テラーノベル
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忘れてたわけじゃないよ?
うん、
はい
すいません😣
「なあ、今日さ」
昼休み、いつものやつらと話してたときだった。
「例のやつ、またなんかやらかしてるっぽい」
その一言で、空気が少しだけ変わる。
「また?」
「さっきさ、体育館裏で揉めてたらしいよ」
(……は?)
心臓が、少しだけ嫌な動きをする。
「今度こそガチでやばいんじゃね」
「だから言ったじゃん」
笑い混じりの声。
でも――
(……違うだろ)
頭のどこかで、否定する声がある。
昨日までなら、
たぶん、すぐに動いてた。
でも。
「で、どうする?」
誰かが軽く言う。
「別に関係なくね?」
別のやつが答える。
「だよな」
その流れに、乗る方が楽だった。
「……まあな」
気づいたら、そう答えていた。
その瞬間、
自分の中で、何かがズレた気がした。
それでも、止まらなかった。
(……いいだろ、別に)
そうやって、流す。
でも。
その後の授業、
全然頭に入らなかった。
ノートは開いてるのに、
何も書いてない。
時計の音だけが、やけに響く。
(……体育館裏)
さっきの言葉が、ずっと引っかかってる。
(……関係ねぇし)
そう思うのに。
気づいたら、立ち上がってた。
「トイレ行ってくる」
適当に言って、教室を出る。
足は、もう決まってた。
体育館裏。
人影が、見える。
近づくと、声が聞こえてきた。
「だからさ、調子乗んなって言ってんだろ」
低い男の声。
その向こうに――
いるまがいた。
また、同じ構図。
でも、今回は違う。
相手は一人じゃない。
二人。
囲まれてる。
(……おい)
「何とか言えよ」
肩を押される。
いるまは、何も言わない。
ただ、立ってるだけ。
(……なんでだよ)
前は、ちゃんと動いてたのに。
「黙ってんじゃねぇよ」
さらに押される。
バランスを崩して、
少しよろける。
でも、やり返さない。
(なんでだよ)
その瞬間、気づく。
(……俺のせいか)
昨日までなら。
少なくとも、“一人じゃなかった”
でも今は違う。
完全に、一人だ。
「チッ、つまんねぇな」
一人が舌打ちする。
「もういいわ」
そう言って、もう一人が近づく。
拳が、少しだけ上がる。
(……やばい)
足が、動かない。
止めなきゃって思ってるのに、
一瞬、遅れる。
――その一瞬で、
全部決まる気がした。
「やめろよ!」
気づいたら、声が出てた。
空気が止まる。
全員の視線が、こっちに向く。
いるまも、少しだけ目を見開いた。
「……誰だよ」
苛立った声。
「関係ねぇだろ」
自分でも驚くくらい、声が出てた。
「二対一で何やってんだよ」
沈黙。
「……は?」
一人が笑う。
「お前も関係者?」
「違うけど」
一歩、前に出る。
「でも、それは違ぇだろ」
自分でも、言ってることぐちゃぐちゃだと思う。
でも、止まらなかった。
「……チッ」
舌打ち。
「めんどくせぇな」
しばらく睨まれたあと、
「行くぞ」
二人はそのまま去っていった。
静かになる。
風の音だけが残る。
「……なんで来た」
低い声。
振り向くと、いるまがこっちを見ていた。
「……トイレ」
適当に答える。
「嘘つけ」
即バレる。
少しだけ、間が空く。
「……悪い」
気づいたら、そう言ってた。
「昨日」
それだけで、伝わると思った。
いるまは、何も言わない。
「見て見ぬふり、した」
言葉にすると、余計に重い。
「……」
沈黙。
逃げようと思えば、逃げられる空気。
でも、もう逃げたくなかった。
「ダサいよな、俺」
小さく笑う。
全然笑えてないけど。
そのとき。
「……今さらだろ」
ぼそっと、いるまが言った。
少しだけ顔を上げる。
「でも」
間があって、
「来ただろ」
それだけ。
それだけなのに、
胸の奥が、少し軽くなる。
(……ああ)
やっぱ、こいつだなって思った。
「……なあ」
「何」
「もう逃げねぇわ」
ちゃんと、言う。
「今度は」
少しだけ、間が空く。
「……勝手にしろ」
そっけない返事。
でも。
さっきより、少しだけ――
距離が近い気がした。
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