テラーノベル
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『……君みたいな女性、初めてだ』
洟をかんでから言うと、エミリは『ありがとう』と笑う。
『でもいつか、私を深く知るたびに〝面倒臭い〟って思うはずだわ』
『そんな事はない。誓って言える』
キッパリと言い切ると、エミリは一瞬、諦めたような寂しそうな笑みを浮かべてから、俺の手を引っ張った。
『次、行きましょう。楽しまないと! 沢山笑って、沢山怖がって、声を上げるの。ストレス発散になるわ』
『そうだな』
そのあと、俺たちは昼になるまでアスレチックで遊び、コテージのレストランで地元の野菜をふんだんに使ったランチを食べた。
そしてセット料金でチケット代が安くなる遊園地へ行き、夕方近くまで遊んだ。
想像通りエミリは絶叫マシンが好きで、俺は〝面白怖い〟の悲鳴ではなく、マジモンの絶叫を上げて涙目になっていた。
そんな姿を見せてもエミリは幻滅せず、同じ目線で楽しんでくれる。
彼女は俺の好きな人だが、年齢は違うはずなのに〝友人〟とも思えた。
帰りは足湯に入ってから、宇都宮で餃子を食べ、都内へ戻った。
エミリとのデートは初めて尽くしで、初回のデートで餃子を食べるとは思わなかった。
勿論、色っぽい展開になんてならなかったけど、相手にいい所を見せようと取り繕って澄ましているよりは、ずっと有意義な時間を過ごせた。
それにエミリと一緒にいると『いかに自分を男らしく、頼れる人と思ってもらうか』などの見栄を張る必要がなく、等身大の自分でいられる。
男女としてどうやって深い仲になっていくか考えるより、いかに自分という個人を知ってもらい、エミリを理解するかという考えに切り替わった。
今まで女性と付き合う時に考えていた事が、エミリには一つも通用しない。
元カノたちを喜ばせていた手段は、エミリには一切通用しないとも理解した。
エミリには篠宮ホールディングスに入社し、バリバリ稼いでいるという自負がある。
そして、身の丈に合わない物は望まない。
今回のデートでチケット代は予約する時に俺が払ったが、ランチ代は『私が払うわね』とエミリが支払ってくれた。
『一方的に借りを作るのは嫌なの。付き合ったあともなるべく対等でいたいわ』
そうやって、経済的に頼り切らない所も好ましく思った。
勿論、エミリを囲って何から何まで買い与えるのは簡単だ。
でもそんな事をすれば、『私の事をペットだと思ってるの?』と言われかねない。
良くも悪くも、エミリには気を遣わなくていい。
逆を言えば、今まで高価な贈り物をして女性の機嫌をとっていた俺からすれば、何をどうすればエミリに好きになってもらえるか分からず、難攻不落の砦にも思えた。
初回のアウトドアデートを終えたあと、次のデートは俺がプランを練り、映画館やプラネタリウム、水族館などのベタなコースになった。
けれどエミリはカップルシートが初めてらしく、楽しそうに過ごしてくれた。
彼女の事が好きだから、『いつキスできるだろう?』という想像はする。
でも真剣になるほど一緒にいられる時間がご褒美に思え、性的な事は重要ではないと感じられた。
勿論、知れば知るほど好きになったから、触れたいし抱き締めて、キスして繋がりたい。
しかしそういう気配を見せれば、エミリはスッと身を引いていなくなってしまいそうな気がした。
だから、男女の関係になる事については『いずれその時がきたら』と、タイミングを待つ事にした。
彼女は俺をグイグイリードしているけれど、きっと心の闇を抱えている。
まだエミリの過去も教えてもらえていないのに、体だけ繋がろうと思うのは駄目だ。
元々俺は性欲がガツガツしているほうではないし、どれだけでも待てると思えた。
だがエミリの側には問題があったようだった。
副社長秘書は、諸岡さんとの二人態勢とはいえ、エミリのミスが目立つようになった。
本人は言い訳をせず『以後気をつけます』と言っているが、しっかり者の彼女らしくないミスばかりだ。
予約していたはずのレストランがキャンセル扱いになっていたり、会議があると聞かされておらず、他部署の社員が慌てて呼びに来て、走って向かった事もあった。
『私がリスニングします』と諸岡さんが言っていたので彼に任せると、どうやら秘書課の女性に付き合っている(正確にはまだ付き合っていない)事がバレ、嫌がらせをされていると聞いた。
上野文
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臣桜
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五來 小真
29
#シングルマザー
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。 「俺の好きな人だが、年齢は違うはずなのに〝友人〟とも思えた」 この一文にすごくグッときました…。 頑張って男らしく見せなくていい、等身大でいられる関係って、本当に尊いものだと思います。エミリさんが「対等でいたい」って言うところも、彼女の芯の強さが感じられて素敵でした。 でも、最後の秘書課の件が気になりますね…せっかくいい感じなのに、周りが邪魔するのかな。二人の関係、ちゃんと見守りたいです🌙