テラーノベル
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語り手:アル
駅前を歩いていたら、路上パフォーマンスしている人が居て、思わず見入っちゃったんだよね。トランプとか大道芸とか、あんまり詳しくないけど他の人とは一線を引く感じ。ある程度終わったら皆にお金を貰うと思うけどその人は少し違って、チケットをプレゼントしてたんだ。今度大きなパフォーマンスをするから是非来てねって宣伝だったの。実際手数も多くてクオリティも高くて、私も貰おうとしたけど私1人だけで行くのもどうかと思って、兄弟の分もくれないか聞いたの。正直無茶だとは思うけど。私の話を聞いたその人は少し考えて、「君は優しい子だね。特別にこっちのQRコードをあげよう」って紙を渡された。会場に来なくても観戦出来るように一部の人に配ってるんだって。観戦って、少し危険な事をするのかなって思ったけど、開催日になってその意味を理解した。
デスゲームをやったんだ。あの人は主催者兼案内人役。参加者の中にはあの日チケットを貰った人がいた。ヤラセとかじゃない、本当の血が溢れて、老若男女問わず色んな悲鳴が聞こえて、見ているのですら怖くて辛かった。気分が悪くなって、音量は消せても配信は止めれなくて、仕方ないからその場を離れたの。落ち着いて、あれ?って少し思った。
もしもあの場でチケットを貰っていたら、それを持って会場に行っていたら、私はどうなってたんだろうって。
語り手:アカリ
数年前にネットで「黒い羽」って流行ったじゃん。黒い羽が空から落ちた地点で誰かが死ぬってやつ。羽が落ちたとこの頭上を見ても、鳥はいないんだって。
で、本題に入るけど。放課後に校庭をぼーっと歩いていた時、ふと学校の屋上に行ってみたくなったんだ。なんでかは覚えてないし、屋上への扉は鍵がかかってるから行けないんだよね。…普段なら。先生やクラスメイトにバレないように音を立てずゆっくりと登って、扉に手をかけるとすんなりと開いた。普段使われないとは思えないほどスムーズに。不思議だなと思いながら屋上へ足を進めた。
今でも信じられないけど、天使がそこにいたんだ。黒い羽に、灰の髪。風に靡いてた姿は、まるでアニメのワンシーンみたいでさ。ふと天使が振り返った。目は白目と瞳孔もわからないくらい真っ黒だった。数秒目があった後、天使はため息をつくように疲れた顔で私に問いかけた。
「止める?死にたい?」
特に意味も考えずに「止めない。死なない」と答えると、「そう」と天使はフェンスに手をかけて、そのままゆっくり落下していった。どれだけ待っても落下音も人の騒ぐ音も聞こえないから、ゆっくりと見下ろしたら、何もなかった。あ、ちょっと違うかも。正確には黒い羽が落ちてたんだ。天使に生えてたやつに似ていた。飛び立ったのかなって勝手に納得して帰ったよ。
次の日、天使と全く同じ方法、同じ時間で生徒が飛び降りた。
語り手:ソラ
やたらと影踏みをしたがる友人がいた。必ずその人の影を見てから誘うようにしていて、自身が鬼じゃなければ鬼の影を最後にさりげなく踏んでいた。僕は一度もその友人に呼ばれなかったから窓から眺めるだけだったけど、毎日の様にそんなことが起きるから流石に気になって聞いたんだ。
「たまに、影がうねうねするんだ。僕が踏むとうねうねは消える。僕以外が踏むとその人のとこへ異動する。だから影踏みして僕が消すんだ」
自分の影を見つめながら話す友人につられて、僕も影を見た。動いているようには見えない。どちらかというと僕には友人の影の方が薄気味悪く感じた。早く行こうと走り出す彼の影は、触手みたいに大きくうごめいていた。
翌日から、友人はいなくなった。死んだわけでも休んだわけでも転校したわけでもない。彼の存在自体が消えたんだ。出席番号も机も皆の記憶にも彼はいなかった。誰も影踏みをやらなくなった。
オカルト本に書いてあったけど影を踏むと生命力が少し消えるんだって。消えた生命力はどこに行って、それを集める事が出来たら、どうなるんだろうね。
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