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その日のゲームの後、ノートンはいつも通り浴場に向かっていた。
脱衣所でゲームで散々汚れた衣服を脱ぎ捨て洗濯機に放り込み、足早に大浴場に向かう。誰かが忘れていったのか、籠の中に腕時計がぽつんと置かれていた。時刻はきっかり午後6時。
浴場のガラス戸をスライドし、そこに見慣れない人影を見る。栗色のくせ毛に宝石を嵌め込んだような青の双眸、特徴的な刺青。薄い筋肉の覆う身体は不健康なほど青白い。しばらく彼を見つめていると、
「やあ、ノートンくん、お疲れ様。試合、観てたよ。」
✳︎かれ は いらい だ!
頭の中で幾度もその声、言葉が再生される。
「…イライさん、試合観てたんだ? 72秒しか牽制できてなかったから恥ずかしいな…」
「いや、ナイスチェイスだったよ!」
そう言ってはにかむ彼の顔は何よりも美しく尊く愛らしく守るべきものだ。
「隣、いいかな…?」
勇気を出して尋ねてみる。
彼はキョトンとした顔をして頷いた。優しいすき。
ふらふらとした足取りで彼の隣に腰掛ける。夢見心地だ……
「イライさんが大浴場にいるなんて珍しいね。」
できる限りポーカーフェイスを維持してそれとなく聞く。それでも少し声が裏返ってしまったが、彼は特に気にしていないようだ。
「あぁ、ウッズさん達に勧められてね。広くてあまり人がいないから心が安らぐね。たまにはこういうのもいい。」
「そ、そう…」
ウッズさん達ありがとう。今俺は幸せです。
「それに君とも会えたし、ね?」
は??
俺の何かが爆散した。そう、あの採掘場のように。ウッ頭が。
逬る想いに身を任せて!!勢いよく彼の両肩を掴み、正面から凝視する。そう、まるでハスターのように。
「え、えっと、何かな…?」
「すきです!」
「ごめんなさい。」
〜BAD END〜
✳︎次はもうちょと相手を思いやろう!!
そんな乙女ゲーのような声が脳内に響いて、意識が遠くなる。
意識は再び浮上する。するとそこは脱衣所だった。混乱。状況が掴めない。何が起こった?
さっきまで確かに(イライと)湯に浸かっていたはず…そして、無事玉砕した、はず………
ふと、思い出して忘れ物の時計に目をやる。
きっかり午後6時。鼓動が急速に早まり心臓が脈打つ。
ループしてる
昔、何かの小説で読んだことがあった。その小説では条件を満たさないとループが永久に続く……
俺の場合は何が原因だ? 最後脳内に響いた、こえ。
ーーーBAD END。
つまり、イライにフラれること?
「とりあえず風呂入るか…」
つづく。