?」
「絞めんぞエース・バカッポラ」
「あれ、なんか後ろにフロイド先輩が見えるような…気のせいか?」
「いや、俺にも見える」
「はぁー…ちゃんと俺が作ったぞ」
「器用だな」
「まぁ、俺は自炊派だから自然とこの体で料理してたらビックリするほど慣れたよ」
◇◆◇◆
「それじゃ先に席に着いてて」と言えば各々荷物を固め席に座る。
「お手伝いしてくれるゴーストさん達とグリム募集中ー 」
監督生1つの呼び掛けでゴースト全員とグリムがキッチンの方へと向かった。
◇◆◇◆
やがてゴースト達とグリムが料理を何品か手に持ちながら戻って来た。新品のようなテーブルの上に料理がズラズラと並ぶ。
「…これを本当に監督生が作ったのか?」
「あぁ、手の空いているグリム達にも手伝ってもらったりしたけどほぼほぼ俺が作ったんだ。」
「すげぇな!」
「よくこんなに作れたな」
「まぁねー」
テーブルの上には見たことの無い料理が並んでいる。どうやらこの料理達は監督生の世界の食べ物らしい。
「なぁなぁ監督生!これはなんだ?」
「それは味噌汁だね」
「これは?」
「それはサバの塩焼き」
「この黄色い塊はなんだ?」
「それは玉子焼きだ」
「卵!?卵を使ってこれを作ったのか!?」
「おう、俺の世界ではこういうのを和食と言うんだ」
へぇー!とエーデュースは目をキラキラと輝かせている。可愛い。
「まぁまぁ、とりあえず食べてみなよ。はーい皆さん手を合わせてください」
3人は頭に?を浮かべているがグリムは両前足にある肉球同士をムニッと合わせた。それにつられて3人も同じように手を合わせる。
「それでは私の言葉に続いてください。いただきます!」
「「「「いただきます(なんだゾ)」」」」
「なぁ監督生、もう食っていいのか?」
「うん!じゃんじゃん食べちゃって!さっきの言葉は俺の世界での飯を食べる前の儀式?みたいなものなんだ」
「へぇ〜、どんな意味なんだ?」
「命に感謝って意味なんだよ」
「ふーん、監督生のいる世界は不思議だな」
「そうか?まぁ、今は飯が冷める前に食べようぜ」
「そうだゾ!俺様子分の手伝いをしたからクタクタなんだゾ…」
「ふふっ、手伝ってくれてありがとうな、そんな子にはツナサンド弁当を作ってあげような〜」
「やったーなんだゾ!!」
「よかったなグリム」
「んん!この玉子焼きうまいぞ監督生!」
「お、デュースが食ったのは醤油入りの玉子焼きだな」
「ん?その言い方だと他にも味があるように聞こえるんだが…」
「その通り!じゃあジャック。その玉子焼きを食べてみてくれ」
「おう」
ジャックがテーブルの中央にある玉子焼きをフォークで刺して口の中へ運ぶ。
「さ、何味が当たったかなぁ〜」
「んむ…んん?!」
「お!チーズか!」
「すげぇ!伸びてる!」
ジャックが引いたのはスライスチーズが挟まれた玉子焼きだ。サムさんのところほんとになんでも売ってるな。
「ん!うまいぞ監督生!」
「それはよかった」
「じゃあ俺も運試しといくか!」
「あ、運試しと言えばさ、玉子焼きの中には唐辛子ソースが塗りこんでるやつがあるから気をつけてn」
「うっっわ!!ゲホッゲホッ!辛っ!!」
「既に手遅れだったわ」
そうして食事の時間は過ぎていき、自由時間となった。
◇◆◇◆
グリムはお腹がいっぱいになったことでソファの上で寝始め、監督生達はこれからだと言わんばかりに騒ぎ出す。
「さぁ、ジャック!覚悟しろー!!」
「おう」
モフっとした触り心地。優しく触れているだけで十分に体温が手に伝わってくる。
「あー…ふあふあだぁぁぁ…!んーお日様の匂いがするー…」
「あんま匂いを嗅ぐんじゃねぇよ」
「あ!ジャックの耳がピコって動いた!可愛い〜」
「俺は可愛くねぇよ!!」
「…洋梨のコンポートか洋梨のコンポートタルト。どっちをご所望?」
「…どっちもっつったら怒るか?」
「う”あ”ぁ”ぁ”ぁ”耳ペショは反則ぅボーテ!100点!!いいよ!!!」
「今度は監督生にルーク先輩が宿ったな」
「皆で洋梨を食べようそうしよう。もう洋梨民になろう」
「なんだ洋梨民て」
「どう?どう?」
「…悪くねぇ」
「もうそんなこと言って尻尾は正直者だよ」
「…んまい」
「よかったー!また作ってあげるね!」
「タルトの上に生クリームが塗ってあるんだな!」
「お!気づいた?そうだよ!洋梨のコンポートタルト。結構練習して慣れてきた頃にアレンジを加えてみたんだ! 」
「ほんとに監督生って器用だよな〜」
「ふふ、ありがとエース。今度はセベクとエペル、オルトも呼んで1年生パーティーでもしようか!」
「いいなそれ!」
「あ、最後の1ピース。誰か最後の1ピース 食べたい人いる? 」
「「「俺(僕)が」」」
「「「あ”?」」」
「あはは、そっかー皆食べたいのかーでも威嚇し合うのはやめてねー?喧嘩勃発したら寮が本格的に廃墟になっちゃう」
「んー…あ、じゃあさ…」
To Be Continued…
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