「きもちい……けど、ヤだ……」
「ん? 何が嫌なの?」
いくせぇ……、と有夏の両腕が男の頭を抱きしめる。
「さわって。いくせ……」
はやくはやくと、うわ言のように熱く繰り返す。
ゴクリと幾ヶ瀬の喉が鳴った。
「……どこ触ってほしいの? 前触るか、後ろに挿れるか……有夏が選んで」
「んん……っ」
泣き声のような呻きをもらして、有夏は両手の平で自分の目元を覆った。
震える唇が「意地悪だ」と動く。
声にならない。
「ね、有夏……どっち? どっちでも有夏が選んでいいよ。ね、ありか……」
「ヤだよ。選べないっ。どっちも……んあっ!」
両方の乳首を指でキュッとつままれ、有夏は嬌声をあげた。
「どっちもは駄目だよ。我が儘だね、有夏は。ほら、選んでよ。それともずっとこのままでいいの?」
「ヤ、だ……!」
まえ? と幾ヶ瀬が囁く。
「んんっ……」
呻いたまま有夏は首を振った。
「じゃ、うしろ?」
こくりと小さく頷いたのを合図に、幾瀬は自身のパンツと下着を同時にずりおろした。
人のことは言えない。
張り裂けそうに固く屹立したそれは、先端からもうタラリと汁を垂らしていた。
「前より後ろの方がいいんだね、有夏。前って言ったら口でしてあげようと思ってたのに。後ろに挿れてもらう方がいいんだ、ふぅん……」
熱い息と共に呟きながら、有夏の短パンと下着をはぎ取る。
ひくひくと蠢く入口に、幾ヶ瀬は自身の先端を当てがった。
「はやく……ぅっ」
有夏が腰をくねらせてねだる様に、幾ヶ瀬の目元に赤みが差す。
「駄目だよ、有夏。いきなり挿れても有夏が痛いんだよ? いいの、痛くて? 俺だったら痛くしていいの?」
「ヤだヤだ。はやくぅ……、早くシて。はやく挿れて……っ」
「ありか……」
ありかありか……何度もその名を繰り返す。
そのたびに溢れ出る白濁液を彼の穴に零し、自身の先端を擦りつけるようにして塗り付ける。
「んん……っ」
幾ヶ瀬は先をゆっくり差し入れては引き戻し、有夏の内部を湿らせていく。
何度目かの動きで亀頭部分がズルリと内部へ入った。
「ああっ、ありかっ」
今度の叫びは幾ヶ瀬のものだ。
有夏の穴が数秒かけてゆっくりと、幾ヶ瀬のソレを呑み込むように奥へ引きずり込んだのだ。
「いくせぇ……」
開いた膝を震わせて、有夏がよがる。
幾ヶ瀬のソレは、根元までぎっちりと彼のナカ。
「ありかっ、うぅっ……きつっ」
グネグネと蠢くように有夏の内部は幾ヶ瀬のものを包み、締め上げる。
力を奪われたように幾ヶ瀬は腰を震わせた。
「おく……もっと奥ぅ」
有夏の身体がうねって小刻みに前後する。
その動きにつられるように、幾ヶ瀬も腰を大きく動かした。
「ありか、声……おっきい。隣にきこえるよ……」
そう、彼らが思っている以上に壁は薄いのだ。
「聞こえてもいいからっ。ああっ、イク……せっ」
幾ヶ瀬が奥を突くたびにあがるよがり声。
「んあっ、イク、せっ……イク……」
幾ヶ瀬の両手が有夏の頬を包んだ。
「イクって言ってるの? それとも俺の名前呼んでるの?」
濡れた双眸が幾ヶ瀬を睨む。
もっと言って。
もっと意地悪言って……そう訴えているかのよう。
「イッ……ああっ」
有夏の身体がビクリと跳ね、とろりとした白い液体が互いの腹を汚した。
同時に幾ヶ瀬の腰も震える。
ブルっと痙攣するそれは、未だ有夏の内部にいる。
「……熱っつい」
「んっ、有夏? どした? エアコン……?」
「じゃなくて。ナカ、熱くて……。幾ヶ瀬の、まだ……ん? また中で出して? なに、エアコン?」
震える声。
何を言っているのか自分でもよく分かっていないのだろう。
「そだ、エアコン……温度、戻せよ」
「ん、もう寒いの? ナカが熱いって言ってたじゃない。ねぇ、温度変えるならリモコン……あっちなんだけど。抜かなきゃ取りにいけない。いいの? 抜いても」
力を失ったソレはまだ有夏の内部でズルズル蠢いている。
射精した液に押し流されるようにゆっくりと身体の外に出るのを自然に待つのが、二人の事後の過ごし方だ。
「行っちゃヤ、だ」
自らの精液の雫で顔を汚した有夏の頬を、額を愛おしそうに撫で、幾ヶ瀬は彼の身体に体重を乗せた。
「寒かったら俺があっためるから。またする? 熱くなれるよ」
有夏が微かに笑う。
バカが──唇だけが動く。もう声は出なかった。
「設定温度18℃にしていそしむこと」完
「隣りのアタシはクソビッチ!?」につづく