テラーノベル
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二人が誰かに追われている。
「待てー!このチビのガキんちょ!」
「…私はチビでも男でもねー! イメージ!」
「アルレイド!…っもう!」
「銀行行けた!」
アリシールがスキップをしながら建物から出てきた。
「良かったな。」
アルレイドは貝殻形のランタンを見ながら言った。
「アルレイドも食費気にしてたでしょ?これで問題解決だよ!」
「そうだな。次どこ行く?」
アルレイドは、道に迷わず銀行に着いたことに関して、特に何とも思っていないらしい。
「どこか行く前に、どこで寝るかでしょ!」
アリシールはアルレイドの腕を引っ張っりながら言った。
「今日は私が魔法で作るね。」
アリシールは人目につかない森にテントを作った。小屋は目立つかもしれない。と言う配慮だ。
「ふわー、良く寝た。」
アルレイドが目を覚ました。陽はもうすっかり登っている。
「アリシール、ちゃんと起こしてくれよ…」
そこでアルレイドは異変に気付いた。
「アリシール…?どこだ!」
テントの近くを探したが、アリシールはどこにもいない。
「ウソ…だろ…?」
アルレイドは青ざめていたが、しばらくしてテントの中にカードがあることに気付いた。
「魔女狩りのマーク…」
アルレイドの中に怒りが込み上げてきた。
「私も魔女とわかっておいて、アリシールだけ連れてったってことかよ!あいつらめ!」
「ここは…?」
アリシールが目を覚ました。どうやら船の倉庫らしい。
「起きたか、創造の魔女さん。オレはガレット。君はアリシールの方だったかな。」
ガレットと名乗る男性が、アリシールを見下ろした。
「私をどうする気?貴方たち、魔女狩りでしょ?」
「気付くのが早いね。君とそのお供は一緒にあの世行きだよ。」
ガレットは不気味に笑った。
「それはどうかな…? …お願い…コール!」
アリシールが床に手をついて叫んだ。辺りが白く光る。“ イメージ ”とは違う呪文らしい。
「ハハハ、君たちを侮っていたよ。」
アリシールの目の前には、アルレイドが立っていた。
「良かった!アリシール!ちゃんとこの魔法使えたんだな!」
アリシールは、“ イメージ ”以外の魔法もある程度使えた。あくまで、ある程度だが。
「アルレイド、正面向いてもらえる?」
アリシールに言われ、アルレイドは本題を思い出した。
「アリシール!逃げろ!私が何とかするから!」
アルレイドはそう言って、アリシールを先に逃がした。
「愚かだね、君も。オレがそんなバカに見えるかい?」
アリシールを追って、一人が出てきた。
「いや?…そんじゃまた!」
そう言って、アルレイドも逃げた。アルレイドにも追っ手が来た。
「待てー!このチビのガキんちょ!」
アルレイドの追っ手が叫んだ。
「…私はチビでも男でもねー! イメージ!」
アルレイドは怒りながら、あの金色でひし形の杖を作った。しかし、ひし形の部分が鋭い刃のようになっている。
「その言葉、訂正させてやる!」
アルレイドが杖を振り回しながら走っていった。アルレイドと追っ手の立場が逆転している。
「アルレイド!…っもう!」
前の方を走っていたアリシールだが、アルレイドが暴れ出したため、どうにか止める方法を考えた。
「それではさよなら! イメージ!」
アリシールは倉庫の壁に手を触れて唱えた。辺りが一瞬白く光り、アリシールと追っ手の間に高い壁ができた。
「待てー!堂々と闘えー!」
すると、ちょうどそこにアルレイドとその追っ手が走って来た。
「イメージ!」
倉庫の上に登ったアリシールは、屋根に手をついてもう一度唱えた。
「追い込み漁方式、なんちゃって。」
アリシールが作った壁と壁の間に、二人の追っ手が捕まえられた。
「アリシール!私を追ってきた奴をコテンパンにしてやれ!」
アルレイドはまだ怒っている。
「いや、そんなことしなくていいよ。長いハシゴが二つ無いと、ここからは出られないから。」
アリシールは倉庫から降りて言った。
「えー…」
アルレイドは、魔女狩りを許すようでイヤらしい。
「ハハハ、すごいものを見せてもらったよ。」
いつの間にか、先ほどまでアリシールが立っていた倉庫の上に、ガレットが立っていた。
「…んの野郎!降りて来い!」
アルレイドが叫ぶと、ガレットは大きな声を上げて笑った。
「流石アルレイド。男のフリをしている奴だ。」
「だ・か・ら!私は男じゃねーって言ってんだろ!」
「だからフリと言ったのだ。」
ガレットは、わざとアルレイドを怒らせているようだ。
「降りて来ないなら、無理やり降ろすまでだ!」
そう言うが早いか、アルレイドは倉庫の屋根に登った。アルレイドの身体能力は並外れているため、身のこなしは軽い。
「アリシール!こいつの事以外を何とかしてくれ!」
アルレイドはそう言って、ガレットに杖を振り下ろした。
「丸投げじゃん!」
そう言いながら、アリシールは倉庫の屋根に登った。アルレイドほど登るのは速くない。
「アルレイド!避けて! イメージ!」
アリシールは、緩やかな三角になっている屋根のてっぺんから、無数の大きな箱を落としていった。もちろん逃げ場など無く、ガレットは箱に押されて屋根を滑り落ちていった。
「追い込み漁方式、その二!」
アリシールは得意そうに言った。さっきの追っ手たちと同じところにガレットを落としたのだ。
「ちょっと!危ないじゃねーか!」
アルレイドは、迫りくる箱を全て避けていた。
「身体能力オバケのアルレイドなら、全部避けられると思って。」
そう言って、アリシールは地面に降りた。
「さてと、その中で反省してもらおうか!」
アルレイドも地面に降りた。箱はすぐに魔法で消したため、自力で登ることはほとんどできない。
「あー、腹減った。」
昨日から何も食べていない二人は腹ペコだった。
「じゃあ、テントに戻ってお昼ごはんだね。」
そう言って、二人はその場を離れた。
コメント
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とても面白いです!!とても読みやすいし設定も分かりやすく本当に好きです。続きがとても楽しみです!!