テラーノベル
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黒樹の森は、昼なお暗く、三人の足音だけがやけに響いていた。 時折“黒い胞子”が漂い、不気味な静寂が森を満たす。
ゆっくり進むうち、リバが口を開いた。
「モルグ様……さっきから、何かお悩みですか?」
「いや、別に。ただ……ふと頭の奥で“知らない風景”を思い出すんだ」
「知らない風景?」
モルグは立ち止まり、ふいに言葉を継ぐ。
「ごく普通の……不思議な“建物”、明るい街、みんな“小さな四角い板”を触ってる――。 俺にはどこか、懐かしい気がするんだ。だけどこの世界にはないはずだろ?」
リバもザラもきょとんとする。
「もしかして、どこか遠い国の記憶ですか?」 「それとも前世ってヤツじゃないのか?」
「分からない……でも、俺がこの世界に生まれてきた理由が隠れているような気がしてならない」
三人は森の奥で、崩れた遺跡の前にたどり着く。
その石碑には、またしても前回と同じ“見覚えのない言葉”の刻印。
リバはハッとした顔でつぶやく。
「……やっぱり、私の家紋にそっくりです」
ザラはじっと菌糸をかき分けながら言った。
「オレも族の紋章と似てる所がある。何なんだよ、この森……」
モルグは、ふと自分の“腕の模様”が石碑の一部にぴたりと重なるのを見つける。
「……これ、まるで“鍵穴”みたいだな」
何気なく手を合わせてみると、痺れるような感覚とともに、
頭の中にフラッシュバックが走る。
■“前の世界”——
制服姿の少年。
ありふれた毎日。
守れなかった誰かの涙——。
「っ……!」
気づけば、リバとザラが心配げに俺を見つめている。
「大丈夫か、モルグ?」 「顔色が悪いぞ。何か見えたのか?」
「いや、大丈夫……だと思う」
「けど、やっぱり思うんだ。この森の封印や紋章、“俺たち三人”がここに集まったのも、偶然じゃない。 何かの“役割”――あるいは使命があるんじゃないかって」
ザラ「運命、かよ。けっこう好きな言葉だな」
リバ「……なら、どんな真実でも、モルグ様となら受け入れます」
三人は互いにうなずき、再び遺跡の奥へ――。
■シーン転換 ――古の遺跡、謎の観測者たち
「兆しが見えた。鍵が呼び覚まされた」 「異世界の“魂”が、この世界の因果に接触した。その先に何が待つか……面白いな」
■ラスト、夜の野営地
焚き火の前で、モルグは小さな声で独白する。
「……いつか、この世界を離れても。“誰か”として生き直せたら……きっと、その時は幸せに——」
リバは眠りにつきながら、そっとモルグのキノコ頭に手を添える。
「……モルグ様、あなたが誰であろうと、私は共にいます」
見上げた夜空に、見覚えのない星座がかすかに輝いていた。
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