テラーノベル
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君達は狂座という組織について、何処まで知っているかな?
依頼者の晴らせぬ恨みを代行し、標的の消去を遂行する。そして裏より、乱れようとする表の世の安定を図る――。
うん、間違ってはいないし、それが狂座の掲げる最も足る主旨だ。それによって円満に、組織が運営されているのも事実。
君達は不思議に思った事は無いかい?
狂座が何時設立されたか。何故、特異点しか持ち得ない筈の異能という力を、常人にも施せれるのか。
そして何故、現代の科学では到底及ばない技術力を持っているのかを――ね。
それもその筈。狂座は現代に創られたものでも、ましてや過去に創られたものでも無い。
狂座の始まりは、今より遠く近い――未来での代物だ。
そう――西暦2050年。今より30年以上、先の事になるがね……。
人の持つ頭脳、科学の力は正に驚異的な速度で進化を続けている。考えてみるといい。ほんの三十年前と現在では、それこそ比較にもならない異常なレベルでの進化だろう?
現在でさえ人類は、容易に宇宙にまで視野を広げ、意図的な生命の誕生の有無をもコントロール出来るレベルにまで到達している。
人類が禁断の、神の領域にまで足を踏み入れるのは、時間の問題だった。
人の脳はそれこそ、無限の可能性を秘めている。それでも人はまだ、現在でも潜在能力の三十パーセント程度しか開花出来ていない。
人類が新たな高みへ、次のステージへ上り詰めるには、この潜在能力――脳の開花が必須課題だった。
そこで目を着けたのが先天性異能者、即ち特異点と呼ばれる存在が持つ、自らの意思で脳の回線を開き、潜在能力を百パーセント開花出来る者達だ。これこそが人が正に、神の写し身で在る証しと云えよう。
その力は君達も知っての通り、常人の理解を超えた力を意のままに出来、その余りの凄まじさから、特異点は古来より神の写し身では無く、悪魔の化身とされる事が多かったがね……。
永い人類の歴史の中でも、特異点の存在はそれこそ天文学的な稀少種で、有史以来現在までに君達も含め、先天性を確認されたのは僅か三桁にも満たない程だ。
――特異点を被験体に、人類が新たな可能性へ進む為の研究は、当然ながら困難を極めた。
だが西暦2040年。流石は知恵の実を食した者の末裔――人間、その頭脳。長きに渡る研究は境地に達し、遂に人類は脳の回線を開く為の鍵を究明する事に成功。これが所謂、後天性異能者だ。
後天性は先天性のオリジナルにこそ及ばないものの、人は自ら人の壁を超える可能性を示せた。
この新設立法は、人類の科学にも劇的な変化をもたらし、あらゆる夢物語を可能とする技術を次々と得た。
狂座の持つ『サーモ』も、その技術の一環だよ。
……まあ、それは“今は”置いておこう。これにより人類は栄華を極めたという訳だ。正に神の領域に到達したと云っていい。
だが……人間の持つ業――欲望は、それで終わる事は無かった……。
――人は自ら神で在る事を証明した。神で在り続けた。
ならば、次に目指すのは何だと思う?
そう……神を超える事だ。
考えればこれ程愚かな、傲慢の極みも無いと思わないかい? 全ての生体の中でも人間だけだよ、こんな思考回路を持つのは。
人は神を超えられない。そもそも、神を名乗る事自体が烏滸がましい傲りだ。それに最後まで気付かないのだから、救いようの無い存在とも云える。
フフ、自業自得とはこの事だね……。
でも仕方無いね。人とはそういう風に出来ているのだから。原子根本、そのものがね。
『楽をしたい』『人の上に立ちたい』『金持ちになりたい』『良い女を抱きたい』等々、尽きる事の無い欲望。人の行動原理はすべからく、この限り無い欲望に尽きる。
――勝手な事を言うな? いやいや、人は皆等しく業を持って生まれて来る存在だ。そこに程度の差はあれ、根本は変わらないし終わらない。消える事も無い。それが有史より受け継がれてきた遺伝子というものだ。
それが悪いとは言っていない。それにより歴史が作られ、より高度に進化し続けて来たのだから。
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