テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
忘れてたわけじゃないよ?
うん、
はい
すいません😣
「なあ、今日さ」
昼休み、いつものやつらと話してたときだった。
「例のやつ、またなんかやらかしてるっぽい」
その一言で、空気が少しだけ変わる。
「また?」
「さっきさ、体育館裏で揉めてたらしいよ」
(……は?)
心臓が、少しだけ嫌な動きをする。
「今度こそガチでやばいんじゃね」
「だから言ったじゃん」
笑い混じりの声。
でも――
(……違うだろ)
頭のどこかで、否定する声がある。
昨日までなら、
たぶん、すぐに動いてた。
でも。
「で、どうする?」
誰かが軽く言う。
「別に関係なくね?」
別のやつが答える。
「だよな」
その流れに、乗る方が楽だった。
「……まあな」
気づいたら、そう答えていた。
その瞬間、
自分の中で、何かがズレた気がした。
それでも、止まらなかった。
(……いいだろ、別に)
そうやって、流す。
でも。
その後の授業、
全然頭に入らなかった。
ノートは開いてるのに、
何も書いてない。
時計の音だけが、やけに響く。
(……体育館裏)
さっきの言葉が、ずっと引っかかってる。
(……関係ねぇし)
そう思うのに。
気づいたら、立ち上がってた。
「トイレ行ってくる」
適当に言って、教室を出る。
足は、もう決まってた。
体育館裏。
人影が、見える。
近づくと、声が聞こえてきた。
「だからさ、調子乗んなって言ってんだろ」
低い男の声。
その向こうに――
いるまがいた。
また、同じ構図。
でも、今回は違う。
相手は一人じゃない。
二人。
囲まれてる。
449
(……おい)
「何とか言えよ」
肩を押される。
いるまは、何も言わない。
ただ、立ってるだけ。
(……なんでだよ)
前は、ちゃんと動いてたのに。
「黙ってんじゃねぇよ」
さらに押される。
バランスを崩して、
少しよろける。
でも、やり返さない。
(なんでだよ)
その瞬間、気づく。
(……俺のせいか)
昨日までなら。
少なくとも、“一人じゃなかった”
でも今は違う。
完全に、一人だ。
「チッ、つまんねぇな」
一人が舌打ちする。
「もういいわ」
そう言って、もう一人が近づく。
拳が、少しだけ上がる。
(……やばい)
足が、動かない。
止めなきゃって思ってるのに、
一瞬、遅れる。
――その一瞬で、
全部決まる気がした。
「やめろよ!」
気づいたら、声が出てた。
空気が止まる。
全員の視線が、こっちに向く。
いるまも、少しだけ目を見開いた。
「……誰だよ」
苛立った声。
「関係ねぇだろ」
自分でも驚くくらい、声が出てた。
「二対一で何やってんだよ」
沈黙。
「……は?」
一人が笑う。
「お前も関係者?」
「違うけど」
一歩、前に出る。
「でも、それは違ぇだろ」
自分でも、言ってることぐちゃぐちゃだと思う。
でも、止まらなかった。
「……チッ」
舌打ち。
「めんどくせぇな」
しばらく睨まれたあと、
「行くぞ」
二人はそのまま去っていった。
静かになる。
風の音だけが残る。
「……なんで来た」
低い声。
振り向くと、いるまがこっちを見ていた。
「……トイレ」
適当に答える。
「嘘つけ」
即バレる。
少しだけ、間が空く。
「……悪い」
気づいたら、そう言ってた。
「昨日」
それだけで、伝わると思った。
いるまは、何も言わない。
「見て見ぬふり、した」
言葉にすると、余計に重い。
「……」
沈黙。
逃げようと思えば、逃げられる空気。
でも、もう逃げたくなかった。
「ダサいよな、俺」
小さく笑う。
全然笑えてないけど。
そのとき。
「……今さらだろ」
ぼそっと、いるまが言った。
少しだけ顔を上げる。
「でも」
間があって、
「来ただろ」
それだけ。
それだけなのに、
胸の奥が、少し軽くなる。
(……ああ)
やっぱ、こいつだなって思った。
「……なあ」
「何」
「もう逃げねぇわ」
ちゃんと、言う。
「今度は」
少しだけ、間が空く。
「……勝手にしろ」
そっけない返事。
でも。
さっきより、少しだけ――
距離が近い気がした。